アクセンチュア[ACN]、AI技能の習得も雇用継続の条件に

リストラ費用を中心とする事業適正化コスト膨らむ

コンサルティングサービスのアクセンチュア[ACN]が発表した2025年6-8月期決算は売上高が前年同期比7%増の175億9600万ドル、純利益が16%減の14億1400万ドルとなりました。調整後のEPS(1株当たり利益)は3.03ドルで、LSEG(ロンドン証券取引所グループ)がまとめた市場予想の2.96ドルを2.4%上回っています。

売上原価が8%増の119億8500万ドルとなり、採算がやや悪化する中、販売管理費を抑制しましたが、リストラ費用を中心とする事業適正化コストが5.8倍の6億1500万ドルに膨らみ、営業利益が13%減の20億5000万ドルに縮小しました。事業適正化コストを除く調整後営業利益は8%増の26億6500万ドルとなります。

レイオフは1万1000人超

アクセンチュアのジュリー・スウィート最高経営責任者(CEO)は人員削減を含むリストラ計画について、人工知能(AI)がすでに業務の一部を担っている点を挙げ、AI関連の技能を習得できない人員のレイオフを進めていると説明しています。報道によると、6-8月期には1万1000人を超える人員のレイオフに踏み切ったようです。

会社方針には必然性があるようで、主要事業のコンサルティングやマネッジド・サービス(アウトソーシング事業)の分野では生成AI関連の案件が増えています。2025年6-8月期の新規受注額は6%増の213億ドルに達し、このうち生成AI関連のプロジェクトが18億ドルを占めています。前年同期が約10億ドルだったので、8割ほど増えた計算です。特にアクセンチュアが強みを持つ企業のデジタル・トランスフォーメーション(DX)のコンサルティングで生成AIを活用した案件が増えているようです。

通期決算

2025年8月通期決算は売上高が前年比7%増の696億7300万ドル、純利益が6%増の76億7800万ドルです。事業適正化コストの負担が相対的に軽く、1桁台ながら増収増益を確保しました。

ガイダンスでは2026年8月通期の売上高を前年比2-5%増、調整後営業利益率を15.7-15.9%(2025年8月期の実績は15.6%)、調整後EPSを13.52-13.90ドル(同12.93ドル)と予想しています。また、株主還元も手厚くする方針で、それぞれ自社株買いを15%、配当を10%増やす意向です。

【図表1】アクセンチュア[ACN]:業績推移(単位:百万ドル)
出所:LSEGよりDZHフィナンシャルリサーチ作成
※期末は8月
【図表2】アクセンチュア[ACN]:週足チャート(移動平均線 緑色:13週、橙色:26週)
出所:マネックス証券ウェブサイト(2025年10月3日時点)

コストコ・ホールセール[COST]、関税対応で代替製品を投入

Eコマース事業と年会費の引き上げで売上増

コストコ・ホールセール[COST]が発表した2025年6-8月期決算は売上高が前年同期比8%増の861億5600万ドル、純利益が11%増の26億1000万ドルとなりました。EPS(1株当たり利益)は5.87ドルで、LSEGがまとめた市場予想の5.80ドルを1.2%上回っています。

既存店売上高は米国が6%増、カナダが8%増、その他地域が7%増とやや伸び悩みましたが、Eコマースが14%増と成長しました。コストコは14ヶ国・地域に倉庫型店舗を出店しており、このうち米国、カナダ、英国、メキシコ、韓国、台湾、日本、オーストラリアでEコマース事業を展開しています。

また、会費収入は14%増の17億2400万ドルに達しました。2024年9月に米国とカナダで約7年ぶりに年会費を引き上げた効果が出ています。ただ、会費の値上げにもかかわらず会員の平均年齢の下落傾向は続いているようです。ちなみに有料の会員数は2025年8月末時点で8100万人に上り、前年比で6%増えています。

懸案は関税、PB商品の投入などで対応

一方、現状の懸案は何と言っても関税です。ゲイリー・ミラーチップ最高財務責任者(CFO)は「関税負担の増大分を相殺することに懸命に取り組んでいる」とコメントしています。具体策としては、関税の影響を受けた商品の代替品として新たなプライベートブランド商品を投入しているようです。また、関税の影響が軽微な製品の重点販売や国産品の仕入れの拡大といった対策も講じています。

通期決算

2025年8月通期決算は売上高が前年比8%増の2752億3500万ドル、純利益が10%増の80億9900万ドルです。1割前後の増収増益と順調に成長しています。

2026年8月期の事業計画では倉庫型店舗をさらに増やす方針で、通期で30店の純増を目指しています。米国では2025年8月末の629店から1年後に649店にまで増やし、カナダでは110店から115店、その他の海外では175店から180店にそれぞれ増やす方針です。

【図表3】コストコ・ホールセール[COST]:業績推移(単位:百万ドル)
出所:LSEGよりDZHフィナンシャルリサーチ作成
※期末は8月
【図表4】コストコ・ホールセール[COST]:週足チャート(移動平均線 緑色:13週、橙色:26週)
出所:マネックス証券ウェブサイト(2025年10月3日時点)

マイクロン・テクノロジー[MU]、ハイパースケーラ-向けが急成長

AI関連事業がけん引役に

半導体メモリー大手のマイクロン・テクノロジー[MU]が発表した2025年6-8月期決算は売上高が前年同期比46%増の113億1500万ドル、純利益が3.6倍の32億100万ドルとなりました。非GAAP(米国会計基準)のEPS(1株当たり利益)は3.03ドルで、LSEGがまとめた市場予想の2.86ドルを5.9%上回っています。

生成人工知能(AI)関連の需要増が続き、関連事業がけん引役になりました。特に大規模なサーバーリソースのあるデータセンターを持ち、クラウドコンピューティングサービスを提供するハイパースケーラー向けのビジネスが好調です。

事業部門で明暗分かれる

こうした企業向けのメモリーソリューションと広帯域メモリー(HBM)を合わせたクラウドメモリー部門は売上高が3.1倍の45億4300万ドルに急増し、営業利益率は前年同期の33%から48%に上昇しています。

モバイル・パソコン部門は売上高が25%増の37億6000万ドルで、営業利益率は前年同期の20%から29%に上昇しています。自動車・組み込み向け部門は売上高が17%増の14億3400万ドルと成長し、営業利益率は11%から20%に上昇しました。両部門とも順調に伸びています。

一方、データセンターの敷地や設備を他社に貸し出すOEM事業者向けのコアデータセンター部門は売上高が23%減の15億7700万ドルにとどまり、営業利益率が前年同期の27%から25%に低下するなど苦戦しています。データセンタービジネスではハイパースケーラー向けと明暗が分かれています。

通期決算

2025年8月通期決算は売上高が前年比49%増の373億7800万ドル、純利益が11.0倍の85億3900万ドルです。サンジェイ・メロートラ最高経営責任者(CEO)は「米国で唯一のメモリーメーカーとしてAIがもたらす好機をつかむことのできる独特のポジションにいる」とコメントしています。

決算発表時のガイダンスでは2026年9-11月期の売上高を122億-128億ドル、営業利益率を49.5-51.5%、調整後EPSを3.60-3.90ドルと予想しています。

【図表5】マイクロン・テクノロジー[MU]:業績推移(単位:百万ドル)
出所:LSEGよりDZHフィナンシャルリサーチ作成
※期末は8月
【図表6】マイクロン・テクノロジー[MU]:週足チャート(移動平均線 緑色:13週、橙色:26週)
出所:マネックス証券ウェブサイト(2025年10月3日時点)

ジェイビル・サーキット[JBL]、情報インフラ部門が急成長

分散化した事業構造が健全な業績に

電子機器の受託製造サービスを手掛けるジェイビル・サーキット[JBL]が発表した2025年6-8月期決算は売上高が前年同期比18%増の82億5200万ドル、純利益が58%増の2億1800万ドルとなりました。調整後コアEPS(1株当たり利益)は3.29ドルで、LSEGがまとめた市場予想の2.92ドルを12.7%上回っています。

特別要因が純利益を押し上げたという側面もありますが、こうした要因を除いた場合でも成長力は強く、非GAAPのコア利益は33%増の3億6000万ドルに伸びています。

人工知能(AI)関連の需要が好業績に結びついているようです。マイク・ダストール最高経営責任者(CEO)は「AI関連の力強い需要が資本財、データセンター、ネットワーキングなどの分野に及び、自動車・再生可能部門の低迷を相殺して余りある」と述べ、分散化した事業構造が健全な業績につながったとの見方を示しています。

実際にサーバーやストレージ製品、データセンターインフラ機器、ネットワーキング機器などで構成される情報インフラ部門が62%増収と大きく成長しました。

通期決算

2025年8月通期決算は売上高が前年比3%増の298億200万ドル、純利益が53%減の6億5700万ドルです。前年に多額の売却益を計上した反動が大幅減益の要因で、非GAAPのコア利益は2%増の10億8200万ドルと小幅ながら増益でした。

決算発表時のガイダンスでは2026年9-11月期の売上高を77億-83億ドル、営業利益を2億6300万-3億4300万ドル、調整後コアEPSを2.47-2.87ドルと予想しています。

【図表7】ジェイビル・サーキット[JBL]:業績推移(単位:百万ドル)
出所:LSEGよりDZHフィナンシャルリサーチ作成
※期末は8月
【図表8】ジェイビル・サーキット[JBL]:週足チャート(移動平均線 緑色:13週、橙色:26週)
出所:マネックス証券ウェブサイト(2025年10月3日時点)

ペイチェックス[PAYX]、ペイコア買収効果で17%増収

人材管理ソリューションを提供するペイチェックス[PAYX]が発表した2025年6-8月期決算は売上高が前年同期比17%増の15億4000万ドル、純利益が10%減の3億8400万ドルとなりました。非GAAP(米国会計基準)の調整後EPS(1株当たり利益)は1.22ドルで、LSEGがまとめた市場予想の1.21ドルを0.8%上回っています。

2025年4月に同業のペイコアを買収した効果でサービスを提供する顧客が増え、売上高が伸びました。

一方、ペイコアの買収に伴い、補償関連の支出や無形資産の減価償却費などが増えた上、テクノロジーやマーケティングの支出も拡大し、営業費用は29%増の9億9800万ドルに膨らんでいます。この結果、営業利益は1%減の5億4200万ドルに縮小しましたが、ペイコア買収に伴う営業費用8400万ドルを除く調整後営業利益は15%増の6億2700万ドルとなります。

ペイチェックスが決算発表時に示したガイダンスでは2026年5月通期決算の売上高が前年比で16.5-18.5%増えると予想し、6月に発表した前回予想を据え置きました。一方、調整後EPSについては9-11%増えるとの見方を示し、前回予想の8.5-10.5%増から上方修正しています。

【図表9】ペイチェックス[PAYX]:業績推移(単位:百万ドル)
出所:LSEGよりDZHフィナンシャルリサーチ作成
※期末は5月
【図表10】ペイチェックス[PAYX]:週足チャート(移動平均線 緑色:13週、橙色:26週)
出所:マネックス証券ウェブサイト(2025年10月3日時点)