本コラムの2012年3月28日更新分で、筆者は「ユーロ/ドルの値動きに一定の規則性が確認できる」とし、それは「2011年12月以降、各月の安値は大よそ月半ばに付けられ、各月の高値は大よそ月末から翌月初に付けられるという規則性」でした。
言うなれば「ユーロ/ドルの法則」ということになるかと思いますが、当然、このような規則性に基づく「法則」が永遠に有効であるはずはありません。ただ、一定期間続けて規則的な値動きの繰り返しが見られると、その後も同じ値動きの繰り返しが続くという思い込みが強くなり、結果的にしばらくは同じようなパターンを繰り返すということが少なくないのも事実です。
あれから半月余り...。やはり、3月の高値は27日と月末近辺でした。その後、4月に入るとユーロ/ドルは一気に下げ足を速め、下のチャートに見るように一目均衡表の日足「雲」下限付近で下げ渋り、もみ合うなかで4月16日に長めの下ヒゲを伸ばして執筆時の直近安値を付けるに至ったのです。これも、また月半ばでしたね。
ここで、あらためて過去数カ月の値動きを見てみると、まずは2011年8月高値と2011年10月高値を結ぶレジスタンスラインが上値の重しとなっており、それと並行して下方に引くことのできるアウトライン(一種のサポートライン)とに挟まれた「下降チャネル」を形成していることがわかります。つまり、大きな流れは弱気継続です。
また、3月高値付近にはボリンジャーバンドの+2σが位置しており、それがセオリー通りに売りシグナルとなったこともわかります。なお、現在のユーロ/ドルは-2σ付近にあり、とりあえずは一目均衡表の日足「雲」下限とともに下値をサポート。一方、上値は21日線にガッチリと押さえられているように見受けられます。
何より気になるのは、やはり1月下旬あたりから形成されている「ヘッド・アンド・ショルダーズ・トップ(三尊天井)」が今後、目に見えて「完成」と言える格好になるどうか。完成というのは、2月安値と3月安値を結ぶネックライン(図中の赤点線)を明確に下抜けることを指すわけですが、4月16日の時点では日足ロウソクの下ヒゲ部分が下抜けたに過ぎず、いまだ完成には至っていません。
市場は、いま4月18日に行われるスペインの中長期国債入札に対して非常に神経質になっており、結果が不調であれば一気に前述のネックラインを下抜けてくる可能性もあります。なにしろ、目下のスペインは住宅・不動産バブル崩壊の痛手を負い、国内金融機関が膨大な不良債権を抱えるなか、着実にリセッションが進行している状況にあります。こんな状況にも拘らず、スペイン政府は超緊縮財政策を強力に推し進めて行く姿勢を示しており、我慢の限界を超えた国民が全土でゼネストを実行している状態です。
仮に、ECBの助太刀などによって目先のスペイン国債入札を無風で通過しても、4月月末から5月初旬にかけては、フランス大統領選の決選投票ならびにギリシャ総選挙の行方に対する懸念や不安が、あらためてユーロに売り圧力をかけることとなりそうです。
「ギリシャ」の次は「スペイン」でした。そして、また5月になると「ギリシャ」に戻る可能性があります。欧州の混乱はまだまだ続きます。そんななか、ユーロ/ドルが強気に転換する可能性は相当に限られていると言わざるを得ないでしょう。
コラム執筆:田嶋 智太郎
経済アナリスト・株式会社アルフィナンツ 代表取締役