現在のファンダメンタルズ:米ドル自体は「有事のドル買い」とも言えない流れ
先週(6月9日週)のレンジと終値(マネックストレーダーFXのBidレート)
・米ドル/円: 143.648円~146.213円 146.096円
・ユーロ/米ドル:1.14461ドル~1.16143ドル 1.15220ドル
・ユーロ/円: 166.039円~168.399円 168.336円
先週(6月16日週)の米ドル/円: 中東情勢を「有事のドル買い」で反応
先週(6月16日週)は、前週6月12日のイスラエルによるイラン攻撃を受け米国の軍事介入があるのかが焦点となりました。週初にはG7がありましたがトランプ米大統領はイランへの対応協議のため初日で帰国。続いて日銀会合とFOMC(米連邦公開市場委員会)がありましたが、どちらもコンセンサス通りで現状維持となったことから市場の反応は鈍くなりました。日銀の国債買い入れの減額ペースをこれまでの半分にするということも事前に出ていた話であり、材料視されなかったという印象です。先週末に向け日本の超長期債利回りは緩やかに低下したことから、債券市場は当面落ち着きを取り戻したと考えてよさそうです。
米国のイランへの軍事対応について、当初は6月21・22日の週末にも実施される可能性が取り沙汰されていました。しかし、その後トランプ米大統領が「2週間程度考える」と発表したことや、6月20日には「イランへの攻撃は必要ないかもしれない」と発言したことで週末の軍事行動は無いとみられていました。しかし6月21日に米軍がイランの核施設を攻撃。「トランプ米大統領在任中に戦争は無い」ということも覆りました。問題はここからどうなるのか、金融市場はどう反応するかです。
週明け6月23日早朝の動きとしては株安、コモディティ(原油、金)高、米ドル高の動きで反応しました。少なくとも米ドルインデックスは6月11日から20日の間に0.19しか上昇していないため、これまでは「有事のドル買い」というほどの動きではないとみていました。しかし米国がイランの核施設を攻撃したことで中東情勢は混沌としてきました。さらにはイランの国会がホルムズ海峡封鎖を承認。仮に封鎖した場合、中東産原油に頼る日本への影響は大きく、為替市場については米ドル買いより円売りという見方でいたほうがよいかと考えています。
今週(6月23日週)はイランの出方が最大の注目材料となります。海峡封鎖の場合、最大の原油輸出国である中国への輸出もできなくなり、当事者イランへの影響も大きいことから、これまで同様に航行するタンカーの拿捕(だほ)程度に留まるとみるのが妥当でしょう。仮に海峡封鎖となると米国がさらに介入し、さらなる戦火の拡大に繋がるため、そこまでの状況悪化はないと思いたいですが、ある程度状況が見えてくるまでは動かないことが最大の保身になるでしょう。
先週(6月16日週)のユーロ/米ドル:2021年11月以来の高値を示現
先週(6月16日週)のユーロ/米ドルは、週初こそユーロ買いの動きが見られましたが前週高値を試しきれなかったことから反落。その後は1.14ドル台半ばでの底固めの後、週末に向けてはやや買い戻される動きとなりました。米ドル/円に比べると値幅は狭くユーロ/米ドルよりもユーロ/円に注目が集まった週となりました。
ユーロ/円は週半ばまでは上昇後にいったん押しが入る動きとなりましたが、週末に向けて大きく上昇、高値168.399円をつけ高値圏での引けとなりました。詳細はチャートの解説をご覧ください。
米ドル/円チャート(週足)、移動平均線に接近
長期的な判断は週足で行いますので、まずは週足チャートをご覧ください。

・上昇トレンド=週足終値が移動平均線の上にある
・下降トレンド=週足終値が移動平均線の下にある
トレンド転換の判断はダマシを排除するため、2週連続で移動平均線を上回るか、下回った時にトレンドが転換したという見方をします。
週足チャートでは、20週移動平均線を下回る展開は継続中ですが、最近の円安の動きで着実に移動平均線に近づく動きとなってきました(図表1)。今週(6月23日週)は移動平均線の水準が146円台半ばから前半へと下がってくることから、今後の動き次第では移動平均線を上回って引ける可能性もあります。それでも2週連続で上回るまでは長期トレンド転換とはならないため、今週(6月23日週)と来週(6月30日週)の動きは要注意と言えます。
日足チャートをご覧ください。
米ドル/円チャート(日足)、6月16日にゴールデン・クロス
短期的な判断は日足で行います。

・買いシグナル=終値移動平均線が始値移動平均線を下から上に抜くGC
・売りシグナル=終値移動平均線が始値移動平均線を上から下に抜くDC
日足チャートでは、先週示した6月13日発生のデッド・クロスは1日のダマシで終わり6月16日にゴールデン・クロスに転じました(図表2)。短期上昇トレンド継続中なのでやや幅は広いですが4月22日からのサポートラインとそれに並行なラインで平行上昇チャンネル(青)を引いてあります。5月12日高値と5月27日安値とのフィボナッチ・リトレースメント(赤)も61.8%に到達したことで、今後は76.4%戻しの147.105円をターゲットとする流れにあります。
材料的には中東情勢を見極めたいところですが、テクニカルには米ドル/円の短期上昇トレンドは先週初から始まり、現状はどこまで伸びるのかを試している段階と言えるでしょう。
ユーロ/米ドルは買いトレンド継続も短期調整入りに注意
ユーロ/米ドルのチャートから見ていきます。


週足チャート(図表3)は移動平均線を上回った状態は維持していますが、前週の年初来高値を上回れなかったこと、高値圏で同事線が発生したことを考えると、いったんこれまでの上昇トレンドに対して調整が入りやすいチャートと言えます。
日足チャート(図表4)でも19日にデッド・クロスに転じたことで短期的な調整局面にあると言えます。3月27日安値を起点とする上昇チャンネル(青)内でのチャンネル上限を試してフィボナッチ・リトレースメントのターゲットも到達しての反落となったことから、今週はチャンネル下限(週初時点で1.14ドル割れレベル)を試す展開になっていくと見られます。
なお、まだまだ時間はかかるでしょうが、今後再上昇の動きが出てくる時には週足チャートで示した2021年高値と2022年安値の76.4%戻しとなる1.16852ドル(グレーの水平線)がターゲットになってきます。
ユーロ/円の長期トレンドはユーロ買い継続
次にユーロ/円のチャートです。

ユーロ/円週足では移動平均線よりも上での動きが定着、これまでのレンジ上限を上放れする動きとなったことで年初来安値からのサポートラインとそれに平行に引いたラインとの平行上昇チャンネル(黄)の中での上昇を継続中です。既に2024年高値と安値の61.8%戻しとなる167.393円にも到達したことで、いったん上昇の中休みを挟みそうですがユーロ/円を買う流れはしばらく継続することとなるでしょう(図表5)。

日足チャートでは5月26日のゴールデン・クロス状態が続いています。買いの勢いが強いため短期的な上昇チャンネル(青)を引き直しましたが、4月7日安値を起点としたフィボナッチ・エクスパンションの100%エクスパンションに到達したことから短期的にはいったん調整が入りやすい水準に来たと考えられます(図表6)。引き続き下がったところでは押し目買いという流れが続きますので、保守的にはいったんデッド・クロスを待ってその後のゴールデン・クロスで買い直しという戦略が良いと思います。
それでは今週も良いトレードを!