昨日(2月12日)、主要7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁は緊急共同声明を発表し、安倍政権の政策はデフレ対策が目的であり、為替操作にはあたらないとの認識が共有されていることを示しました。つまり、政権発足後の円安は事実上、容認されたことになります。今回、緊急共同声明がまとめられたのは、今週末(2月15~16日)にモスクワで開かれる20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議に向け、先進国として統一見解を示しておく狙いがあったものと見られています。

ところが、この声明を受けたあるG7当局者が「声明は誤解されている。この声明は行き過ぎた円の動きへの懸念を示唆したものだ」と発言したとの報が伝わり、さらにカナダ銀行のカーニー総裁が議会で「G20で円について協議する公算が大きい」などと証言したことから、昨日の海外市場では一気に円買いムードが強まるという一幕もありました。

結果、足下では積極的に一段の円売りを仕掛けにくいムードとなっており、執筆時のドル/円は93円台前半の水準で推移。本日(2月13日)から2日間に渡って日銀金融政策決定会合が開かれますが、今回は金融政策の変更も想定されておらず、新たな円売り材料が出てくるとは考えにくいものと思われます。また、週末あたりに政府から次期日銀正副総裁人事案が発表される見込みであることが話題となっていますが、これも発表後は一旦(円売りの)材料出尽くしとなる可能性があります。

ここで一つ気になるのは、下の図に見るように、近年のドル/円の価格推移には大よそ11~13ヶ月ごとに主要な高値をつけるパターン(サイクル)が認められるということです。前回の高値は12年3月15日の84.17円であり、その11~13ヶ月後はこの2月半ば~4月半ばということになり、このあたりで一旦、主要な高値をつけてもおかしくはないという見方もできなくはありません。

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さらに、上図中の週足ロウソクの形状を見ると、先週の形状は週の始めと終わりがほぼ同じ水準となる寄引同時線の一種の「十字線」となっており、そこには相場の「気迷い」が感じられます。振り返れば、年明け以降の急激な上昇過程にあって、幾度も長めの陽線や長めの下ヒゲが確認される非常に強い動きが確認されていたのです。それが先週は気迷いを示す十字線となり、仮に今週の形状が長めの上ヒゲを伸ばした陽線であったり、あろうことが長めの上ヒゲを伴う陰線であったりした場合には、ドル/円が一時的にも調整局面入りするとのムードが相当に強まるものと考えざるを得なくなります。

もちろん、先週の十字線はあくまで気迷いであり、今週の終値の位置によってはなおも強気の相場が続く可能性もあります。果たして、次期日銀正副総裁人事案ではどのような候補者名が挙がってくるのでしょうか、週末のG20では円についての協議がどの程度行われるのでしょうか。その結果にもより、今週から来週にかけての円相場の行方は大きく左右される可能性もあります。昨年の「バレンタイン(金融)緩和」から1年という節目の時期でもあり、ここはより慎重に相場と向き合う必要がありそうです。

コラム執筆:田嶋 智太郎
経済アナリスト・株式会社アルフィナンツ 代表取締役