【米国株式市場】ニューヨーク市場
NYダウ: 42,215.73 △117.03 (5/29)
NASDAQ: 19,175.87 △74.93 (5/29)
1.概況
昨日の米国市場では、主要3指数が揃って反発しました。前日の取引終了後に好調な決算を発表したエヌビディア[NVDA]の株価上昇が指数をけん引したほか、米国際貿易裁判所がトランプ関税の一部差し止めを命じる決定を下したことが、相場を後押ししました。また、長期金利の低下も投資家心理を支える要因となりました。一方で、関税を巡っては、控訴審で保留を認められなかった場合、30日にも連邦最高裁判所に上訴する意向を政権が示したと伝えられたほか、トランプ大統領が別の関税手段を講じる可能性があるとの見方もあり、先行きへの不透明感から上値の重い展開となりました。
ダウ平均は91ドル高の42,190ドルで取引を開始しましたが、中盤にかけて売られ、一時は270ドル安の41,828ドルまで下落する場面も見られました。安値を付けた後は買いが入り、再びプラスに転じると、取引終盤には167ドル高の42,266ドルまで上昇し、この日の高値を付けました。最終的には117ドル高の42,215ドルで取引を終え、反発となりました。
一方、ハイテク株比率の高いナスダック総合株価指数は74ポイント高の19,175ポイント、S&P500株価指数は23ポイント高の5,912ポイントで取引を終え、いずれも小幅ながら反発しました。
2.経済指標等
2025年第1四半期の米実質GDPの改定値は、年率換算で前期比0.2%減となり、速報値の0.3%減からやや上方修正されました。一方、個人消費の改定値は、年率換算で前期比1.2%増となり、速報値の1.8%増から下方修正されています。先週一週間の米新規失業保険申請件数は、前週比1万4000件増の24万件となり、市場予想(22.9万件程度)を上回って労働市場の悪化を示しました。中古住宅販売成約指数は、前月比6.3%減となり、市場予想(1.1%減)と前回結果(5.5%増)を下回りました。
3.業種別動向
S&P500の業種別株価指数では、全11業種中10業種が上昇となりました。なかでも、不動産が1%近く上昇したほか、ヘルスケア、公益事業、エネルギーなどが上昇となりました。一方で、コミュニケーション・サービスの1業種のみが小幅に下落となりました。
4.個別銘柄動向
ダウ平均構成銘柄は30銘柄中22銘柄が上昇となり、なかでも、ボーイング[BA]とエヌビディア[NVDA]が3%超上昇しました。また、アムジェン[AMGN]とシェブロン[CVX]も1%以上上昇しています。一方で、8銘柄が下落となり、特にセールスフォース[CRM]は3%超下落しました。そのほか、アイビーエム[IBM]やゴールドマン・サックス[GS]、ナイキ[NKE]などが小幅に下落しています。
ダウ平均構成銘柄以外では、液剤塗布システムおよび機器の設計、開発、製造を行うノードソン[NDSN]が6.8%上昇してS&P500株価指数構成銘柄の値上がり率ランキングでトップとなりました。また、化粧品のElfビューティー[ELF]は、前日引け後に公表した第4四半期決算で売上高、EPS(1株当たり純利益)が市場予想を上回ったほか、ヘイリー・ビーバーが創業した美容ブランド「ロード」を8億ドルで買収すると伝わったことが好感され、23.6%上昇の大幅高となりました。一方で、PCやプリンターのHP[HPQ]は、8.3%下落してS&P500株価指数構成銘柄の値下がり率ランキングでワーストとなりました。同社は、第2四半期のEPSが市場予想を下回ったほか、景気減速や中国からの輸入品に対する関税によるコスト増が要因で、通期のEPS見通しを下方修正したことが嫌気されています。また、家電量販店のベスト・バイ[BBY]は、第1四半期決算で既存店売上高が予想以上の減収となったほか、通期の業績見通しも下方修正したことが嫌気され、7.3%下落しました。
5.為替・金利等
米長期金利は、前日から0.06%低い4.42 %で取引を終えました。ドル円は、144円近辺を推移しています。
VIEW POINT: 今日の視点
昨日の米国市場では、主要3指数が揃って小幅に反発しました。しかし、材料となったエヌビディアの好決算やトランプ関税の一部差し止めの報道は、東京市場では既に前日に織り込まれているほか、外国為替市場では円高基調が続いていることから、主力株を中心に利益確定の売りが出ると見られます。このため、本日の日本市場は下落してのスタートが予想され、日経平均は心理的な節目である3万8000円を下回る展開が想定されます。
(マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 岡 功祐)