以前、本欄の2012年2月15日更新分におきまして、ドル/円の長期レジスタンスラインに関する話題を取り上げました。結果的に、ドル/円は2007年6月高値から引かれる長期レジスタンスラインを週足終値ベースで2週連続して上抜け(2012年2月13日から始まる週)、その基調が「どうやら円安・ドル高に転換したようだ」との感触を強めることとなりました。
その後、順調に上値を拡大したドル/円は、下の図にも見られるように一目均衡表の週足「雲」上限ならびに89日移動平均線(89日線)をも週足終値ベースで上抜けることに成功し、以来3週連続して週足終値ベースで週足「雲」上限ならびに89日線を下抜けることなく強い基調を継続しています。
振り返れば、ドル/円が週足「雲」の中に潜り込んだのは2007年7月のことで、それ以来長らく週足「雲」は強い上値抵抗として機能し、この上値抵抗をドル/円が終値ベースで上抜けることはありませんでした。これは89日線についても同様です。それだけに、ここにきて明確にこれらの上値抵抗を突き破ってきたという事実には、非常に強いインパクトがあります。明らかに、チャートの顔つきが変わったのです。
なお、目下は一目均衡表の「遅行線」が週足「雲」の中に潜り込んだ状態になっていますが、これが「雲」上限を突き抜けてくると、ますますドル/円の上昇基調は力強いものになってくると思われます。
結果、いま市場では「2011年10月末のドル/円の安値が大底であった(=対ドルでの円の天井であった)」との見方が日ごと有力になってきているばかりか、何かと注目の2011年10月末安値というのは「過去40年余に渡って続いた円高・ドル安基調の最終地点になった」と見る向きも少なくはないのです。およそ40年もの長きに渡って続いた基調が転換したかもしれないというのですから、これはただ事ではありません。
その実、すでにシカゴ通貨先物市場における大口投機家の取り組みは以前の「円買い越し」から「円売り越し」に転じており、一般のFX投資家にあっても最近は円安・ドル高基調に追随(=円安・ドル高トレンドをフォロー)しようとする向きが見る見る増えています。周知の通り、外国為替市場における各通貨ペアの値動きというのは、他の市場に比べて遥かに強いトレンドが出やすく、ひとたび出たトレンドは非常に長く続きます。
ここで、あらためて過去40年を振り返りますと、その間のドル/円の値動きにおいてほぼ8年ごとに目立った高値をつけては一旦反落するという「8年高値サイクル」を確認することができます。たとえば、1982年に278.50円の高値をつけて反落したドル/円が、次に目立った高値をつけたのは1990年(160.35円)であり、その次に目立った高値を付けたのは1998年(147.63円)といった具合です。
ちなみに、最も近い「8年サイクル高値」というのは、言わずと知れた2007年6月高値=124.13円であり、その8年後というのは2015年です。つまり、今後のドル/円は少なくとも2015年、2016年あたりまで基本的に上昇基調を続けるとの見方もあるということで、どこか頭の片隅にでも置いておきたいものと考えます。
コラム執筆:田嶋 智太郎
経済アナリスト・株式会社アルフィナンツ 代表取締役