2025年3月10日(月)8:30発表
日本 毎月勤労統計調査2025年1月分速報
【1】結果:ボーナス効果が剥落し1月は伸びが鈍化

2025年1月の名目賃金は、前年同月比2.8%増と前月12月からボーナス効果が剥落したことで、伸びが減速する結果となりました。市場予想も下回ったものの、依然として2%後半とヒストリカルに見れば堅調な伸びで推移しています。
基本給に当たる所定内給与は同3.1%と比較可能な1994年1月以降で過去最高の伸びとなりました。同品目の共通事業所ベースでは全体で前月から0.2%ポイント伸びが減速し、同2.7%増となるも、パートを除く一般労働者では同3.0%と引き続き高い伸びが確認されました。

1月の実質賃金は、前年同月比1.8%減と3ヶ月ぶりにマイナスに転換となりました。実質賃金の算定に用いられる消費者物価指数(持ち家の帰属家賃を除く総合指数)は同4.7%増と高い伸びをしており、食料品等のインフレが加速していることが主因となります(図表2)。ボーナスといった特別給与を除けば賃金は物価に劣る状況であることが改めて示されたと言えるでしょう。
【2】内容・注目点:3月14日の春闘、第1回回答集計発表に注目

基本給にあたる所定内給与をみると、上述の通り伸びが加速しており、現在の市場はこの結果を日銀が金融政策正常化するにあたっての好材料と評価しています(図表3)。所定内給与を物価で割り引くと、実質マイナスが続いているのは懸念点と考えられますが、足元のコストプッシュインフレが一定程度落ち着いていく見通しであることや、賃金上昇のモメンタムは続いていくことが政策金利引き上げの根拠となっていると考えられます。

賃上げのモメンタムですが、3月6日連合により2025年の春闘の初回の要求集計が発表されました(図表4)。組合の要求ベースでは、前年実績を上回る前年比6.09%の賃上げを要求しており、2025年も要求水準に近い上昇率での妥結が見込まれます(2024年は要求ベースで前年比5.85%に対し、同5.10%で妥結)。
3月14日には第1回の回答集計結果が連合から発表される予定です。回答は大企業が中心となることからある程度高い水準での発表が予想されます。第1回の結果がある程度アンカーされるといった期待もでき、先行きの金融政策を占う観点からも回答結果の水準に注目です。
【3】所感:中小企業がどれだけ要求をのめるかに注目
2025年の春闘では中小企業も、前年比6.57%の賃上げを要求しています。2024年の中小企業の実績は要求が同5.97%に対し、4.45%と全体平均よりも要求がのまれない傾向がうかがえます。人材獲得の面からも、他の企業の賃上げにより自社も上げざるを得ないといった外部要因も大きな理由となりますが、経営体力といった観点から厳しさもある中で、どこまで大企業に劣らない内容を示せるかが2025年の鍵となるでしょう。
マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 山口 慧太