2025年に入り、暗号資産は企業財務の選択肢としても注目され、米国ではビットコインに限らずイーサリアム、リップル、ソラナなどをバランスシートに組み込む企業が増えている。日本でもメタプラネット(3350)をはじめ、ビットコインを積極的に購入する上場企業が登場し、株価が暗号資産価格と高い連動性を示す事例が相次いでいる。 そのため、暗号資産に直接投資するか、暗号資産トレジャリー企業の株式を通じて間接的に投資するか、投資家にとっては選択が難しくなっている。
暗号資産の現物投資は、価格変動リスクをダイレクトに負うものの、中長期的に保有すれば市場全体の成長を取り込みやすいという強みがある。特にビットコインは「デジタルゴールド」とも呼ばれ、長期的な資産保全の手段として期待されている。一方で、日本では口座開設やウォレット管理などの手間に加え、売却益が総合課税扱いとなるため税負担が重くなりやすい。
これに対して、暗号資産トレジャリー企業の株式は証券口座で簡便に取引でき、税制も分離課税の範囲で扱えるため、従来の株式投資の延長として取り組みやすい。さらに企業は市場から調達した資金を活用して暗号資産を追加購入するケースもあり、現物以上のリターンを享受できる可能性がある。
ただしその分リスクも大きく、暗号資産価格が上昇しても市況悪化により株価が急落することは珍しくない。実際に日本のメタプラネット(3350)は時価総額が一時1兆円に達したが、過度な期待が剥落すると2025年7月以降はビットコインの上昇局面にもかかわらず株価が大きく下落した。 また米国ではバイナンスコイン(BNB)を保有していたナスダック上場企業が株価急落の末に上場廃止へと追い込まれた事例もある。
こうした現実を踏まえると、すでに現物を保有している投資家がさらなるリターンを狙ってトレジャリー企業株に挑戦するのは合理的だが、「暗号資産(現物)は危険だから株式で」といった考え方はむしろリスクを高める恐れがある。株式は暗号資産の値動きに加えて企業経営や市場心理の影響も受けるため、必ずしもリスク低減策にはならないからだ。
これから暗号資産投資を検討するのであれば、やはりまずは少額のビットコイン現物から始めるのがセオリーであると考える。その上で、市場の値動きや自らのリスク許容度を確認し、慣れてきたタイミングで慎重にアルトコインやトレジャリー株を選択肢に含めるのが自然なステップだろう。 現物と株式のいずれも万能ではなく、両者のメリットとデメリットを正しく理解し、自身の投資目的やスタイルに応じて判断することが求められる。