本日(26日)、いよいよ安倍新政権が発足する運びとなり、官邸主導による経済再生を最優先とする政策運営が緒に就くこととなります。新政権に対する市場の期待は非常に大きく、本日も朝方からドル/円が85.00円台乗せとなるなど、さらに円安が加速しており、同時に日経平均株価も強い基調でのスタートとなりました。

いまだ合意に至っていない米財政協議の行方については一抹の不安もありますが、今後も基本的に円安・日本株高の流れは継続するものと考えられ、前回の本欄では「来年(13年)の3月中旬から4月頃に向けて当面の高値を取りに行く展開になる」という一つのシナリオ(予想)をご紹介しました。

また、当面のドル/円の目標値は、今年2月安値から3月高値までの上げ幅を少なくとも1.618倍した値+今年9月の安値=77.13円という計算から90.30円あたりと予想しています。もちろん、これで打ち止めというわけではなく、中期的に見れば一段の高値を追う展開となる可能性も十分にあるでしょう。では、仮に当面の目標である90.30円あたりの水準を明確に上抜けた場合、次の目標となるのはどのあたりの水準と見ておけばよいのでしょうか。

下の図を見ればわかるように、ドル/円は10年8月あたりから「ヘッド・アンド・ショルダーズ・ボトム(逆三尊あるいは逆三尊底とも言います)」を形成してきたと見ることができます。そして12月12日には、その「ネックライン」にあたる11年4月高値と12年3月高値を結ぶラインを明確に上抜けました(ブレイクしました)。
逆三尊というのは、相場が底入れから反発に転じたことを示す幾つかのパターンのなかで最も重要度が高いものとされ、そのネックラインをドル/円が明確にブレイクしてきたということは、今後の展開を予想するうえで非常に重い事実と言えます。

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この逆三尊のネックラインをブレイクした場合、後に相場がどの程度の水準まで中期的に上昇するかは、過去の経験則から判断するのが通例です。

その経験則とは「逆三尊を形成する過程でつけた最も安い水準とその時点におけるネックライン水準までの値幅(図中の赤い矢印)と同じだけ、ネックラインをブレイクしたとき(ブレイクポイント)の水準から上昇する」というもので、それを実際のドル/円相場にあてはめると92.50円あたりという一つの中期的目標値が弾き出されるのです。

ちなみに、ドル/円の89日線は12月21日に200日線を上抜けており、ここにゴールデン・クロス(GC)が発現しました(上図参照)。その結果、移動平均線の並びは上から計算期間の短い順に21日線、89日線、200日線となり、いわゆる「パーフェクト・オーダー(完璧な順番)」が完成しています。言うまでもなく、これも非常に重要な強気のサインと見做されるものであり、今後一段とドル/円の上値余地が拡がるとの見方はますます強まってくるものと思われます。

コラム執筆:田嶋 智太郎
経済アナリスト・株式会社アルフィナンツ 代表取締役