私の敬愛する或るお医者さんは、薬の権威でもあられて、毎年、処方される薬に関する事典を書かれて出版されておりましたが、この数年出版がなくなりました。今日先生と話していて偶々その件に話題が向いたのですが、先生曰く、処方薬に関しては大勢の人がインターネットで検索・閲覧するようになったので、紙で出版したものに対する需要が減り、4年前をもって改訂・出版を止めたとのこと。むぅ、むべなるかな。

私自身もかつては薬の事典の本を、毎年とは云わずとも数年に一回は買い換えていましたが、最近はもっぱらスマホでインターネット上の事典を引くようになってしまいました。確かにこの方が便利です。然しながら、インターネット上の事典は、どの程度の頻度でアップデートされているかも、そもそも誰が書いているかも、ほぼ不明です。この先生の場合は、お知り合いの各分野の信頼できるお医者さんと協力・連携して、毎年事典を改訂し書き上げていたとのこと。今の時代、こういう場合の正しい知識の編纂・共有は、一体どのように行われていくのでしょうか?

薬の事典に限らず、なべて事典の類いは、同じことが起きているかも知れません。インターネット時代、知識と知恵の編纂と共有という、一見インターネットであれば自然と簡単に誰でも実行できるようなことの質の維持・管理は、今後重大な問題となってくるかも知れません。私自身答えも提案も持っている訳ではないのですが、そんなことを改めて実感したのでした。