6月の振り返り=介入警戒しながらも2024年7月の円安値寸前に肉薄

市場と当局の腹の探り合い=6月米ドル/円の値幅はわずか2円台

6月の米ドル/円はジリジリと上昇し、ゴールデンウィーク中に日本の通貨当局が円安阻止介入に動いた水準を超えて、2024年7月の高値である161.9円の更新寸前まで迫りました(図表1、2参照)。ただ、これに対して再度の米ドル売り・円買い介入は、これまでのところ実施されていないとみられています。

【図表1】米ドル/円の日足チャート(2026年4月~)
出所:マネックストレーダーFX
【図表2】米ドル/円の月足チャート(2021年~)
出所:マネックストレーダーFX

それでも、米ドル/円が2024年7月の高値に肉薄し、片山財務大臣とベッセント米財務長官によるオンライン会談が行われたと報道されるなど、米ドル高・円安が続く中で、市場と当局の腹の探り合いのような状況が続いています。そのため、6月の米ドル/円の値幅は、これまでのところ3円未満の小幅にとどまっています。

米利上げ見通し拡大が米ドル高・円安を後押し

このような米ドル高・円安は、基本的には日米金利差(米ドル優位・円劣位)拡大によって正当化されるものでした。日米2年債利回り差は2.6%台から、おもに米金利上昇が主導する形で、一時は2.8%以上に拡大しました(図表3参照)。

【図表3】米ドル/円と日米2年債利回り差(2026年4月~)
出所:LSEG社データよりマネックス証券が作成

6月は、日米ともに金融政策の発表がありました。日銀が2025年12月以来となる利上げを決めた一方で、FRB(米連邦準備制度理事会)は政策金利を据え置きました。ただ、前者が事前予想通りだったのに対し、後者は今回からFOMC(米連邦公開市場委員会)に初めて参加したウォーシュFRB新議長が予想以上の金融引き締めを支持し、「タカ派」と受け止められました。その結果、金融政策を反映する2年債利回りは、日本がほぼ横ばいだったのに対し、米国は大きく上昇。日米金利差は拡大しました(図表4参照)。

【図表4】日米の2年債利回りの推移(2026年4月~)
出所:LSEG社データよりマネックス証券が作成

特に米2年債利回りは、一時4.2%を大きく上回り、米国の政策金利であるFFレートの誘導目標上限(3.75%)からの上ぶれ幅は0.5%近くに拡大しました(図表5参照)。同上ぶれ幅は、5月半ば頃から0.25%以上に拡大しました。市場は先々の0.25%のFFレート引き上げを織り込むようになっていましたが、その後は利上げの早期化や、「0.25%×2回」の連続利上げも織り込み始めました。

【図表5】米2年債利回りとFFレート(2020年~)
出所:LSEG社データよりマネックス証券が作成

投機筋の米ドル買い・円売り「行き過ぎ」懸念が拡大

6月に米ドル高・円安が続いたもう1つの要因として、投機筋の円売り拡大がありそうです。代表的な投機筋であるヘッジファンドの取引を反映しているCFTC(米商品先物取引委員会)統計の投機筋の円ポジションは、一時売り越し(米ドル買い越し)が15万枚以上と、2024年7月以来の高水準に拡大しました(図表6参照)。

【図表6】CFTC統計の投機筋の円ポジション(2005年~)
出所:LSEG社データよりマネックス証券が作成

ただこれは、投機筋の円売りの「行き過ぎ」懸念が強くなってきた可能性も感じさせるものです。同統計の円売り越し過去最高は、2007年と2024年に記録した18万枚で、6月の円売り越しはそれに迫る動きとなりました。

似たようなことが「米ドル買い」についても言えそうです。投機筋の米ドル・ポジション(非米ドル主要5通貨=円、ユーロ、英ポンド、加ドル、豪ドルのポジションで試算)は、買い越しが30万枚を大きく上回ってきました(図表7参照)。これは、経験的に米ドルの「買われ過ぎ」懸念を示すものです。

【図表7】CFTC統計の投機筋の米ドル・ポジション(2000年~)
出所:LSEG社データよりマネックス証券が作成

このように、円の「売られ過ぎ」と米ドルの「買われ過ぎ」が同時に起こったのは、2024年7月にかけても見られた現象でした。この時は、日本の通貨当局による断続的な米ドル売り・円買い介入をきっかけに、円安から円高への急転換が起こりました。

7月の注目点=引き続き日米の円安阻止姿勢が焦点

円安から円高へ急転換した2024年7月との類似点も

これまで見てきたように、6月の米ドル/円は、日米金利差拡大などを背景に2024年7月の高値更新寸前まで上昇しました。一方で、投機筋の米ドル買い・円売り懸念もかなり強くなってきたようです。2024年7月は、当局が断続的な円安阻止介入を行う中で、投機筋が米ドル売り・円買いに転換したことなどにより、米ドル高・円安は161円で終了し、1ヶ月もしないうちに141円まで約20円もの急激な米ドル安・円高となりました。

円高に転換しやすい7月=米ドル/円は150~162円で予想

このように、2024年7月に円安から円高へ急転換した背景には、7月というタイミングも一因だった可能性があります。2022~2025年の4年間で、7月は2025年を除く3回が米ドル/円の陰線(米ドル安・円高)となりました。つまり7月はそもそも円高になりやすい傾向があったわけです。

7月に円高に転換しやすかったのは、それまで円売りを続けてきた投機筋が、夏期休暇に入る前に円売りポジションの縮小に動いた影響があったと考えられます。この点については、今回も7月の投機筋の動向と、それが米ドル/円に及ぼす影響に注意が必要です。

以上を踏まえると、7月は円安から円高へ転換する可能性に注目します。米ドル/円は150~162円で予想したいと思います。

7月第1週の米ドル/円は155~162円で予想

今週(6月29日週)は水曜から7月に変わります。通常第1金曜日に発表される米雇用統計は、今回は7月2日(木)発表の予定です。前回大きく増加したNFP(非農業部門雇用者数)は、今回も10万人を大きく上回る増加が予想されています。また、失業率も前回の4.3%から横ばいが見込まれており、引き続き強めの数字が予想されています。

予想通り強い結果となった場合、米ドル買い仕掛けとなってもおかしくありませんが、それに日米当局が為替介入姿勢を示すかが米ドル/円の行方を決めることになりそうです。私は、日米の円安阻止姿勢は変わらないと考えているため、今週(6月29日週)の米ドル/円の予想レンジは155~162円にします。