昨日(10月30日)開かれた金融政策決定会合において日銀が決定した追加緩和策の内容に対し、とりあえず市場は「失望」の反応を示すこととなりました。結果、9月下旬から上昇傾向を続けていたドル/円も値を下げ、一時的にも79.28円の安値を垣間見るに至りました。

とはいえ、いまだ重要な節目の一つである79.22円を下回るには至っておらず、目下のところは200日移動平均線も下値サポート役として機能している模様。日銀に対する過度な「期待」は「失望」に転じましたが、今後も緩和姿勢が継続されることに対する期待はつながれています。

他方、ここにきて俄かに米国経済の回復に対する期待がジワリと高まってきていることもまた事実です。ことに米住宅市場の縮小傾向に歯止めがかかり、徐々に活力を取り戻しつつあることは大いに注目されます。その実、昨日(30日)発表されたS&P/ケース・シラー住宅価格指数(8月)も主要20都市で前年同月比2.03%上昇と、2010年7月以来の大幅な伸びを示しました。ちなみに、9月の米住宅着工件数は前月比+15%と、2008年7月以来の高い水準を示しています。

実のところ、米国の株式市場では将来的な住宅市場の回復を見越して、今年の年初から住宅関連株の上昇傾向が続いています。下の図を見てもわかる通り、D.R.ホートンやレナーなど住宅建設大手、ならびにホーム・デポなどホームセンターの株価は軒並み上昇傾向を続けているのです。

周知の通り、米連邦準備制度理事会(FRB)は9月の連邦公開市場委員会(FOMC)において量的緩和策第3弾(QE3)の実施を決定し、FOMC後の記者会見ではバーナンキFRB議長が「住宅市場のテコ入れを狙う」と明言しました。

言うまでもなく、住宅は経済成長の重要なエンジンの一つであり、住宅や株式などの資産価格が上昇すれば、消費者の購買意欲が高揚して消費は拡大、最終的には雇用情勢も改善するというのがバーナンキ議長率いるFRBの基本戦略なのです。実際、バーナンキFRB議長は毎月400億ドルにものぼる住宅ローン担保証券(MBS)の購入を「労働市場が大きく改善するまで継続する」と言っています。

そして、多くの市場関係者は労働市場が大きく改善したと判断されるのは米国の失業率が7.0%を下回り、その状態が持続可能と判断されたときであると見做しています。ちなみに、9月の米失業率は7.8%でした。今週末の11月2日には10月の米失業率が発表される予定となっていますので、ますはその結果に注目しましょう。

加えて、今後大いに気になるのは今年の米クリスマス商戦です。全米小売業協会(NRF)の予想では前年比+4.1%とされており、過去10年間の平均である+3.5%を大きく上回る堅調な結果となることが見通されています。

米大統領選を間近に控え、いまだ「財政の崖」の行方は不透明ですが、米大統領選後にこの問題が回避される見通しとなれば、足下で盛り上がりつつある米国経済の回復期待が一気に強まることでしょう。その場合、ドル/円は「円安」というよりも「ドル高」によって上昇傾向を強める可能性が十分にあるものと思われます。