根強い円安マインド払しょくのために米ドル/円の水準変更が必要
通貨当局首脳(片山財務大臣や三村財務官)は、特定の為替相場の水準についてはコメントしないというのが基本姿勢だが、ある程度具体的な水準を想定しないと円安の阻止、是正はできないだろう。その意味では、コメントはしないながらも、通貨当局の内部においてはある程度円安阻止・是正の具体的な目標水準は共有されている可能性が高いのではないか。
当局では、米ドル/円が160円を超えるまで売られたことについて、日本の財政規律への懸念や相対的に低い金利など様々な理由があることは理解しているが、要するにそうしたことを受けた根強い円安マインドの結果と考えている。このため、円安の流れを変えるためには、円安マインドを払しょくする必要があり、そのためには米ドル/円の水準が変化することが重要との認識があるようだ。
以上を踏まえると、当局が円安是正で目標とする水準はまずは150円、その上で130~140円まで米ドル安・円高に戻ることを目指している可能性がある。ではそうであるとして、果たしてそれは実現可能なのだろうか。
150円までの円高に必要な10年債利回り2%への低下は実現可能なのか?
1年余り前から、米ドル高・円安は日本の財政規律への懸念を主因として長期金利上昇との連動性が強い状況が続いてきた(図表1参照)。この関係性が続くなら、150円まで米ドル安・円高に戻るためには、長期金利(10年債利回り)が2%まで低下することが必要との見通しになる。
高市政権が誕生した2025年10月に、10年債利回りは1.6%だったことを考えると、2%まで低下する可能性も十分にありそうだが、それには高市政権の看板政策である「責任ある積極財政」の大転換が必要と考えられ、高市政権が続く中ではやはり非現実的な感じが強いのではないか。
財政規律懸念払しょくで金利差とのかい離修正本格化なら130~140円も
次に金利差との関係を見てみよう。財政規律への懸念が主なテーマとなったことで、米ドル/円と日米金利差(米ドル優位・円劣位)は異例なほどのかい離が広がっている(図表2参照)。そもそも両者の間に一定の相関性があった2024年までの関係を前提にすると、米ドル安・円高は120~130円まで戻してもおかしくないほど日米金利差は縮小している。
そう考えると、日本の財政規律への懸念が払しょくされ、米ドル/円が日米金利差とのかい離を修正するような動きとなった場合は、当局が期待する130~140円までの円安是正の実現可能性は出てくるのかもしれない。
構造変化の影響から120円の円高の可能性は低い
かつて世界一の貿易黒字大国だった日本が、今や貿易収支やサービス収支が赤字に転落するなど日本経済の衰退という構造変化の影響はどう考えたらよいか。米ドル/円の5年MA(移動平均線)かい離率を見ると、米ドル安・円高局面において、米ドル/円の5年MAを下回る程度の縮小が続いてきたことが確認できる(図表3参照)。これは、日本経済の構造変化が、かつてよりも円高になりにくくなる影響をもたらした可能性を示している。
これを参考にすると、次の円高局面でも、米ドル/円が足下で140円台半ばまで上昇してきた5年MAを大きく下回るまで下落する可能性は低いのではないか。そう考えると、当局が目指す円安是正も130~140円まではあり得るものの、120円の可能性はかなり低いということになるのではないか。
