先週(8月17日週)の金(ゴールド)相場

米ドル建て金価格は、8月14日の4,376ドルから8月21日に4,603ドルへ上昇し、週間では約5.2%高となった。CME金先物も週間で約5.6%上昇し、5月中旬以来およそ3ヶ月ぶりの高値を回復している。

一方、円建て金価格も前週比で上昇したが、米ドル/円がわずかに円高方向に動いたため、米ドル建てをやや下回る約4.9%高となった。

【図表1】先週(8月17日週)の金(ゴールド)相場
※Bloombergよりマネックス証券作成(金価格は1トロイオンスあたりの価格、円建て価格はUSD建て×米ドル/円で算出)

値動きの背景:米財務省の国債買い戻し増額がドル安を招き、金の代替資産需要を刺激した

先週(8月17日週)の金を押し上げたのは、米財務省による長期国債の買い戻し増額の発表である。この一報を境に、金利上昇の読み方が「引き締め」から「財政リスク」へ移り、米ドルへの信認が揺らいだことが逃避需要を強めた。米10年実質金利は2.41%から2.40%とほぼ動かず、ドル指数は99.67から98.80へ0.9%下落している。

週前半は、イランが米国との暫定合意の延長を拒んだことを受けてブレント原油が90ドルを上回った。原油高がインフレ再燃と利上げを意識させるなか、米長期金利は1年ぶりの高水準に迫り、金はいったん反落した。地政学リスクによる逃避需要よりも、原油高を通じた金利上昇が意識される構図が続いていた。

局面が変わったのは8月19日である。財務省の発表を受けて利回りと米ドルが急低下し、金は4.3%上昇した。同日公表のFOMC(米連邦公開市場委員会)議事要旨は複数の参加者が利上げを支持するなどタカ派的だったが、それでも米ドルは下落し、金は買われている。長期金利の高止まりが財政への警戒を強めていたところに、その金利を政府が抑えにいったことで、かえって米ドルへの不安が意識された格好である。

原油は週間で5%超上昇し、ブレント原油は94ドル台で引けたが、9月会合の利上げ確率は3割前後にとどまった。米長期金利が週間では上昇するなかでも金は5.2%上昇しており、これまで金の逆風だった原油高と金利上昇が、財政懸念と米ドル安を通じて金買いにつながる構図へ変化した。これに地政学リスク本来の逃避需要も重なり、金が上向きやすい地合いとなった。

需給面の動き:ETFに巨額の資金流入、投機筋の買い越しは7ヶ月ぶりの高水準

代表的な金ETFであるSPDRゴールド・シェア[GLD]には週間で約34億ドルの資金が流入した。8月18日に約7.6億ドルの資金が流出したものの、その後は3営業日続けて大幅な流入となり、8月19日と8月21日にはそれぞれ10億ドルを超える資金が入っている。米財務省の発表を境に投資家が一斉に金へ回帰した形で、価格の急伸と資金の動きが日単位で符合している。

一方、CFTCが8月21日に公表した8月18日時点のデータでは、CME金先物の投機筋(Non-Commercial)のロングは256,902枚、ショートは34,713枚であり、差し引き22.2万枚の買い越しとなった。前週からロングが5,966枚、ショートが1,717枚それぞれ増加し、ネットの拡大は0.4万枚と小幅だが、水準としては1月下旬以来およそ7ヶ月ぶりの高さにある(*)。

ただしこれは8月19日の急騰前の集計であり、その後の上昇局面でさらに積み上がった可能性がある。高水準の買い越しは、追随が続けば上昇を後押しする半面、財政懸念が薄れれば手仕舞い売りが下げを速める要因にもなる。

【図表2】金ETF(GLD)日次純流出入
出所:SPDRヒストリカルデータ、Bloombergよりマネックス証券作成

今週(8月24日週)の注目ポイント

まず注目すべきは、8月26日に発表される7月のPCEデフレーターである。市場予想はコアが前年比3.3%と6月から横ばいで、8月13日の生産者物価が総合・コアとも市場予想を下回ったこともあり、鈍化基調の継続が見込まれている。予想を下回れば据え置き観測が強まり、上回れば9月の利上げ観測が再燃する。ただし、その再燃がそのまま金の重しになるかは、金利上昇がどう読まれるかによる。

今週(8月24日週)最大のイベントは、8月27日~29日のジャクソンホール会議で、8月28日にはウォーシュFRB(米準備制度理事会)議長が就任後初の講演に臨む。同議長はフォワードガイダンスに否定的で、政策の道筋を明示しない公算が大きい。政策の方向性が曖昧なままであれば関心は財政とドルに向かい金には追い風となるが、インフレ抑制への強い姿勢が示されれば上値を抑える。

債券市場では、財務省による買い戻し増額の適用は9月9日からだが、先週の発表を織り込む動きが続くかどうかが焦点となる。織り込みが残れば長期金利は抑えられ、財政への警戒からドルも戻りにくく、金は支えられやすい。逆に織り込みが薄れて金利上昇にドル高が伴えば、従来の引き締め相場に戻り金の重しとなる。

米イラン情勢では、米国が史上最も厳しい経済制裁を予告したことで緊張が高まっており、原油は振れやすい。制裁強化で原油が一段と上げれば、財政懸念が続くかぎり逃避需要が優勢となって金を押し上げやすい。一方、対話が進み原油が下げれば、地政学プレミアムの剥落で上昇分の一部は失われる可能性がある。

直近の金現物の価格予想レンジとして、上値は4,800ドル、下値は4,400ドルが意識される。