ここにきて徐々にドル/円の上値が重くなってきました。
前回(11月21日更新分)も触れたとおり、野田首相が衆院解散を宣言した11月14日以来、順調に上値を切り上げてきたドル/円は、先週22日に82.84円の高値をつけて反落し、執筆時は82.00円を割り込む水準までの調整を見ています。
それは、一つに米国で感謝祭を通過し、議会が本格的に「財政の崖」回避に向けた協議を再開したものの、いまのところ大きな進展は見られておらず、少々先行きが案じられるということもあるでしょう。もちろん、来月16日の選挙で自民党が政権を奪回し、日銀への追加緩和要求が強まるとの期待は根強くありますが、いまだ選挙戦の行方は未知数ですし、選挙後に発足する政権の政策運営が期待通りに運ぶかどうかもわかりません。
それでも、やはり自民党の「安倍発言」は相場に大きく影響しました。下の図を見てもわかるように、投機筋の動向を示すシカゴ通貨先物市場の取引状況(ポジション)は、11月20日時点で5万1389枚の円売り越しとなっており、ここにきてヘッジファンドなどの海外投機筋が大きく円売りにポジションを傾けたことがうかがわれます。
ちなみに、投機筋が円買い越しから円売り越しに転じたのは10月23日時点からであり、これは10月14日まで日本で開催されていた国際通貨基金(IMF)・世界銀行年次総会において日本が世界に円高是正への理解を強く求めたこととも大いに関わりがあることと思います。加えて、その頃から日本国内では「年内解散」が意識されはじめ、仮に解散となれば自民党が政権を奪回し、強力な金融緩和論者である「安倍首相」が誕生するとの思惑もくすぶっていました。
ここで、あらためて図をよく見ていただけますでしょうか。
思えば、今年の2月7日時点において5万枚を超えていた投機筋の円買い越しが、後に急減して2月28日に時点で売り越しに転じ、3月27日時点ではなんと6万7622枚もの売り越しとなったのです。お分かりの通り、これは2月14日に日銀が「当面1%の物価上昇率のめど」を打ち出したことに起因しており、これをきっかけにドル/円は2月1日安値の76.02円から3月15日高値の84.17円まで大きく値を上げたことが思い出されます。
その後、5月下旬から6月にかけて再び円は買い越しとなり、その買い越しがピークに達したのは9月11日時点の3万2773枚でした。思えば、ドル/円は9月13日に77.13円の安値をつけ、そこから徐々に値を戻す展開となりました。
このように、シカゴ通貨先物市場における投機筋のポジションとドル/円相場には浅からぬ関係性が見出せることがわかります。その意味で、今再び円売り越し枚数が5万枚を超えてきたという事実は、ここでドル/円がしばしの調整を余儀なくされる可能性に対して一定の警戒を要するということになるでしょう。
もちろん、ここに見る投機筋のポジションというのはあくまで参考データの一つに過ぎませんし、まだ円売り越しが5万枚を超えたばかりという状況であり、今後、円売り越しのレベルがしばらく高止まりを続ける可能性も十分にあります。どのみち、今後もこうした重要なデータのチェックは怠らないようにしたいものです。