2月末は「売られ過ぎ」だった米ドル=足下は極端な「買われ過ぎ」

2月末に、米国とイスラエルによるイラン攻撃が始まると、為替市場では米ドル買いが強まり、それを「有事の米ドル買い」と呼ぶ声もあった。当時のCFTC(米商品先物取引委員会)統計の投機筋の米ドル・ポジション(非米ドル主要5通貨=円、ユーロ、英ポンド、加ドル、豪ドルのポジションで試算)は大幅な売り越しとなっていた(図表1参照)。その意味では、「有事の米ドル買い」とされた動きは、米ドルの「売られ過ぎ」修正と呼ぶのが正しかったのではないか。

【図表1】CFTC統計の投機筋の米ドル・ポジション(2026年1月~)
出所:LSEG社データよりマネックス証券が作成

投機筋の米ドル・ポジションは、売り越しの20万枚以上となり、「行き過ぎ」圏にある。その意味では、イラン攻撃が始まった頃、米ドルはかなり「売られ過ぎ」との懸念が強い状況あった。これに対して、足下の米ドル・ポジションは買い越しが40万枚以上と過去最高規模に達している(図表2参照)。つまり、足下の投機筋の米ドル・ポジションは、2月末にイラン攻撃が始まった頃とは正反対の「買われ過ぎ」懸念が極めて強い状況となっている。

【図表2】CFTC統計の投機筋の米ドル・ポジション(2000年~)
出所:LSEG社データよりマネックス証券が作成

2月末のイラン攻撃後から、「売られ過ぎ」の修正で米ドル買いが広がったことは理解できるが、そうだとすると足下ですでに「買われ過ぎ」の米ドルが、さらに買われることになるのだろうか。むしろ「買われ過ぎ」の修正で米ドル売りが広がる「有事の米ドル売り」が起こる可能性もあるのではないか。

ユーロのポジションも2月末とは大きく異なる

2月末のイランへの攻撃が始まる前、なぜ米ドルは「売られ過ぎ」となっていたのか。1つのきっかけは、1月下旬の円安けん制で行われた日米協調「レートチェック」だったようだ。米国の通貨当局による「レートチェック」という「サプライズ」を受けて投機筋の米ドル売りが拡大し、約1ヶ月後には「行き過ぎ」懸念が強まるところまで米ドル売りが拡大した。

その米ドル売りの「受け皿」となったのが「第2の基軸通貨」ユーロだった。投機筋のユーロ買い越しは、イラン攻撃が始まる2月末には大幅に拡大していた(図表3参照)。ただイラン攻撃を受けた原油やガスの供給懸念はユーロにとって大きなリスクだった。このため、大幅なユーロ買い・米ドル売りのポジション修正が急ピッチで進み、それが「有事の米ドル買い」と見られたのではないか。

【図表3】CFTC統計の投機筋のユーロ・ポジション(2026年1月~)
出所:LSEG社データよりマネックス証券が作成

足下のユーロのポジションは小幅な売り越しで、2月末にイラン攻撃が始まった頃の、大幅なユーロ買い越しの状況とは全く異なる。そうした中で、米国とイランの対立が再燃したとしても、さらなる米ドル買い・ユーロ売りが拡大することになるのだろうか。

足下の円は「売られ過ぎ」=夏期休暇前のポジション調整に注目

最後に円のポジションについても見てみる。円のポジションは、2月末にイラン攻撃が始まった頃は小幅な買い越しだったが、足下では10万枚を大きく超える売り越しとなっている(図表4参照)。経験的に、売り越しの10万枚以上は「行き過ぎ」圏となる。

【図表4】CFTC統計の投機筋の円ポジション(2026年1月~)
出所:LSEG社データよりマネックス証券が作成

例年、8月からの夏期休暇が本格化をするのを控えて、行き過ぎたポジションを縮小する動きが広がる傾向がある。そうしたことを考えると、円も「売られ過ぎ」の修正に向かう可能性が高いのではないか。米ドル側から見ると、対円でも「有事の米ドル売り」になる可能性があるということだろう。