2025年の暗号資産市場は、第二次トランプ政権が投げかけた“期待”と“失望”の波に翻弄された一年であった。政権発足当初、トランプ大統領は暗号資産に対して前向きな姿勢を示し、市場では「国家がビットコインを本格的に保有する時代が到来する」との期待が急速に高まった。一方で、米国は年初から追加関税を相次いで発動し、主要国との貿易摩擦を再燃させたため、世界経済には不透明感が漂い、暗号資産市場もマクロ要因に振り回される展開が続いた。

期待が最大化したのは、米国連邦政府が押収済みビットコインを保有継続する方針を示したことである。これまで市場では押収分の売却が恒常的な供給リスクとして警戒されてきたが、この方針転換は売り圧力の後退を意味し、長期的な需給改善への期待を強める材料となった。さらに2025年には、テキサス州をはじめ複数の州でビットコイン準備金法案が相次いで可決され、州レベルでの「ビットコインの公的保有」が現実味を帯び始めた。

こうした動きは、米連邦政府による追加購入の可能性を市場に強く意識させることになり、トランプ政権が掲げる「国家ビットコイン準備金構想」への期待を一段と高めた。これらの思惑が重なった結果、ビットコイン価格は10月初旬にBTC=125,000ドル(日本円建てでは約1,880万円)を突破し、史上最高値を更新する局面が生まれた。

しかし、年後半にかけて市場は一転して“失望”へ傾いた。期待されたビットコイン準備金の制度設計は難航し、政府の積極的な買い増しが実現しないとの見方が広がると、過度に織り込まれていた期待が剥落し始めた。加えて、複数の新興ステーブルコインでペッグ崩壊が発生し、DeFi市場でも不正流出が相次いだことで、ビットコインは11月にBTC=80,000ドル台(日本円建てでは1,300万円台)まで急落した。

この流れを受け、2025年の暗号資産市場は株式市場に対して明確に劣後した。AI半導体ブームに支えられたS&P500や日経平均が堅調に推移する一方、ビットコインは政策期待と信用不安の板挟みに遭い、半減期サイクル特有の強い上昇には至らなかった。とはいえ、単年の劣後だけを切り取ってビットコインの将来性を否定するのは適切ではない。実際、5年・10年といった中長期で見れば、主要株価指数を大きく上回るリターンを示しており、今回の調整も成長トレンドの一局面にすぎないからだ。

むしろ、米国を中心に規制整備が進み、大手金融機関の参入やアルトコインETFの追加承認が進展したことは、今後の市場拡大に向けた制度基盤を形成した点で評価できる。この土台を踏まえ、2026年のビットコイン相場がどのような展開をたどるのかについては、マネクリ掲載のレポート(ビットコイン(BTC)最新動向と相場予想 2025年12月5日付け「【2026年相場展望】ビットコイン予想:流動性拡大と機関需要が追い風、AIブームとトレジャリーの過熱には警戒」)で詳述しているので、ぜひそちらも参照してほしい。