先週(1月5日週)は裾野の広がりを伴った上昇局面に
2026年最初の本格的な取引週となった1月5日から9日にかけての米国株式市場は、発表された経済指標の内容とは対照的に、極めて底堅く、かつ上昇の裾野が広がる展開となりました。景気減速を示唆する指標が相次ぐ中でも、株式市場は調整色を強めることなく、リスクオンの展開となったのです。
前週末の1月3日に報じられた、米軍によるベネズエラのマドゥロ大統領夫妻の拘束を巡るニュースについても、市場は地政学的リスクの再燃とは受け止めず、すでに収束した事象として消化しました。その結果、世界の株式市場に動揺は見られず、むしろ好意的な反応が優勢となりました。
主要株価指数の動きを見ると、S&P500は週を通じて史上最高値を更新し、週間で+1.57%の上昇となりました。ナスダック100も+2.22%と、ITセクターを中心に堅調な推移を示しています。
なかでも特筆すべきは、時価総額加重ではない指数群の強さです。等ウェイトのS&P500は+2.45%、中型株で構成されるS&P1000は+3.56%、さらに小型株指数のラッセル2000は+4.62%と大幅に上昇しました。これは、指数上位の一部大型株に依存した上昇ではなく、市場全体に買いが広がる裾野の広がりを伴った上昇局面であったことを示しています。
市場は「現在の減速」よりも「将来の再加速」を評価か
1月9日(金)に発表された12月の米雇用統計では、非農業部門雇用者数の増加が市場予想を下回り、雇用の拡大ペースが明確に鈍化していることが示されました。2025年通年で見ても、この雇用環境は、景気後退局面を除けば2003年以来とも評される低調さです。
この結果を受け、マーケットは寄り付きでは一時的に下落しました。しかし、その後は速やかに切り返し、引けにかけては史上最高値を更新しています。この一見すると矛盾した値動きは、市場が雇用指標をすでに「遅行指標」として再定義し始めていることを示唆しています。
投資家の関心は、足元の雇用の弱さそのものではなく、むしろ、これまで実施されてきた利下げの累積効果、今後見込まれる追加利下げ、さらには財政刺激策の発動可能性、そして2026年に向けた成長シナリオへと移っています。言い換えれば、市場は「現在の減速」よりも「将来の再加速」を評価し始めているのだと思います。
つまり、今回の株価上昇が示しているのは、投資家の視線が過去の雇用データではなく、半年から1年先のマクロ環境と企業収益の回復可能性に向かっているということでしょう。
パウエルFRB議長への捜査報道後もマーケットは持ち直し
1月10日・11日の週末にかけて、米国の検察当局が、2025年夏の議会証言を巡り、FRB(米連邦準備理事会)議長ジェローム・パウエル氏を捜査していることが明らかになりました。
焦点となっているのは、1935年に建設されたFRB本部および第2ビルの改修・近代化プロジェクトで、2022年に着工した工事が現時点で当初予算より約7億ドル上回っているという点です。2021年時点の計画案には、専用エレベーターや専用ダイニング、屋上テラスなどの豪華設備が含まれていましたが、パウエル議長は2025年6月の議会公聴会で、それらの多くは最終計画には含まれていないと否定しています。
1月11日(日)、パウエル議長は動画声明を発表し、今回の捜査は改修問題そのものではなく、FRBがトランプ政権の意向ではなく公共の利益に基づいて金利を決定していることへの圧力であるとの認識を示しました。なお、議長としての任期は5月15日に終了しますが、FRB理事としての任期は2028年1月まで残っており、今後も政策決定に影響を与える立場にあります。しかし、パウエル議長が5月以降もFRBに残るかは定かではありません。
この一連の報道を受け、FRBの独立性を巡る不確実性が意識され、週明けの米国株式市場は下落して始まりました。ただ、その後マーケットは持ち直し、S&P500は史上最高値を更新。結果として、政治・制度面のリスクが浮上する中でも、マーケットのレジリエンスが改めて確認される展開となりました。
テックイベントCES 2026で注目を集めたAI需要の強さ
先週(1月5日週)前半のマーケットを押し上げた最大の材料は、CES 2026でしょう。世界最大級のテクノロジーの展示会であるCESでは、エヌビディア[NVDA]とアドバンスト・マイクロ・デバイシズ[AMD]のCEO達が基調講演を行い、AI需要の強さを改めて印象づける内容となりました。とりわけ注目を集めたのは、「AIのアクティブユーザーは、今後5年で10億人から50億人へ」というアドバンスト・マイクロ・デバイシズのコメントです。
これは数字そのものの正確性よりも、方向性(ベクトル)とスピード(ベロシティ)が上向きで速いという点が、市場で強く意識されました。エヌビディアは、データセンター向けAIだけでなく、自動運転やロボティクスといったフィジカル AIの将来像についても言及。これが半導体株全体、さらには関連するメモリ、インフラ、産業系銘柄へと波及することになり、ナスダックを押し上げる結果となりました。
一方で、ワシントンではトランプ米大統領が、防衛関連企業に対し、増配や自社株買いよりも設備投資を優先すべきだと発言したことで、防衛関連銘柄が弱含む場面も見られ、政策リスクへの警戒も意識されました。
今週(1月12日週)はTSMCなどが決算発表、AI半導体需要の実需を測る試金石に
今週(1月12日週)からは2025年第4四半期の決算発表が本格化します。現時点におけるS&P500の業績予想は、前年比+8.42%の増益と見込まれています。1月13日のジェイピー・モルガン・チェース[JPM]の決算を皮切りに、14日にはバンク・オブ・アメリカ[BAC]、シティグループ[C]、ウェルズ・ファーゴ[WFC]が続きます。
さらに15日には台湾のTSMC(台湾セミコンダクター・マニュファクチャリング)[TSM]が決算を発表する予定であり、AI半導体需要の実需を測る重要な試金石となる見込みです。
