米国のビットコイン(以下、BTC)トレジャリー企業ストライブ[ティッカー:ASST]は、同業のセムラー・サイエンティフィック[SMLR]を株式交換により買収する計画について、株主承認を得たと発表しました。現金流出を伴わずにBTC保有量を一気に拡大できる点が特徴で、買収後の保有量は約1.3万BTC規模に達します。暗号資産を財務戦略の中核に据える企業同士が統合に踏み切る事例はまだ多くありませんが、今回の動きは、暗号資産トレジャリー企業におけるM&Aが今後本格化する可能性を示す象徴的な事例といえるでしょう。
BitcoinTreasuries(https://bitcointreasuries.net/)のデータから算出すると、BTCトレジャリー企業は北米を中心にすでに200社以上に増加しており、それらが保有するBTCは合計で約140万BTC、総発行量2100万BTCの約7%に達しています。ただし、その内訳を見ると、最大手のストラテジー[MSTR]が約70万BTCを保有し、企業保有分の約半分を占めるなど、極端な集中構造となっています。後続企業は「BTC価格に連動する株式」として投資家の資金を集めようとしていますが、規模・流動性・認知度で大きく劣る中、同じモデルを続けることにはすでに限界が見え始めています。
競合を避ける動きとして、BTC以外の暗号資産を保有するアルトコイントレジャリー企業も増えています。しかし、この戦略はさらにリスクが大きい点に注意が必要です。アルトコインはBTCに比べて市場規模が小さく、価格変動も大きいため、特定の暗号資産価格に連動する株式として十分な流動性と投資家の関心を長期的に維持できるのは、ごく一部の企業に限られると考えられます。暗号資産トレジャリー企業の性質上、同類の企業が無制限に成立するわけではないという現実が浮き彫りになっています。
こうした環境下で、特に小規模なトレジャリー企業が単独で生き残る選択肢は極めて限られています。本業で生まれる潤沢なキャッシュフロー無しに、資金調達を繰り返しながら暗号資産を積み上げるモデル自体に持続性が乏しいためです。結果として、規模拡大による流動性確保と存在感の向上を目的に、統廃合やM&Aが加速していくとみられます。今回の買収は、暗号資産トレジャリー企業が量的拡大のフェーズから、再編・淘汰のフェーズへ移行しつつあることを示していると言えるでしょう。
