今日もマネックスグループ(株)CEOの松本としての立場で書かせて頂きます。最近、投資銀行モデルが崩壊したなどと云われています。これはリーマン・ブラザーズの倒産や、飛ぶ鳥を落とす勢いであったアメリカの投資銀行が相次いで経営危機に陥り、商業銀行と合併したり、或いは邦銀などから多額の資本調達をしている中で、投資銀行の今迄のビジネスモデルに対して、自らの反省・修正に留まらず、規制当局からもほぼ強制的にモデル変換を迫られているからです。

投資銀行は本来、資本取引や金融市場における技術やノウハウを開発し、磨き、身に付け、その顧客である事業法人や機関投資家のためにサービスを提供することを旨としていました。即ち自らがプリンシパル(投資主体など)になるのではなく、エージェントとしての仕事が中心だったのですが、この10年間ほど、金融機関に対する規制緩和と競争激化の中で、自ら資金調達し、自らプリンシパルとして投資や様々なポジションを取ることを急拡大してきました。自らの資本や元々の資金量を超え、短期市場で借りて証券を買い、その証券を短期市場で貸して得た資金でまた証券を買うとか、或いは金利スワップなどの所謂オフバランス・デリバティブ取引を厖大に積み上げることにより、資本や資金量の数倍、数十倍、数百倍にも上るリスクを取ってきました。これを通常、「レバレッジを掛ける」と云います。保証金維持率の極端に低い信用取引とも云えるでしょう。

そのような投資や戦略、トレーディングがうまく行っている間はいいのですが、一度歯車が崩れると、強烈な損を出すことになります。そのような、或る意味で単純な問題に、プロ中のプロである投資銀行が嵌ってしまったのです。そこで規制当局が、様々な方法により、投資銀行のレバレッジを下げようとしているのです。さて、この「投資銀行モデルの否定」は、様々な金融機関の経営に対して不安を持たせることになりました。何故ならば通常の金融機関であれば、多かれ少なかれ、このようなレバレッジは掛けているからです。

当社はどうでしょうか?確かにグループとして資金借り入れはしています。しかしそれは基本的に全て、マネックス証券のお客様が信用取引をされる際の資金供与のためであり、資金供与する際には、当然充分な担保を頂いています。ですから会社としてレバレッジを掛けている訳ではありません。また、当社或いはマネックス証券として、保有している投資有価証券もあります。これは或いは子会社株式であったり、或いは例えば東京証券取引所グループの株式であったり、なにかしら事業戦略的な意味があって保有しているものに限られます。
何故なら私たちはお客様にサービスを提供することをミッションとしており、投資を本業としている訳ではないからです。先日、残念ながら、戦略的目的から保有していたイーバンク株式の評価替えによる損を発表しましたが、いずれにしろこのような有価証券投資は限定的であり、あくまでも事業目的であり、またレバレッジを掛けているのではありません。当社はもちろん、全体としてもっと成長し、業績を伸ばしていく必要がありますが、「投資銀行モデルの否定」は、基本的に当社とは関係ないことを、御理解頂ければと存じます。