2026年8月31日(月)8:50発表
日本 7月分鉱工業生産指数、ほか
【1】結果:前四半期は内需が伸び悩み/7月は生産・消費が拡大
2026年8月に公表された経済指標を概観すると、生産や消費は比較的堅調であったと評価できます。中ごろに発表された前四半期(2026年4~6月期)のGDP速報値は、前期比+0.3%と3四半期連続でプラス成長となりました。額面的にはポジティブにとらえられますが、個人消費は前期から横ばい、設備投資に至ってはマイナス成長と内需の伸び悩みがうかがえました。
一方で、設備投資の先行指標とされる機械受注統計は伸びを拡大しており、強さがうかがえます。雇用(失業率)は、2026年3月には2.7%まで上昇していましたが、7月は前月から0.1ポイント低下し、2.4%となりました。
【2】内容・注目点:7~9月期の設備投資は堅調な見込み
図表2は実質GDPを指数化したもので、2025年12月期をピークに、設備投資は低下基調で推移していることが確認され、ここ数四半期、国内の設備投資は伸び悩みがうかがえます。もっとも、本稿を執筆した2026年9月1日に発表された法人企業統計調査では前四半期のソフトウェアを含む設備投資が、前期比+1.5%であったと公表されました。同統計の数値はGDPの2次改訂に用いられることから、設備投資が上方修正される可能性が高く、低下基調からの反転が期待されます。
足元の設備投資関連の指標を確認してみても、ある程度堅調さがうかがえます。図表3は、工場の機械設備などの「資本財」と、土木工事用の資材などで構成される「建設財」といった設備投資に用いられる財(あわせて投資財といいます)の出荷動向をみたもので、直近7月の資本財が前月比で大きく上昇していることがわかります。資本財の出荷拡大から、先々の設備投資に用いられることが示唆されるほか、企業の生産能力向上も期待できるものです。
また、上述の機械受注統計でも7~9月期は前期比+4.9%が見込まれています。機械受注統計も設備投資の先行指標とされていますが、それ以外にも「機械を作る機械」の受注動向を示す工作機械受注もここ数ヶ月は水準を切り上げて推移しています。工作機械受注は外需向けが全体の6~7割程度を占めるという特徴があります。
内需のみをピックアップした工作機械受注の動向を確認すると、実際に2022年半ばから2026年初頭までは前年比0%近傍と、内需向けの受注はあまり拡大しませんでした(図表4、水色)。ここにきて、内需の設備投資需要が拡大しており、直近では前年比+50%程度と大きく上昇しています。これだけでも内需向けの設備投資の拡大や生産設備の拡張が推察されますが、単に設備投資の拡大のみならず、設備投資に付随した雇用の創出など、国内マクロ全般に通ずる需要喚起の効果が期待できます。
【3】所感:既に地方でも設備投資拡大を表明する企業が多数
国内の設備投資需要の拡大は、高市政権が掲げる17分野への戦略投資に通じる中長期的なテーマと言えます。2040年までに370兆円という大規模の官民投資を推進する方針であり、日本の競争力強化に資する戦略的な資金投入とされています。今回取り上げたように、既に設備投資の拡大が経済指標などの統計に表れているだけでなく、具体的な企業の投資計画にも表れ始めています。
キオクシアホールディングス(285A)とサンディスク[SNDK]は、2032年までに国内で約5兆円を投じ、三重県四日市市と岩手県北上市の生産基盤を強化する方針を発表しました。北上工場では第3製造棟(K3棟)の建設準備に入り、2029年度中の稼働を目指すとされています。そのほかにも、京セラ(6971)は本稿執筆日の9月1日、長崎県諫早市に半導体製造装置向け部品などを生産する新工場を開設しました。
また、NGK(5333)も石川県能美市に約700億円を投じ、半導体製造装置用セラミックスの新工場を建設する計画中です。AI・半導体需要を起点とした投資が多いですが、メモリーそのものだけでなく、製造装置部品や電子部品など周辺領域の生産設備拡大も見受けられます。
大規模な工場投資は、建設や製造装置の需要にとどまらず、雇用、物流、住宅、周辺サービスや関連企業の立地を通じて、地域経済に波及する可能性があり、人口減少が進む地方に高付加価値産業の拠点が形成される意義は大きいと言え、設備投資を超えた内需の拡大に寄与することが期待されます。
マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 山口 慧太
