【1】結果:製造業は改善、消費関連業種には慎重さ
9月に公表された主要経済指標と10月1日公表の日銀短観からは、製造業の景況感・収益見通しの改善と、設備投資計画の底堅さが確認されました。日銀短観の9月調査では、大企業・製造業の業況判断DIが前回の22から24へ改善しました。改善は大企業以外にも広がっており、全規模・製造業では前回14から19となりました。一方、大企業・非製造業は37から35へ低下しました。引き続き良好な水準にありますが、小売、対個人サービス、宿泊・飲食サービスなど、消費と関わりの深い業種では景況感が弱まっています。
消費の実績をみても、足元の反発は小幅です。日銀の実質消費活動指数(旅行収支調整済)は、4~6月期に前期比1.0%増加しました。単月でみると、6月は前月比1.5%減少したのに対し、7月は同0.2%の増加にとどまりました。また、総務省の世帯消費動向指数(CTIミクロ、二人以上世帯)は、7月に実質で前月比1.4%増、前年同月比2.2%の減少となっています。対象や推計方法の異なる指標ですが、消費が力強く回復していると判断するには、まだ材料が不足しています。
【2】日銀短観:内容・注目点:製造業の収益改善と、底堅い設備投資計画
今回の短観で注目したいのは、製造業を中心とする上期収益見通しの改善です。全規模・全産業の2026年度上期の経常利益計画は前年同期比9.4%増となり、計画金額は6月調査から16.9%上方修正されました。製造業の増益率は28.2%と、全体を押し上げています。ただし、上期はまだ見込みの段階であり、非製造業は3.4%の減益計画です。
企業部門全体が一様に好調というよりも、製造業の改善が際立つ内容です。先行きの収益計画では慎重さが残ります。全規模・全産業の下期経常利益は前年同期比4.8%の減益計画です。上期の改善が下期にも続くか、今後の決算発表と計画修正が重要になるでしょう。
設備投資計画も底堅さを維持しています。全規模・全産業の2026年度の設備投資計画(土地を含み、ソフトウェア・研究開発を除く)は前年度比7.6%増となり、計画金額は前回2026年4-6月期から0.8%増と概ね横ばいとなりました。企業規模別でも同様です(図表3)。
先行きにおいても設備投資は堅調な推移を見込んでいます。前号「【日本】前四半期(4~6月期)は設備投資が伸び悩むも、足元の7~9月期は復調の気配」で指摘した、投資財出荷の最新データ(8月分)は前月比-3.3%と7月の大きな伸び(同+7.0%)の反動が出る結果となりました。一方で、四半期ベースではプラスとなる公算が高く、振れを伴いながら堅調な設備投資需要を消化していくものと考えられます。
【3】所感:期待インフレも上昇基調で推移/内需の底堅さ続くかがポイント
国内景気の持続性を考えるうえでは、企業収益の改善が設備投資や賃金を通じ、国内需要に波及するかが重要です。家計を取り巻く所得環境には改善がみられます。7月の毎月勤労統計の確報では、現金給与総額が前年同月比4.3%増、実質賃金が同2.0%増となりました。所定内給与も3.8%増加しており、賞与だけに依存した改善ではありません。購買力の回復は消費を支える材料ですが、それが支出の増加につながっているかは、上述のとおり今のところ限定的と言えます。
一方で、賃上げのモメンタムが継続していることは金融政策にとっては、利上げを支援する材料となります。足元の期待インフレ関連の指標を確認しても、総じて上昇基調が続いていると評価できるでしょう。
物価の観点からは、利上げ路線継続が正当化されますが、ポイントは内需も腰折れることなく推移するかにあると言えます。企業業績や設備投資は堅調に推移すると筆者は見込んでいますが、賃金がしっかりする中で、消費が伸び悩む可能性を懸念材料と想定しています。
マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 山口 慧太
