ついに、欧州連合(EU)が20日午後からのユーロ圏財務相会合において、EUと国際通貨基金(IMF)による1300億ユーロ規模のギリシャ向け第2次金融支援で大筋合意しました。

これにより、とりあえず3月20日のギリシャ国債償還でデフォルトに陥ることは避けられた格好ですが、ある程度それは織り込み済みであり、一旦は「材料出尽くし」となる可能性が強まってきました。つまり、このところ市場に拡がっていたリスクオンのムードが一旦は巻き戻される可能性があるわけです。ここで、あらためて前回(2月15日)と前々回(2月8日)の更新分について、その内容を検証しておくこととしましょう。

まず前回の本欄では「ドル/円が2007年6月高値と2010年5月高値を結ぶ長期レジスタンスラインを週足終値ベースで2週連続して上抜けるようなこととなれば、そのインパクトは決して小さくない」と述べました。そして、実際にドル/円は2週連続で長期レジスタンスラインを上抜け、ついには2011年10月31日につけた介入後の高値をも上抜けることとなったのです。

これは、日米株価の上昇に連れた動きという点では、ある程度リスクオンのムードに押し上げられたという側面もあるのでしょうが、どちらかというと日銀による緩和的な政策の拡大や日本の貿易赤字拡大を背景とする「円売り」の側面の方が強く、仮にギリシャ支援合意で材料出尽くしとなっても、これまでの価格上昇を打ち消すような流れには結ぶつきにくいものと思われます。

むしろ今後、ドル/円が80円台の値固めに成功し、昨年8月高値の80.24円をも上抜けるような展開となれば、いよいよ「2011年10月末につけたドル/円の歴史的安値が大底であった(=対ドルでの円の強気相場が完了した)」との感触が一段と強まる可能性があります。実のところ、それは過去40年来の円高・ドル安の歴史にピリオドを打つものとも考えられ、目下は極めて重要な歴史的転換点にあるのかもしれないのです。

一方、前々回の本欄では、ユーロ/ドルの日足チャートにボリンジャーバンドを描画したうえで、一つに「+2σ付近に達したら売り、-2σ付近に達したら買いとの見方が有効になる場合がある」という「逆張り」の見方を紹介しました。案の定、2月9日の高値と2月16日の安値はボリンジャーバンドにおける「逆張り」の見方に符合し、さらに「基準となる21日線を終値ベースで2日連続して下抜けたら売り、上抜けたら買い」との判断も有効であることが示されています。

そして、いま再びユーロ/ドルは、ボリンジャーバンドの+2σ付近にまで値を戻してきており、今後はこの+2σのラインを上抜けて「順張り」の買いとなるのか、それとも+2σ付近で上げ一服となって「逆張り」の売りとなるのか、判断を迫られる場面が訪れています。

もっとも、目下のボリンジャーバンドは非常に各バンドの幅が狭くなっており、それだけで売り買いの判断を行うことは相当にリスクを伴うことも事実です。やはり、ここは複数のテクニカル項目やファンダメンタルズを駆使して、より総合的な判断を下すべきときと言えるでしょう。

足下でユーロ/ドルは一目均衡表の日足「雲」上限、89日線など、複数の抵抗に上値を押さえられている模様です。また、その近辺には本欄の2012年2月1日更新分でも振れている「三尊天井のネックライン」が位置しており、このあたりは重要な節目となっています。節目である以上は、これを明確に上抜けるのか、それとも下抜けるのかを、慎重に見定めておくことが必要となります。

ギリシャ支援合意が「材料出尽くし」と捉えられたなら、ユーロ/ドルの上値抵抗は相当に強いとの見方が優勢になるものと思われます。

コラム執筆:田嶋 智太郎
経済アナリスト・株式会社アルフィナンツ 代表取締役