1月効果の先に意識される「節分天井、彼岸底」
毎年1月は株価が上昇しやすいとされる「1月効果」というアノマリーについては、2025年11月27日付マネクリ掲載の【連載:吉野貴晶のなるほど株価の法則】「年末相場を制する:1月効果と12月の買い場を読む」で、その検証結果を紹介しました。分析の結果、1月の日経平均株価は過去に約68%の確率で上昇しており、統計的にも一定の傾向が確認されています。
この1月効果の先に意識されやすいのが、株式市場でよく知られている季節性アノマリーである「節分天井、彼岸底」です。2026年の節分は2月3日、春のお彼岸は春分の日にあたる3月20日前後となりますが、このアノマリーは、2月の節分の頃に株価が高値をつけやすく、その後、3月の春分の日を挟んだお彼岸の時期にかけて株価が底を打ちやすい、という経験則を指します。
もしこのアノマリーが当てはまるのであれば、1月効果によって株価が上昇した後、節分に向けては利食い売りを検討すべき局面が訪れる可能性もあります。そこで本稿では、この「節分天井、彼岸底」というアノマリーが、実際にどの程度有効なのかについて、データを用いて検証しました。
なぜ節分で株価は伸び悩み、彼岸で下げ止まりやすいのか
「節分天井」:1月効果によって上昇した株価が一服しやすい局面
そもそも「節分天井、彼岸底」と言われる背景には、相場の季節性に関するいくつかの要因があります。まず「節分天井」についてですが、これは1月効果によって上昇した株価が、一服しやすい局面を迎えることが理由とされています。
1月効果の背景としては、新年を迎えてクリスマス休暇から戻った外国人投資家による買い戻しや、前年末に行われた個人投資家の損益通算に伴う売りの反動が挙げられます。加えて、新春相場ならではの先行きに対する期待感も、1月相場を押し上げる要因となっていると考えられます。
しかし、節分が近づくにつれて年初特有の高揚感が薄れる一方、3月期決算企業の期末が意識され始め、新年度の業績見通しがどのようになるのかといった不透明要因に市場の関心が向かいやすくなります。こうした心理の変化が、株価が高値圏で伸び悩みやすいとされる「節分天井」の根拠とされています。
「彼岸底」:株価が下げ止まり、反転のきっかけを探る局面になりやすい
一方、「彼岸底」については、節分後に進んだ株価調整が日柄の面で一巡しやすい時期にあたることに加え、3月の会計年度末を意識した売り圧力が出尽くしやすい点も背景にあります。年度末に向けては、機関投資家によるポジション調整や利益確定の売りなどが先行しがちですが、こうした動きが一巡すると、需給面では次第に改善が進みます。
さらに、3月下旬になると、4月以降の新年度相場を見据えた心理的な期待も加わるため、3月の春分の日を挟んだお彼岸の時期にかけて、株価が下げ止まり、反転のきっかけを探る局面になりやすいと考えられています。
データで検証する「節分天井」と「彼岸底」の実像
節分に向けて明確な上昇基調、その後は横ばい圏で推移する傾向
そこで、こうした市場で語られてきた根拠が本当に妥当なものなのかを、データを用いて検証しました。検証対象は、東京証券取引所が第2次世界大戦後に再開して以降の期間です。節分と春分の日は、1950年から2025年までに計76回訪れています。
図表の赤線グラフは、節分の日を起点とした前後の日経平均株価の平均的な推移を示したものです。具体的には、毎年の節分の日からさかのぼって21立会日前を起点に日経平均株価を指数化し、同様の手法で作成した76本の株価推移を平均しています。
この結果を見ると、1月効果の影響もあり、節分の日に向けて赤線グラフは明確な上昇基調を示しています。一方、節分を過ぎると、株価は下落に転じるというよりも、横ばい圏で推移する傾向が確認できます。
節分後は勢いが鈍化する一方で、下落局面に入りやすいわけではない
このことから言えるのは、節分前後で株価がピークを付けやすい傾向は見られるものの、その後に大きく下落するわけではなく、上昇しにくい局面に移行する、という点です。
先に参照した2025年11月27日「年末相場を制する:1月効果と12月の買い場を読む」では、月別の日経平均株価の騰落状況も確認しましたが、1月は上昇確率が68%と最も高い一方、2月も57%と、必ずしも上昇確率が低い月ではありません。これらの結果は、株価が節分の頃まで上昇しやすいものの、その後は勢いが鈍化する一方で、下落局面に入りやすいわけではないことを示しています。
一方、図表中の青線グラフは、春分の日前後における日経平均株価の動きを、節分の場合と同様に指数化して平均したものです。春分の日は国民の休日にあたるため、グラフ上では春分の日の翌営業日を「当日」として設定しています。
青線グラフの推移を見ると、当日からさかのぼっておおむね5営業日程度にかけて、株価が下落基調となる局面が確認できます。これは、年度末に向けたポジション調整や利益確定売りなど、需給面での圧迫要因が相場を下押ししているためと考えられます。
2026年に当てはめると、春分の日は3月20日にあたるため、3月に入ってから中旬にかけて、相場が調整しやすい局面が想定されます。しかし、その後は需給環境の改善とともに、株価は持ち直し、上昇基調に転じやすい動きが期待されます。
こうした値動きから、3月中下旬のお彼岸の時期にかけて株価が下げ止まり、反転しやすいとされる「彼岸底」の傾向が読み取れます。
アノマリーを活用するうえで重要なこと
もっとも、こうした傾向はあくまで過去の平均的な動きであり、すべての年に当てはまるわけではありません。検証結果からは、節分天井の後に株価が大きく下落しにくい傾向が確認されましたが、例外的な年も存在します。たとえば、新型コロナウイルスの感染が急速に拡大した2020年には、節分の日の終値から春分の日の翌営業日までの間に、日経平均株価は約26%の大幅な下落となりました。
このように、アノマリーを活用するうえで重要なのは、足元の相場環境に異常とも言える特殊要因が存在していないかを見極めることです。平年並みの市場環境であれば、季節性アノマリーを踏まえた投資戦略は有効に機能しやすいと考えられます。現時点では、2026年についても検証結果が示す通り、節分後は株価が伸び悩む局面が想定される一方、その後はお彼岸前後での再上昇を期待する戦略が視野に入ります。
