少々異常とも思える円安が進むなか、いまやドル/円は94円台も視野に入ってきそうな勢いとなっています。どこかで少し調整を交えても良さそうなものではありますが、連日のように円売り材料、あるいはドル買い材料が次々と飛び込んでくるような状況で、まさに「(ドル/円の)強気相場に売り材料なし」といったムードになっています。

昨日(5日)も日銀の白川総裁が自身の退任日を前倒しすると伝わったことで、そこから再び円安の流れが一気に強まりました。正味のところ「それほど大騒ぎするほどの材料でもなかろう」と筆者などは考えるのですが、目下のような興奮状態にある状況下で何事にも敏感になっている市場には、些か強めの刺激を与える格好となりました。

これまで本欄では「当面のドル/円の上値メド」として、今後の相場の節目にあたると思われる水準を幾つか弾き出し、その都度ご紹介してきました。それは、例えば92.50円(10年8月あたりから形成されていた「逆三尊(底)」のパターンから弾き出される値)、あるいは93.40円(12年2月安値から同年3月高値までの上げ幅×2+12年9月安値)などといったものでしたが、すでにドル/円はこれらの水準をいともあっさりと上抜けてきています。もちろん、このままのペースで今後も円安が進み続けるなどということはあり得ず、どこかで一旦は暫しの調整局面を迎えるのでしょうが、それでも中長期で基本的に円安基調が継続するとの見方には間違いがないものと思われます。

ドル/円の過去の価格推移には大よそ8年ごとに高値をつける「8年高値サイクル」が認められており、前回の高値が07年6月の124.14円であったことから、次は15年の年央あたりに向けて新たなサイクル高値を取りに行く展開になるものと予想することができます。やはり、その目標水準は一つに前回高値の124.14円であり、場合によっては同水準よりもさらに円安となる可能性も十分あるものと考えていいでしょう。

それでは、そこに至る過程において今後の節目になると見られる幾つかの水準を以下に挙げておきましょう。当然、それは下の図にも見る通り、過去の価格推移に見られる幾つかの目立った高値であり、比較的近いところでは10年5月高値の94.98円が今後の目標値の一つとして有力と言えます。このように過去の推移を辿って行くと、リーマン・ショック前にあたる08年8月のドル/円は110円台であったことがあらためて確認されます。つまり、現在の93円台という水準は、まだまだ是正して行くべき「円高」の範疇であるということです。

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加えて、07年6月高値から11年10月安値までの下げ幅に対して黄金分割から導き出される戻り水準というのも重要な節目であり、今後の目標水準のひとつになるものと考えることができます。上図に見るように、その38.2%戻しは94.00円手前のところにあり、今まさにドル/円は同水準を試しに行く途上にあると見られます。また、その上方には50.0%戻し=99.75円、61.8%戻し=105.50円などの節目があり、これらは今後、ドル/円相場が幾度かの調整局面を交えながらも中期的に意識しておかしくない水準であるものと思われます。

コラム執筆:田嶋 智太郎
経済アナリスト・株式会社アルフィナンツ 代表取締役