日本の長期金利と連動する米ドル/円

・高市政権誕生後、米ドル/円は年初来円安値近くまで戻している。2025年3月頃までは米ドル/円と日米10年債利回り差は連動していたが、2025年4月以降は金利差縮小を尻目に米ドル高・円安が拡大。金利差と為替相場の関係が崩れることはこれまでにもあったが、これほど長い期間大きく崩れるのは異例である。

・2025年4月以降の米ドル/円は日本の長期金利と連動しているようにみえる。金利上昇=円安という関係になっている。

国債増発リスクおよび財政規律への懸念から円売りが拡大

・長期金利上昇=債券下落の理由には、国債増発リスクおよび財政規律への懸念があり、起点の1つが「アベノミクス」である。アベノミクスの積極財政とその後のコロナショックで財政悪化が加速。また、金融緩和で国債購入が急増。実質的な「財政ファイナンス」=財政規律の低下である。

・高市政権はアベノミクス継承をうたっているため、債券売り=円売りが拡大していると考えられる。

・過去と同様為替介入を行えばこの状況は止まる可能性も想像もできる。しかし、今回は2022年、2024年の介入時とは、投機筋の米ドル売り・円買いポジションが多くなっており、状況が異なる

債券売りの円安が止まる条件は?

・債券売りの円安が止まる条件は2つある。(1)日本の財政規律への懸念を払しょくさせる。=「責任ある積極財政」の「責任」の明確化が必要となる。12月下旬の2026年度予算案が山場となるだろう。(2)米国などからの資本流出拡大。トランプ関税への最高裁判決等に要注意。株バブル破裂となれば、米ドル安・円高の可能性がある。

・日本の債券暴落の例として、1998年の「資金運用部ショック」があった。1998年10月、日本の10年債利回りは0.8%程度で推移していたが、有力格付け会社による日本国債の格下げ、そして大蔵省(現財務省)の国債定期買い入れ停止の決定などを受けて債券は暴落、10年債利回りも約3ヶ月で一気に2.5%近くまで暴騰。日銀は史上初のゼロ金利を決定し、ようやく歯止めをかけた。

・もし「資金運用部ショック」が再来となれば、米ドル/円は170円前後と、円急落に向かう可能性もあるだろう。