アプライド・デジタル[APLD]、コアウィーブと15年契約で売上高確保へ

市場予想を大きく上振れ

次世代データセンターの設計や開発、運営を手掛けるアプライド・デジタル[APLD]が発表した2025年6-8月期決算は売上高が前年同期比84%増の6400万ドル、純損失(継続事業のみ)が2800万ドル(前年同期は1600万ドルの純利益)となりました。調整後のEPS(1株あたり利益)は-0.11ドルで、LSEG(ロンドン証券取引所)がまとめた市場予想の-0.13ドルから上振れています。

大幅な増収の要因は、建設中のデータセンターでの据付作業で2600万ドルの売上高を計上したことです。市場予想では売上高が約5000万ドルと見込まれていましたが、大きく上振れました。

アプライド・デジタルはクラウドサービス事業の売却を決め、非継続事業に分類したことで収入源は一時的に暗号資産マイニングを手掛ける企業へのデータセンター・ホスティング事業だけになりました。この契約の残り期間は2年余りです。

開発進むデータセンター「ポラリス・フォージ1」

ただ、ノースダコタ州のエレンデールに「ポラリス・フォージ1」と呼ぶデータセンターの開発を進めており、2025年5月には人工知能(AI)向けのクラウドプラットフォームを手掛けるコアウィーブ[CRWV]にホスティングサービスを提供する契約を結びました。2棟をリースする契約で建物の受電容量は第1棟が100MW(メガワット)、第2棟が150MWです。

さらに2025年8月には受電容量150MWの第3棟をリースすることでコアウィーブと合意しました。最初の契約と合わせるとリースするデータセンターの受電容量は計400MWで、15年間の契約期間中にアプライド・デジタルが受け取るリース料は計110億ドルに上る見通しです。

「ポラリス・フォージ1」の開発は進んでいるようで、第1棟は2025年末までに稼働する予定です。第2棟は2026年半ば、第3棟は2027年に稼働の準備が完了する見通しです。

「ポラリス・フォージ2」もすでに起工

さらにノースダコタ州ハーウッドの近郊に「ポラリス・フォージ2」を開発する計画も具体化し、すでに起工しています。手始めに受電容量150MWの施設2棟を建設し、今後の電力調達契約にも左右されますが、最終的に全体の受電容量を1GW(ギガワット)に引き上げる方針です。

「ポラリス・フォージ2」では、大規模なサーバー容量を保有しクラウドサービスを手掛けるハイパースケーラーにデータセンターのホスティングサービスを提供する方向です。すでに具体的な交渉が進んでいるようです。

【図表1】アプライド・デジタル[APLD]:業績推移(単位:百万ドル)
出所:LSEGよりDZHフィナンシャルリサーチ作成
※期末は5月
【図表2】アプライド・デジタル[APLD]:週足チャート(移動平均線 緑色:13週、橙色:26週)
出所:マネックス証券ウェブサイト(2025年10月17日時点)

ジョンソン・エンド・ジョンソン[JNJ]、整形外科事業をスピンオフへ

研究開発費の縮小や前年同期からの反動などにより大幅増益へ

ヘルスケアのジョンソン・エンド・ジョンソン[JNJ]が発表した2025年7-9月期決算は売上高が前年同期比7%増の239億9300万ドル、純利益が91%増の51億5200万ドルとなりました。非GAAP(米国会計基準)のEPS(1株あたり利益)は2.80ドルで、LSEGがまとめた市場予想の2.76ドルを1.4%上回っています。

研究開発費が26%減の36億7200万ドルに縮小した効果に加え、前年同期に特別損失を含むその他費用として17億9800万ドルを計上した反動が大幅増益につながりました。無形資産の減価償却費や特別損益を除く調整後純利益は16%増の68億100万ドルです。

新薬部門が好調

事業別では新薬部門の売上高が7%増の155億6300万ドル、調整後税引き前利益が44%増の64億4600万ドルと好調です。分野別ではがん治療薬の売上高が21%増と伸び、主力の「ダラザレックス」が22%増でけん引しています。免疫疾患治療薬は売上高が10%減の41億6800万ドルと苦戦しましたが、精神・神経疾患治療薬は売上高が15%増の20億2400万ドル。買収を通じて手に入れた双極性うつ病治療薬「カプリタ」が貢献しています。

医療機器部門は売上高が7%増の84億3000万ドル、調整後税引き前利益が22%増の12億8700万ドルです。分野別では手術が4%増収、整形外科が4%増収、心血管疾患が13%増収でした。

決算発表時に発表したガイダンスでは2025年12月通期の売上高を5.4-5.9%増の935億-939億ドルと予想し、7月時点の予想である「5.1-5.6%増の932億-936億ドル」から上方修正しました。調整後EPSは8.2%-9.2%増の10.80-10.90ドルで、7月時点の予想を据え置いています。

医薬品や医療機器の主力事業に集中

一方、ジョンソン・エンド・ジョンソンは決算発表時に医療機器部門の整形外科事業をスピンオフする計画を明らかにしました。18-24ヶ月以内に分離に踏み切り、医薬品や医療機器の主力事業に集中するのが狙いです。整形外科事業の売上比率は2024年12月期の実績で約10%です。

ジョンソン・エンド・ジョンソンは2023年にパーソナルケア製品や一般用医薬品、衛生用品などで構成する消費者向け製品部門をスピンオフしました。こうして誕生したケンビュー[KVUE]は2023年5月にニューヨーク証券取引所に上場しています。

【図表3】ジョンソン・エンド・ジョンソン[JNJ]:業績推移(単位:百万ドル)
出所:LSEGよりDZHフィナンシャルリサーチ作成
※期末は12月
【図表4】ジョンソン・エンド・ジョンソン[JNJ]:週足チャート(移動平均線 緑色:13週、橙色:26週)
出所:マネックス証券ウェブサイト(2025年10月17日時点)

ペプシコ[PEP]、関税などの影響で売上原価が増加

3四半期連続で純利益減少

飲料・食品大手のペプシコ[PEP]が発表した2025年7-9月期決算(9月6日までの12週)は売上高が前年同期比3%増の239億3700万ドル、純利益が11%減の26億300万ドルとなりました。非GAAP(米国会計基準)のEPS(1株あたり利益)は2.29ドルで、LSEGがまとめた市場予想の2.26ドルを1.3%上回っています。

前年同期比で純利益が減少するのはこれで3四半期連続です。売上高は小幅に増えたものの、関税の影響などで売上原価が7%増と膨らみ、採算が悪化しました。営業利益は8%減の35億6900万ドルです。

また、2025年7-9月期には主力市場の北米で販売量の減少に見舞われました。北米では食品部門が4%減、飲料部門が3%減にとどまり、世界全体でもそれぞれ1%減と低迷しました。

ラモン・ラグアルタ最高経営責任者(CEO)は販売量の減少について「価格に敏感な消費者を念頭にパッケージを小さくしたことで販売量は縮小したが、売上高は増えた」と説明しています。

MAHAムーブメントへの対応必須

トランプ関税が業績に波及すると見込まれる中、トランプ政権が掲げる「米国を再び健康に(Make America Healthy Again=MAHA)」への対応も迫られる見通しです。「米国を再び偉大に(Make America Great Again=MAGA)」をもじったもので、トランプ政権で保健福祉長官を務めるケネディ氏が提唱しています。

MAHAムーブメントへの対応策としてはスナック菓子などへの人工着色料や人工香料の使用制限を講じる方針です。ペプシコはさらに消費者の健康意識の高まりを背景にタンパク質の豊富な食品の開発を重視するもようです。

決算発表時に発表したガイダンスでは2025年12月期の売上高を1桁台前半の伸び(自律成長分)、コアEPSを前年並み、年次の実効税率を約20%と予想しています。

【図表5】ペプシコ[PEP]:業績推移(単位:百万ドル)
出所:LSEGよりDZHフィナンシャルリサーチ作成
※期末は12月
【図表6】ペプシコ[PEP]:週足チャート(移動平均線 緑色:13週、橙色:26週)
出所:マネックス証券ウェブサイト(2025年10月17日時点)

リーバイ・ストラウス[LEVI]、直接販売増加で採算改善

ジーンズメーカーのリーバイ・ストラウス[LEVI]が発表した2025年6-8月期決算は売上高が前年同期比7%増の15億4300万ドル、純利益が10.5倍の2億1800万ドルとなりました。調整後EPS(1株あたり利益)は0.34ドルで、LSEGがまとめた市場予想の0.31ドルを9.7%上回っています。

2021年に買収したヨガウエアのブランド「ビヨンド・ヨガ」の、のれんとその他無形資産の減損損失1億1100万ドルを前年同期に計上した反動が大幅増益の要因です。

また、製品の値上げで売上高が伸びる中、粗利益率は前年同期の60.6%から61.7%に上昇しています。自社サイトなどを通じた直接販売を増やして値引きを小幅にし、収益性の低い卸売販売を絞り込んだことも採算の改善につながりました。

ミシェル・ガス最高経営責任者(CEO)は、一部のジーンズと衣料品の値上げを始めた点を確認した上で、2026年にはさらに引き上げる方針を示しています。現状では「(値上げが)需要にインパクトを与えていない」と話しており、継続的に注意深くモニタリングすると明らかにしています。

決算発表時のガイダンスでは2025年11月通期の売上高の増加率を3%と予想し、7月に発表した前回のガイダンスの1-2%から上方修正しました。調整後EPSについては1.27-1.32ドルと予想し、前回発表時の1.25-1.32ドルから引き上げています。

【図表7】リーバイ・ストラウス[LEVI]:業績推移(単位:百万ドル)
出所:LSEGよりDZHフィナンシャルリサーチ作成
※期末は11月
【図表8】リーバイ・ストラウス[LEVI]:週足チャート(移動平均線 緑色:13週、橙色:26週)
出所:マネックス証券ウェブサイト(2025年10月17日時点)

ドミノ・ピザ[DPZ]、ドアダッシュとの提携も増収要因

ドミノ・ピザ[DPZ]が発表した2025年7-9月期決算は売上高が前年同期比6%増の11億4700万ドル、純利益が5%減の1億3900万ドルとなりました。EPS(1株あたり利益)は4.08ドルで、LSEGがまとめた市場予想の3.97ドルを2.8%上回っています。

2025年5月にフードデリバリー大手のドアダッシュ[DASH]と提携したことに加え、物価高の中で「9.99ドルピザ」を復活させた取り組みなどが奏功し、増収を確保しました。既存店売上高は米国が5%増、国外が2%増で、前年同期の3%増、1%増をそれぞれ上回っています。

四半期末の店舗数は米国の直営店が2店増の260店、フランチャイズが27店増の6830店、国外が185店増の1万4660店です。

【図表9】ドミノ・ピザ[DPZ]:業績推移(単位:百万ドル)
出所:LSEGよりDZHフィナンシャルリサーチ作成
※期末は12月
【図表10】ドミノ・ピザ[DPZ]:週足チャート(移動平均線 緑色:13週、橙色:26週)
出所:マネックス証券ウェブサイト(2025年10月17日時点)