モトリーフール米国本社 - 2025年4月15日 投稿記事より

開発中止と株価低迷、それでもファイザーに注目すべき理由はあるのか?

ファイザー[PFE]は最近、医薬品開発ビジネスがいかにリスクが高いかを投資家に改めて認識させました。同社は2025年4月14日、体重管理用の経口GLP-1(グルカゴン様ペプチド-1)候補薬ダヌグリプロン(danuglipron)の開発を中止すると発表しました。同社の株価は史上最高値を約63%下回る水準で取引されています。株価は大幅に下落していますが、同社が支払う四半期配当は16年連続で増加しています。株価が低迷している現在、7.8%という驚異的な利回りとなっています。

ファイザーが連続増配の記録を更新し続ければ、直近の株価で購入した投資家は、長期的には市場を上回る利益を実現できる可能性があります。この銘柄が株価下落局面で投資先となるかどうか確かめるために、ダヌグリプロンと、同社が直面するいくつかのより大きな問題について、もう少し詳しく見てみましょう。

ファイザー社の経口GLP-1プログラムの終了

ファイザー社のダヌグリプロン・プログラムの終了は、医薬品開発のプロセスがいかにリスクの高いものであるかを浮き彫りにしました。同社によれば、用量最適化試験で1人の患者に、GLP-1試験薬が原因と見られる肝障害が発生したため、開発を中止したとのことです。

ダヌグリプロンの開発中止は残念ですが、ファイザーの大ヒット体重管理薬開発の試みが終わるわけではありません。同社は経口グルコース依存性インスリント分泌促進ポリペプチド受容体(GIPR)拮抗薬を第2相臨床試験中です。PF-07976016(仮称)と呼ばれるこの候補薬については、今後投資家はより詳しい情報を得ることになるでしょう。

特許切れの波、収益モデルに迫る試練

体重管理薬候補の不本意な結果は、ファイザーが抱えている問題リストの中で一番重要なものには該当しません。投資家がもっと懸念すべきなのは、特許で保護されているエリキュース(一般名:アピキサバン)の市場独占権がまもなく失われることです。ブリストル・マイヤーズ スクイブ[BMY]との提携で販売している経口血液凝固阻止剤(FXa阻害薬)の売上高は、2024年74億ドル、売上高全体の11.6%に達しました。

エリキュースは2026年に特許で保護された独占権を失う見込みですが、米国市場でのジェネリック医薬品の競合は2028年まで始まらないと予想されています。2024年におけるファイザーにとって2番目に大きな収入源も、まもなく枯渇し始める可能性があります。プレベナー(Prevnar)ワクチン・シリーズは、昨年の総売上高の10%強を占めていました。プレベナー13(肺炎球菌ワクチン)は来年、米国での特許による独占権を失う見込みです。

ビンダケル(Vyndaqel)はファイザーの強力な成長ドライバーでしたが、おそらくそれも長くは続かないでしょう。この治療薬はトランスサイレチン(TTR)アミロイドーシスによる心臓障害を予防するもので、2024年の売上高は64%増の54億ドルに達しました。ブリッジバイオ・ファーマ[BBIO]とアルナイラム・ファーマシューティカルズ[ALNY]は現在、心臓障害を持つTTRアミロイドーシス患者という限られた集団のために、競合する治療薬を販売しています。競合治療薬に加え、ビンダケルは2028年に米国でジェネリック医薬品との競合に直面すると予想されています。

業界全体に危機が迫っている

医薬品開発企業は、新薬候補の臨床試験を実施する前も、実施中も、実施後も、食品医薬品局(FDA)の規制担当者とコミュニケーションをとる必要があります。しかし、米国では最近、こうした規制当局担当者の多くが職を失いました。

2024年、FDAの医薬品評価研究センター(CDER)は50の新薬を承認しました。CDER所長のパトリツィア・カヴァゾーニ医学博士は1月に退任し、ファイザーの最高医学責任者(CSO)に就任しました。

元CDER所長をスタッフとして迎えることはファイザーにとって有利に働くかもしれませんが、FDAが2025年、例年の半分のペースで新薬承認を完了させるのであれば、筆者にとって嬉しい驚きです。STAT(米国の医療計ニュースサイト)の報道によれば、最近解雇された数千人の中に、新薬承認プロセスに携わるFDA職員が少なからず含まれているとのことです。

FDAが機能不全に陥れば、既存製品の独占権喪失を補うために常に新薬を発売しなければならないファイザーや同業他社にとって、大きな問題となる可能性があります。

今は様子見が賢明か、ファイザー株に立ちはだかる不確実性

多くの投資家は製薬業界のロビイストが、トランプ政権によってCDERが通常のペースで新薬申請を審査できなくなることを防いでくれると期待しています。投資家の言うことは正しいかもしれませんが、業界のロビイストが規制機関を守ることに依存するような投資論に私は賛成できません。

1ヶ月前の筆者であれば、この銘柄を「買い」と呼んでいたでしょう。ファイザーは、2023年に9つの新薬がFDAの承認を取得し、2024年は12を超える製品がFDAから承認されました。多くの新製品が発売され、ファイザーは今後の特許の崖を乗り越え、増配を続けるチャンスに恵まれていました。

CDERが大幅に縮小された今、最悪の事態を想定することが最善でしょう。FDAの規模が大幅に縮小されても、通常のペースで新薬の承認が続けられるという確証が得られるまで、筆者はファイザーとすべての製薬会社株を避けるつもりです。

免責事項と開示事項  記事は一般的な情報提供のみを目的としたものであり、投資家に対する投資アドバイスではありません。元記事の筆者Cory Renauerは、記載されているどの銘柄も保有していません。モトリーフール米国本社はアルナイラム・ファーマシューティカルズ、ブリストル・マイヤーズ スクイブ、ファイザーの株式を保有し、推奨しています。モトリーフール米国本社はブリッジバイオ・ファーマを推奨しています。モトリーフール米国本社は情報開示方針を定めています。