現在のファンダメンタルズ:弱い米国経済指標と日銀会合が注目材料

先週(3月3日週)のレンジと終値(マネックストレーダーFXのBidレート)
・米ドル/円:  146.945円~151.302円   148.018円
・ユーロ/米ドル:1.03887ドル~1.08884ドル 1.08362ドル
・ユーロ/円:  155.591円~161.273円   160.393円

先週(3月3日週)の米ドル/円:日米10年債利回り差は2.74%台まで縮小

先週(3月3日週)は3月3日の動きがその後の展開を物語っていたようで、三村財務官の円安懸念発言で円買いが先行したもののすぐに買い戻しが入り151円台前半をつけましたが、トランプ大統領が人民元安と円安を名指しで批判し関税を課すと発言したことで149円目前へ円買いの動きが強まるスタートを切りました。

その後も3月3日のトランプ大統領の発言が尾を引いて4日には148円近くへと一段の円高が進行しました。その後に5日朝には米ドル買い戻し局面で150円の大台超えとなりましたが、絶好の戻り売り場となり、改めて円買いの流れとなりました。雇用統計の前哨戦となるADP全国雇用者数も予想より弱く下押し。NY後場にはメキシコ・カナダの自動車関税1ヶ月延期で6日朝に向け買い戻しが入りましたが、ここも戻り売り。

3月6日の東京後場には連合の賃上げ要求6%のニュースに加え、日銀の早期追加利上げ観測も出て、147円台前半へと更に円高が進みました。7日の米国雇用統計も各指標が軒並み予想よりも弱かったことから一時146円台へと入り込み、引けにかけては週末前のポジション調整も出て148円へと戻しましたが、上がったところではカウンターで米ドル売りという流れが定着してきた一週間となりました。

日銀が3月19日の会合で追加利上げに動く可能性は低いものの、インフレ、賃上げと環境は整いつつあり、会合後の総裁会見では追加利上げが速まることへの言及はあるかもしれません。また米国の経済指標も予想よりも弱いものが増えてきていることから米金利は低下傾向にあります。日米の方向性が異なることから10年債利回り差は先週2.74%台へと縮小、更なる円高思惑の大きな要因となっています。懸念があるとすると、シカゴ通貨先物の円買いポジションが13.3万枚を超える史上最大の円買いに膨らんでいて、そろそろポジション調整も入るのではないかという見方がある点でしょうか。

先週(3月3日週)のユーロ/米ドル:独金利上昇で米独金利差縮小によるユーロ買い

先週(3月3日週)のユーロ/米ドルは、米ウ首脳会談が決裂したことで欧州がまとまってウクライナを支援。さらにドイツではCDU/CSU(キリスト教民主・社会同盟)とSPD(社会民主党)が軍備拡大のためにGDPの1%を超える防衛費を憲法が規定する財政均衡の義務付け対象から除外することで合意しました。これまでは財政均衡が財政出動の足枷になっていた面もあり、大きな変化が見られるかもしれません。

この決定によりドイツ国債が売られた結果、ドイツの10年債利回りが上昇し、米独金利差縮小の動きがユーロ買いの大きな要因となりました。しかし、総選挙後の新議席では極右AfD(ドイツのための選択肢)が議席を大きく伸ばしたことから、極右+極左で議会の3分の1以上を占め、これら2派が反対すると憲法改正に必要な3分の2の賛成は得られず、まだどうなるかはわからないというのが現時点での情勢です。

また、テクニカルの項で詳細は見ていきますが、これまで強いレジスタンスとなっていた1.05ドル台前半を上抜けたことでテクニカルな買いが入ったこともユーロ大幅高の原動力になったと見てよいでしょう。

米ドル/円チャート(週足)、下降トレンドを継続

長期的な判断は週足で行いますので、まずは週足チャートをご覧ください。

【図表1】米ドル/円(週足)
出所:マネックストレーダーFX
【週足チャートの見方】
長期トレンドは20週移動平均線と週足終値との位置関係で判断します。
・上昇トレンド=週足終値が移動平均線の上にある
・下降トレンド=週足終値が移動平均線の下にある
トレンド転換の判断はダマシを排除するため、2週連続で移動平均線を上回るか、下回った時にトレンドが転換したという見方をします。

週足チャートでは、20週移動平均線を下回る展開が続いていますので長期的な米ドル安・円高トレンドの状態に変化はありません。年初来高値からのレジスタンスライン(青)、それに平行なラインも下値を支えるポイントとして効いています(図表1)。

先週(3月3日週)もこの下降チャンネルの中での推移となりましたが、現状は下側のラインに接していること、また2024年9月安値139.575円とその後の高値となった2025年1月高値158.872円の61.8%押し146.946円で下げ止まったことから、長期的には下降トレンド継続ですが、短期的にはいったん下げ止まりやすい水準になってきたという見方ができます。

米ドル/円チャート(日足)、3月5日にデッド・クロス発生

短期的な判断は日足で行います。

【図表2】米ドル/円(日足)
出所:マネックストレーダーFX
【日足チャートの見方】
短期売買シグナルは5日終値移動平均線(青)と5日始値移動平均線(赤)のゴールデン・クロス(GC)、デッド・クロス(DC)で判断します。
・買いシグナル=終値移動平均線が始値移動平均線を下から上に抜くGC
・売りシグナル=終値移動平均線が始値移動平均線を上から下に抜くDC
短期上昇トレンドの間は終値移動平均線が始値移動平均線の上で推移し、短期下降トレンドの間は終値移動平均線が始値移動平均線の下で推移します。通常の2本の移動平均線で言えば、終値が短期線の役割、始値が長期線の役割を果たしていると考えるとわかりやすいでしょう。
※マネックストレーダーFXでは、移動平均線の設定画面で始値を選択することができます。

日足チャートでは、週足チャートで引いた平行下降チャンネルの下側のラインで下げ止まったことがより明確に確認できます。また、フィボナッチ・エクスパンション(下降N波動の起点を年初来高値158.872円、最初の下げを2月7日の150.927円、その後の戻しを2月12日の154.797円として計算)の100%エクスパンション146.852円の誤差の範囲内まで下げてきたことからそろそろ短期的な安値圏に入ってきていることが、週足のテクニカル・ポイントと併せて確認できます(図表2)。

3月5日にデッド・クロスが発生しているので、現時点では短期底打ちの明確な判断はできないものの、次のゴールデン・クロスは思いのほか強い反発につながる可能性もあるため注意が必要であると考えています。

ユーロ/米ドル、長期トレンドは今週末でユーロ買いへ転換の可能性大

ユーロ/米ドルのチャートから見ていきます。

【図表3】ユーロ/米ドル(週足) 長期トレンド=ユーロ買いへ転換か
出所:マネックストレーダーFX
【図表4】ユーロ/米ドル(日足) 短期トレンド=ユーロ買い
出所:マネックストレーダーFX

週足チャート(図表3)は先週のユーロ急騰の動きによって一気に移動平均線を上抜ける動きとなってきました。テクニカルにはこれまで強いレジスタンスゾーンとなっていた1.05ドル台前半を明確に上抜けたことが急騰を支えた要因となっています。また移動平均線の水準が1.0498ドルとかなり引く水準にあるため、今週(3月10日週)末での2週連続での上抜けがほぼ確定していることから長期トレンドがユーロ買いへと転換する流れとなってきました。

日足チャート(図表4)では先週(3月3日週)の上昇が大きく速い動きであったことがよくわかります。先週初の3月3日時点で既にゴールデン・クロスとなっていましたが、その後も急速に値を上げ高値1.08884ドルと1週間でほぼ500pipsの上げはユーロ/米ドルとしてはかなりの値幅となっていました。

ただ、週足で2024年9月高値1.12137ドルと2025年1月安値1.01780ドルとの61.8%戻し1.08181ドルまで戻してきていること、同様に日足チャートでも2月3日安値を起点としたフィボナッチ・エクスパンションにおいて161.8%エクスパンション1.09738ドルへと上昇したことを考えると短期的にはいったん踊り場を形成しやすいと言えます。

ユーロ/円は、三角もちあいシナリオが崩壊、新たなラインを想定

次にユーロ/円のチャートです。

【図表5】ユーロ/円(週足) 長期トレンド=ユーロ売りも難しい局面に
出所:マネックストレーダーFX

ユーロ/円は移動平均線よりも下にいるものの、再度これまでの三角もちあいの中へと入り込んだことで三角もちあいシナリオは崩壊、新たなラインを引くこととなりました。サポートは弱いのですが、レジスタンスがどの程度効くのかで今後ユーロ買いに転換するかどうかを見極めていくこととなります。(図表5)。

【図表6】ユーロ/円(日足) 短期トレンド=ユーロ買い
出所:マネックストレーダーFX

日足チャートではユーロが対米ドルだけでなく対円でも上昇したことで2月高値を上抜ける流れとなってきました。移動平均線は先週示した通り既に2月28日にゴールデン・クロスが発生していましたので、短期的には素直に移動平均線の方向についていくことが正しかったようです(図表6)。週足が難しいチャート形状となってきたことから、当面は日足チャートで短期的な見方を中心とした方が良さそうです。

それでは今週も良いトレードを!