先週(4月21日週)の動き:NY金最高値更新3,500ドル突破も大荒れの展開、国内金価格も最高値更新、米中貿易戦争とトランプ発言がカギ
先週(4月21日週)のニューヨーク金先物価格(NY金)は大荒れ相場となった。イースター(復活祭)の3連休明けの4月21日および22日NY時間外のアジア時間に急騰劇を演じた後にモメンタム相場は急失速し、翌23日には1日の下げ率としては約4年ぶりの大きさとなる大幅下落に見舞われる大荒れ相場となった。
安全資産としての金(ゴールド)買いに拍車
週初めの4月21日、NY金は前週4月16日に初めて3,300ドル台に達してからわずか2営業日目のこの日、3,400ドル台に浮上し、3,422.30ドルと史上最高値を更新した。一時は沈静化していた米国債売りが活発化、米国株、米ドルも売られるトリプル安環境が再び出現し、安全資産としての金(ゴールド)買いに拍車がかかった。
イースター休暇前の前週(4月14日週)中ごろから伝えられていたトランプ米大統領によるパウエルFRB(米連邦準備理事会)議長を非難する発言は、週明けにさらにトーンを強め、自身のSNSに「私が彼を辞めさせたいと思えば、即座にそうできる」と書き込んだことがきっかけだった。
こうした買いは米国との間で急速に悪化した貿易戦争に危機感を強めた中国国内の投資家をも刺激し買い参入したことで、白熱の相場に転じることになる。4月22日のNY時間外アジア時間から前日の急騰地合いを引き継ぐ方で買いが先行した相場は3,500ドルを突破。一時3,509.90ドルと連日の最高値を更新することになった。
ただし、わずか2営業日で200ドル近く駆け上がった相場の過熱感は否めず、急騰劇は22日のアジア時間でピークを打つことになった。高値警戒感から次第に売り優勢となり、テクニカル面での過熱シグナルもあり、売りが先行する流れは、次第にモメンタムを生むことになる。
一転、売り攻勢に下げモメンタムが加速
折しもこの日、ワシントンでの金融イベントに参加していたベッセント米財務長官が、米中貿易戦争に関する楽観見通しが伝えられると売りが膨らんだ。同長官は「(双方が高関税を掛け合う状況は)持続可能でない」として、長くは続かず緩和していく見通しを示したと伝わった。そしてさらに同じく4月22日現地時間夕刻にトランプ米大統領が、パウエルFRB議長について、「私には彼を解任する意図は全くない」と発言。
売り優勢に転じた相場は、翌23日には週初めとは逆のファンドの売り攻勢に下げモメンタムが加速し、NY金は前日比125.30ドル3.66%安の3,294.10ドルで終了。1日の下げとしては2021年6月17日の4.65%安以来の大幅なものとなり、上昇加速の起点となった3,300ドルの水準まで売り戻されることになった。
関税を巡る米国と他国との交渉にも一定の流れが生まれ始めたことで、前々週(4月7日週)から目立っていた米国債売りも沈静化し、米金融市場も落ち着きを見せる中で、NY金も3,300ドル前後の水準を探る動きに転じた。
前回危惧した乱高下する展開に
週末4月25日のNY金の終値は前週末比30.00ドル0.9%安の3,298.40ドルで反落となった。レンジは3,270.80~3,509.90ドルで、上下の振れ幅は239.10ドルと4月4日週(292.60ドル)に次ぐ規模となった。結局2営業日で200ドルほど駆け上がった相場は、記録的な下げで幕を下ろし新たな均衡点を探す展開に移行している。
前回のコラムの最後に「一方通行的な上昇が続いているが、過熱は明らかであり、先物などレバレッジを利かした取引にはリスク管理を万全にして乱高下にも備えたい」とした。危惧した展開となったが、いずれ再び訪れる機会があると思われるので、経験則として頭に入れておきたい。
JPX金、円高で相殺されるも最高値更新
大荒れとなったNY金の値動きに沿うように国内金価格も史上最高値を更新することになったが、こちらも上下動は大きくなった。大阪取引所の金先物価格(JPX金)は、前週4月17日から週明け22日まで4営業日連続で終値ベースでの史上最高値の更新を続けた。NY金が一時3,500ドルを付けた4月22日、JPX金は1万5811円と取引時間中の史上最高値を更新。この日の終値も1万5779円と最高値を更新した。
米ドル/円相場も上下に振れ、22日には一時139.89円まで円高が進む一方で、週末4月25日には一時144.03円の円安水準を見るなど、国内価格にはNY金の値動きを相殺する方向で動くことになった。それでも高値更新に至るほどNY金の上振れが大きかったと言える。
結局、週末25日のJPX金終値は1万5363円で、週足は前週末比13円0.08%とほぼ変わらないものの3週続伸となった。レンジは1万5040~1万5811円で上下の振れ幅は前週(669円)より拡大し711円と比較的大きくなった。なお、JPX金が最高値を更新した4月22日の代表的な店頭小売価格は10%の税込で1万7160円と、初めて1万7000円台に乗せている。
今週(4月28日週)の動き:4月30日の1~3月期米GDP(速報値)と個人消費支出(PCE)コア価格指数に注目、NY金は3,300ドルを挟んだ上下50ドルをコアレンジ、JPX金は1万5100~1万5600円
米中間をはじめ米国と各国間の通商交渉が引き続き市場横断的に手掛かり材料となる時間帯が継続する。今週(4月28日週)は次週の5月6~7日にFOMC(米連邦公開市場委員会)を控えていることから、FRB高官が発言を控えるブラックアウト期間に入る。
もとより米国は、月末、月初で重要経済指標の発表が重なるイベント週。FRBの政策に関連するものとして、4月30日(水)発表の3月個人所得・支出統計にて個人支出がどの程度の伸びを示すかを見る。またFRBが重視するインフレ指標、個人消費支出(PCE)コア価格指数(PCEコア価格指数)も注目指標となる。前年同月比2.6%上昇と、2024年6月以来の低い伸びが予想されている。
5月2日(金)には4月の米雇用統計の発表が控えているが、それよりも4月30日(水)の1~3月期米GDP(速報値)への関心が高まっている。予想が前期比年率0.4%増と、ほぼ3年ぶりの低い伸びとなることが見込まれている。関税発動で市場が景気の先行きに敏感になる中、GDPの伸びがどうなるか。インフレと景気減速・後退が並列するスタグフレーションが懸念されているだけに、その結果は金市場の手掛かりとなりそうだ。
こうした中で今週のNY金は3,300ドルを挟んだ上下50ドルをコアレンジに上値は3,380ドル程度を見込んでいる。JPX金は1万5100~1万5600円のレンジを想定している。