日銀の金融政策決定会合と今後の企業決算に留意、米経済は堅調

・トランプ大統領就任式後のマーケットは、ある程度事前に織り込まれていたため小動きになっている。米先物も堅調である。今後も何かトランプ大統領からの発言があれば、当然マーケットは振れるだろうが、それはノイズの面が強い。今週は、日銀の金融政策決定会合があり、さらに決算も控えている。そちらの方がファンダメンタルズに近い話なので、ノイズをこなしながら確認していく必要がある。

・IMFの世界経済見通しの改訂版が1月17日に公表された。タイトルにも「Divergent(不一致)」という単語が使われているように、米国とその他で見通しが変わる。これから政治的ノイズを含んだ情報が多く出ることにより、振られるだろうが、経済は今のところ安定しており、米経済は一強といわれるくらい堅調である。政治によって世界経済をリセッションに落とすようなことがあれば別だが、基本的には経済がメインにあって、政治がそれにどう絡むか見ていくべきと考える。

・アセットクラスで気になるのは、世界の不確実性が上がった場合である。世界経済の不確実性につられて米ドルは動く。リスクオフ的に米ドルが買われやすい局面は比較的想定できる。資産運用の中心に米ドルはなりえる。

・米企業の決算動向を見ると業種別に不一致はある。S&P500指数はやや下方修正が優位だが、決算前に下方修正が入り、決算の着地が強くなるのは、よくある現象である。注目は一般消費財や工業、エネルギーなどS&P500指数のグラフより下に位置しているものが、トランプ大統領関連として反転していくかどうかである。心強いのは金融の決算結果がポジティブであること。今のところ米経済は堅調と見える。

株価上昇期待は高まり楽観的だが、注意も必要。一極集中は回避し、分散効果を高めることを考慮

・コンファレンス・ボード消費者信頼感指数を見ると、今後の1年間の株価上昇期待は高まっており、かなり楽観的である。一方、タームプレミアムの推移を見ると、利回りが要求されている。株式市場が楽観的な一方、債券市場はかなり悲観に傾いている。「悲観は友、陶酔は敵」というバフェット氏の言葉もあり、株式市場には注意する一方、債券に投資機会が出てきているとみてよいのではないか。経済は比較的安定しているが政治がらみで触れる場合があるので、一極集中せずにいろいろなアセットクラスにポジションを取っておくと、このように各市場で悲観・楽観が不一致の状況では分散効果の妙味があると言える。

・さらにもう一つの「不一致」として、支持政党別インフレ期待をみると、支持政党によってインフレ期待は大きく変わっている。共和党のインフレ期待は落ち着いている一方、民主党のインフレ期待は高まっている。全体のインフレ期待は落ちついている中で、かなりの不一致がみられる。全体を反映していると、政策もどっちつかずにならざるを得ない部分にも注意。そのため、経済の状況、ファンダメンタルズがどうかということに回帰する。安定成長はマーケットにはよいことだが、この不一致があることはやや警戒される。

・債券の中でもクレジット市場は堅調で、クレジットスプレッドはかなりタイト化している。ハイイールド債のスプレッドもタイト化しており、リスクプレミアムがのっていない状況である。一方、近い動き方をするはずの倒産件数は上昇しており、ファンダメンタルズと不一致の状況に入ってきたように見える。ハイイールド債に対するスプレッドは炭鉱のカナリアに例えられるが、本来であれば、ハイイールド債のスプレッドは上がってもおかしくない状況である。今のところは金余りでリスクオンの状況のため、不均衡のまま保たれているが、注目していきたい指標である。