米金融政策の利下げ軌道と株式市場の位置づけ
・FF金利の経路は、当局の見通しが年1回程度の断続的な利下げを示唆する一方、参加者間の見方は分かれ、市場はそれ以上のペースを織り込む。
・成長とインフレの見通しは前回比で上方修正となり、景気が底堅い中で利下げ期待が続くという解釈の難しい局面である。
・過去の長期利下げは業績悪化と重なることが多かったが、今回は向こう2年でおおむね2桁増益の想定で、1990年代後半の類似局面を想起させるため、上昇余地と過熱リスクの両方をはらむ。
所得二極化がもたらす消費の偏りと政策対応
・所得上位と下位のセンチメント格差はコロナ後に拡大し、2022年頃から所得上位の優位がトレンドとなった。
・上位ほど株式保有比率が高く、上位1%は資産の約半分が株式で、上位10%の消費シェアは長期的に上昇しているため、株高が富裕層の消費を通じて小売統計を押し上げやすい構造だ。
・一方で低所得層の不満を背景に政策対応が強まり、2025年は関税や移民政策の影響で成長が下押し、2026年に持ち直す想定で、中間層にメリットが及ぶ設計が示唆される。
先行指数と一致指数の乖離が示す今後のシナリオ
・景気先行指数は低下が続く一方、個人消費の底堅さもあって景気一致指数は高止まりし、過去に例を見ない乖離が生じている。
・バリュエーションは割安とは言えず、クレジットもタイト化するなかで利下げの織り込みとリスクオンが進み、マーケットと実体経済のギャップが広がっている。
・乖離解消の道筋は二つある。一つは一致指数が低下に向かうリスクで、もう一つは先行指数が反転上昇して新サイクル入りとなる展開であり、どちらに収れんするかの見極めが焦点である。
