週明け9月29日、国内の金の店頭販売価格が初めて1g 2万円の大台に乗せました。私が理事を務める一般社団法人 日本貴金属マーケット協会の代表である池水氏のところには29日だけで、地上波のTVなどの取材が7件も入りました。一般メディアのニュース枠などで広く取り扱われることでしょう。

先週土曜日9月27日は年に1度のゴールドの祭典「ゴールドフェスティバル2025」というイベントがあり総合司会を務めましたが、連日の史上最高値更新のタイミングでの開催で参加者の熱も高く、ゴールドへの投資がごくごく一般的になってきたことを改めて感じました。今、投資家らの間では、ゴールドの持たざるリスクが意識され始めているといった印象です。

機関投資家の伝統的なアセットアロケーションに「60/40ポートフォリオ」があります。株式と債券を60:40の割合で保有することでリスクとリターンのバランスを取る運用手法で、長らく資産配分のベンチマークとされてきました。しかし、パンデミック後の金利急騰で債券運用では大きな損失を出す投資家らも。一方でゴールドは上昇を続けています。

先般、モルガン・スタンレーの最高投資責任者であるマイク・ウィルソン氏が、従来の60/40ポートフォリオから60/20/20の配分へのシフトを提案し話題となりました。60%を株式、20%を債券、20%を金に配分し、インフレ対策を強化することを目的とするポートフォリオです。

足元のゴールド上昇は、インフレへのヘッジというだけでなく、ロシアのウクライナ侵攻後の欧米によるロシアのドル資産制裁がトリガーともされています。加えてFRBの独立性問題、米国の利下げ再開とゴールド上昇の材料には事欠きませんが、一般的にゴールドが上昇する時というのはあまり良い兆候ではありません。投資家らの将来への不安心理もまた、ゴールド上昇のエンジンとなっているものと思います。