現在のファンダメンタルズ:クックFRB理事解任騒動も材料に
先週(8月25日週)のレンジと終値(マネックストレーダーFXのBidレート)
・米ドル/円: 146.663円~148.182円 147.040円
・ユーロ/米ドル:1.15740ドル~1.17231ドル 1.16869ドル
・ユーロ/円: 171.122円~172.660円 171.849円
先週(8月25日週)の米ドル/円:一連のイベント通過後のクック理事解任騒動
先週(8月25日週)は8月22日にジャクソンホール会議という重要イベントも終わったことで材料が少ない一週間となる予定でした。
しかしそこに飛び込んできたのがトランプ米大統領によるクックFRB(米連邦準備制度理事会)理事解任の動きです。FRBの中立性が脅かされていること、また後任は間違いなくハト派の理事が選ばれるとの見方から、為替市場は当初、米ドル売りで反応しました。ところが、クック理事が「法廷闘争に持ち込む」と発言したことから急速に値を戻しました。それ以降、週前半は緩やかな米ドル買い、後半は緩やかな米ドル売りと基本的には大きな動きは見られないまま、月末の実需にも傾きはなく静かな月末相場となりました。
8月29日にはクックFRB理事に関するワシントン連邦地裁の審理が行われました。しかし結論は出ず、裁判所としては現段階では中立、今後の審議に持ち越されることとなりました。おそらくは連邦最高裁の判断まで長引くこととなりそうです。争点は解任が正当な理由によるものかどうか、職務に関連していない過去の不正行為が、現職の解任理由となるのかという点です。その後新たな不正も見つかりましたが、クック理事は否定もしていません。むしろ問題ないという判断がされた場合、FRBの理事のモラルの低下を招くのではないかと考えます。
今回の解任の理由は方針の違いではなく、理事自身の不正行為であり、住宅融資での不正ということであれば住宅関連や金融関連の公職に留まるのはどうなのか。今後の進展を見守りたいところですが、最終的な判断を待たずに辞任する流れが最も可能性がありそうな気がしています。その場合、後任理事が就任し金融緩和政策が加速する可能性を考えておく必要はあるでしょう。
今週(9月1日週)は9月1日が米国の祝日、9月5日の雇用統計発表に向けて雇用関連の数字が出てきます。前回の非農業部門雇用者数の大幅下方修正以降どうなっているのか、最大の注目材料となります。
先週(8月25日週)のユーロ/米ドル:狭い値幅で行って来い
先週(8月25日週)のユーロ/米ドルは、週前半はユーロ売り、週後半はユーロ買いとなりましたが、値幅的には狭く1.17台乗せではユーロ売り、1.16台割れではユーロ買いと100pips強のレンジ内で方向感がはっきりしない一週間となりました。
値動きの材料としてはクック理事解任騒動、ECB(欧州中央銀行)理事会議事録公表などがありましたが、一番値動きを左右したのはクック理事解任騒動だったと言えます。欧米ではまだ夏休みシーズンということもあり、本格的な動きは本日9月1日以降というところです。
米ドル/円チャート(週足)、引き続き上値が重い
長期的な判断は週足で行いますので、まずは週足チャートをご覧ください。
・上昇トレンド=週足終値が移動平均線の上にある
・下降トレンド=週足終値が移動平均線の下にある
トレンド転換の判断はダマシを排除するため、2週連続で移動平均線を上回るか、下回った時にトレンドが転換したという見方をします。
週足チャートでは、米ドル高の流れも、7月28日週のトンカチ(上ヒゲが長く実体が短い)以降の上値が重たい流れも変化はありません。トライアングル(黄色)の中でレジスタンスが効いている点が長期テクニカルでは最も気にしておくべき点だと考えます(図表1)。
8月は初日の米国雇用統計で大きく動いて以降は、ほとんど動きが無いもみあい相場となっていましたので、上にも下にもどこかで大きな動きが出てくる可能性に警戒しておきましょう。個人的には米ドル売りの動きが強まる可能性を意識しています。
短期的には日足チャートをご覧ください。
米ドル/円チャート(日足)、ゴールデン・クロスとデッド・クロスが短期で入れ替わるもみあい状態
短期的な判断は日足で行います。
・買いシグナル=終値移動平均線が始値移動平均線を下から上に抜くGC
・売りシグナル=終値移動平均線が始値移動平均線を上から下に抜くDC
米ドル/円は8月29日時点ではゴールデン・クロスとなりましたが、レポート執筆当日の9月1日にはデッド・クロスに転じる可能性があります。週足のコメントでも触れましたが、8月1日を除くとその後の月間レンジがほぼ146円台半ばから148円台前半に収まり、2本の移動平均線の位置関係が入れ替わりやすい状態になっています。
青の平行上昇チャンネルが正しいとは限りませんが、現在のサポートラインはこの青のライン、またレジスタンスラインは週足でも引いてある黄色のレジスタンラインを見ておくと良いでしょう。これら両線をどちらに抜けるのかで今後の流れが決まっていく展開となりそうです。現状は待つも相場としか言えません。
ユーロ/米ドルは高値圏でのもみあいが続く
ユーロ/米ドルのチャートから見ていきます。
週足チャート(図表3)は移動平均線を上回った状態を維持し、3月以降の上昇ウェッジの中で緩やかな上昇トレンドを継続している状態は先週(8月25日週)も変わりませんでした。また最近の高値を切り下げる動きも続いていますので日足チャートでのレジスタンスラインとローソク足終値の位置関係に注目していきましょう。
その日足チャート(図表4)では、短期的にゴールデン・クロスとデッド・クロスが入れ替わる状態でもみあいという判断しかできません。このあたりは米ドル/円と同じです。青のレジスタンスラインと黄色のサポートラインとどちらに抜けるのか、まずは動きが出てくるまでは方向感を持っての取引はしないほうが良いでしょう。
ユーロ/円はさらに動きが鈍い状態
ユーロ/円です。
ユーロ/円は引き続き7月28日週の大陰線の足の中で高値もみあいが続きます。米ドル/円もユーロ/米ドルももみあいが続く中でユーロ/円はさらに動きが鈍い状態にあります(図表5)。
日足チャート(図表6)では緩やかに下げ散る中で移動平均線はゴールデン・クロス状態を維持していますので、下げているが底堅くもあるという判断になります。7月31日安値と8月13日高値とのフィボナッチ・リトレースメント(緑)が短期的なレンジの目安であり、現状サポート(170.980円)に近い水準からやや反発しやすい地合いにあります。ただ、ユーロ/円では米ドル/円かユーロ/米ドルか、どちらかに動きが出てこないとトレンド発生には至らないでしょう。
全体にもみあいばかりですが、嵐の前の静けさかもしれません。気を引き締めていきましょう。
それでは今週も良いトレードを!
