ついに、ドル/円が注目していたレジスタンスラインを上抜けました。前回の本欄でも示した通り、このラインは5月22日高値と7月8日高値を結んだ直線であり、5月23日以降ずっとドル/円の上値を押さえていたものです。

この強い上値抵抗を9月2日に上抜けたドル/円は同日、終値で一目均衡表(日足)の「雲」上限をも上抜け、同時に日足の「遅行線」が日々線を上抜けました。さらに、下の図でも確認できるように、日足の「転換線」が「基準線」を上抜け、いわゆる『三役好転』の強気シグナルが点灯することにもなりました。

前述のレジスタンスラインを上抜けたことで、以前から本欄でも繰り返し指摘している「第4波(=修正波)」の局面を脱した可能性が意識される状況にもなっており、今後は8月8日安値=95.81円が「第5波」の始点になったとの感触が強まって行くかどうかを見定める段階に入って行くものと考えられます。

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もちろん、相場のことですから確たることは言えません。ことに、今週は主要各国の中央銀行による政策会合の開催が相次いでいますし、極めて重要な各国・各地域の経済指標発表も目白押し。加えて、9日の米議会再開を前にシリアへの軍事介入が現実味を帯びてきていることもあり、場合によっては株安を通じて市場のリスク回避ムードが強まり、一時的にも円高圧力が強まる可能性もないではないと言えるでしょう。

ただ、本欄の8月21日更新分でも注目したしたように、7月11日以降大きく低下していたドルインデックスは長期サポートラインが位置する水準付近で下げ止まって、以降は上昇に転じており、結果的にユーロ/ドルが大きく下落してきていることも事実です。

今週の週初から、ユーロ/ドルは一つの重要な節目である1.3200ドルの水準を明確に下抜けてきており、目先は一目均衡表(日足)の「雲」に下値を支えられる可能性もありますが、基本的には弱含みの展開を続けています。

仮に、ユーロ/ドルが日足の「雲」を下抜けてくると『三役逆転(=陰転)』の弱気シグナルが点灯することとなり、以降は一段と下げが加速する可能性もあります。つまり、対ユーロでドルは強含みとなっており、今後多少なりとも円高圧力が強まる場面はあるとしても、総じてドル/円の下値は自ずと限られてくると考えることもできるでしょう。

当面は、長らくドル/円の上値を押さえていたレジスタンスラインが、逆にサポートライオンとして下値を支えるかどうかが一つの注目ポイントとなります。そのうえで一段の上値を試すとするならば、まずは100円の節目を上抜けてくるかどうかが焦点となり、上抜けた場合は次に7月8日高値=101.53円が意識されることとなるでしょう。

もちろん、その後は当然、5月22日高値=103.73円が意識されることとなるわけですが、今しばらくは、とにかくドル/円が「第5波」の局面に入ったかどうかを見定めるべく、複数の"状況証拠"を拾い集める時間帯であると認識しておきたいものです。

コラム執筆:田嶋 智太郎
経済アナリスト・株式会社アルフィナンツ 代表取締役