政策金利は据え置き、声明文には慎重さが表れる

日本銀行は、9月19日の金融政策決定会合で、無担保コールレート(オーバーナイト物)を0.5%程度で維持することを決定しました。なお、物価の上振れリスク懸念などから、2人が反対票を投じており、利上げの兆しがうかがえる内容となりました。

また、今回の声明文では、兼ねてから日銀が保有するETFおよびJ-REITの処分に関して、準備ができ次第、「市場全体の売買代金に占める売却割合は0.05%程度」でそれぞれを売却していくと示されました。具体的にはETFについては年間3,300億円程度、J-REITについては年間50億円程度のペースで、共に市場売却していくとされ、リスク資産の圧縮に舵を切った格好です。これを受けて、株式市場では主力株に売りが出ました。

景気についてはこれまでと同様に、一部に弱めの動きを認めつつ緩やかに回復していると評価し、また物価は基調的な上昇率についても、成長ペース鈍化を受けて伸び悩むとするも、「展望レポート」の見通し期間後半には「物価安定の目標」と概ね整合的な水準で推移するとされています。

基調的な物価上昇を重視する姿勢は変わらず

15時半から行われた植田日銀総裁の会見は、従来通り丁寧なコミュニケーションが徹底されました。中でもサプライズとなったETF売却に関する質問が多くみられました。

ETFの売却については、金融機関から買入れた株式の売却を円滑に進めたことで、その知見を活かせるとし、ETF・J-REITも売却の決定に至ったと説明しました。売却にかかる期間は単純計算に基づけば、100年以上かかるとするも売却局面において市場のかく乱を回避するため、時間をかけて進めるとしました。

政策金利について、今回の会合では二人の審議委員が利上げを提案したことで、会見でも利上げ関連の質問も相次ぎました。植田総裁自身としては、基調的な物価はまだ2%の過程にあり、景気の下振れリスクを懸念していると説明するも、全体の判断としては従来のコミュニケーションと同様に、「経済物価が見通しに沿って実現、または角度が高まった際に緩和度合い調整していく」としました。また各国の通商政策などへの不確実性からデータの確認を待ちたい局面にあるともしています。

ETF売却のサプライズにより日中の米ドル/円は147円台前半まで円高が進むも、会見中はタカ派トーンの発言も少なく円安方向の推移となりました。一方で、二人の審議委員が利上げを提案するなど、次の段階が見え始めていると感じています。データの確認を待ちたいとの姿勢は一貫していますが、逆に言えば良好な経済データが確認できれば、早期の追加利上げの可能性も十分に考えられ、経済指標の精査に重きが置かれる局面と言えるでしょう。