先週(1月13日週)の動き:NY金は1ヶ月ぶりの高値を付ける堅調展開、一時最高値に迫ったJPX金
先週(1月13日週)のニューヨーク金先物価格(NY金)は、1月17日に一時2,757.90ドルと、2024年12月11日以来1ヶ月ぶりの高値を付ける堅調展開となった。
一連の米経済指標の好調さを受け2024年末から続く長期金利の上昇、それに伴う主要通貨に対する米ドル高にもかかわらず、NY金は水準を切り上げて来た。
週初めの1月13日は、前週末比36.40ドル安の2,678.60ドルと、5営業日ぶりの反落でスタートすることになった。この日、長期金利の指標となる10年債利回りが一時4.808%と2023年11月1日以来1年2ヶ月ぶりの水準に上昇。目先の弱気見通しが多い中、逆風の中で上昇を続けてきたNY金もさすがに反落ということになった。
インフレの再燃不安を和らげた米CPI
1月14日発表の12月米生産者物価指数(PPI)は、前年比で小幅に加速したものの前月比では鈍化が認められた。
さらに15日発表の同消費者物価指数(CPI)は、総合指数が前年比2.9%と伸びは前月2.7%から加速し、値動きの大きいエネルギーと食品を除くコア指数も前年同月比で3.2%上昇となったものの、いずれも市場予想を下回った。
また、16日の小売売上高(速報値)も7ヶ月ぶりに市場予想を下回る結果となった。
これらの注目指標の結果が、インフレ再燃不安を和らげた。
ウォラーFRB理事のハト派発言
1月16日、米連邦準備理事会(FRB)のウォラー理事がCNBCのインタビューで、前日に発表された米CPIが「非常に良い内容だった」と指摘し、同様の内容が続けば「今年前半に利下げが行われると考えるのが妥当だ」との考えを示した。「3月の可能性を完全に排除することはできないと思う」とも述べ、インフレと労働市場の動向次第では今年最大3~4回の0.25%の利下げがあり得るとも述べている。ここまで踏み込んだ発言は意外性があり、サプライズと言えた。
週初めに4.8%台を付けていた10年債利回りは一時4.6%割れまで急低下した。債券市場が読む利下げ予想(Fed Watch)では、これまで次回利下げは2025年後半と予想されていたが、発言を受け6月の米連邦公開市場委員会(FOMC)の確立が70%近くに上昇した。
カザフスタン中央銀行による金売却意向
冒頭で書いたようにNY金は1月17日、一時1ヶ月ぶりの高値2,757.90ドルまで買われたものの、終盤は利益確定売りに押され上げ幅を削り27,48.70ドルで終了した。ブルームバーグ通信が17日、中央アジアの産金国カザフスタン共和国の中央銀行が保有金の一部を売却予定と報じたことも売り手掛かりとなったと見られる。
NY金の週足は前週末比33.70ドル、1.24%高で3週続伸となった。レンジは2,672.00~2,759.20ドルだった。想定を超える堅調展開と言える。
JPX金、円高に上値を抑えられるも最高値に接近
一方で、国内大阪取引所の金先物価格(JPX金)は、米ドル/円相場が米ドル安・円高に振れたことを受け、NY金の上昇分を相殺する形で週足は小幅に反落した。前週末比60円、0.44%安の1万3640円で終了した。
今週1月23~24日の金融政策決定会合で、日銀が追加利上げを決める見込みが高いと複数の報道機関が報じ、円が買われた。17日アジア時間の午前には一時154.99円と円は1ヶ月ぶりの高値を付け、引けは156.30円だった。
JPX金のレンジは1万3598~1万3764円となった。なお、先週の高値1万3764円は、2024年10月31日に付けた過去最高値1万3819円に55円ほどのところまで接近する水準でもある。
拡大続く米財政赤字、25会計年度第一四半期過去最高更新
金市場の関心事として以前から意識されているものに米財政赤字の歴史的な拡大がある。すでにトランプ第2次政権が公約に掲げてきた2017年の減税措置の延長や不法移民の強制送還などが米財政見通しをさらに悪化させるとして懸念されてきた。
1月14日に米財務省が発表した2024年12月の財政収支は870億ドルの赤字だった。2023年12月の1,290億ドルの赤字から大幅に縮小したが、給付金の支払い時期のずれによるテクニカルな要因による縮小としている。実際に10月に新会計年度入りした2025会計年度の累計では、赤字は過去最高の7,110億ドルに達している。前年同期の5,100億ドルの赤字から2,010億ドル(39%)増加した。
1月17日には米議会予算局(CBO)が2025年度の米財政赤字が前年とほぼ横ばいの1兆8,650億ドルになるとの見通しを示したが、これはそもそも2017年のトランプ減税が2025年末に予定通り失効し、税率がより高い水準に戻ることを前提としている。
この点については次期財務長官に指名されているスコット・ベッセント氏が1月16日の上院財政委員会の指名承認公聴会にて、大型減税が延長されなければ、経済危機に直面すると警告し、「これは最も重要な経済問題」としており、延長は間違いないとみられる。米財政赤字の歴史的な拡大は2025年も続きそうだ。
今週(1月20日週)の見通し:トランプ次期米政権の政策動向で値動き拡大も、日銀の利上げを想定国内価格円高の影響の可能性
今週(1月20日週)は言うまでもなく20日のトランプ次期大統領就任により示される様々な政策方針が注目となる。就任初日から様々な大統領令を出すとみられ、関税、不法移民強制送還問題や移民の制限、エネルギー政策の見直しから仮想通貨に至るまで、発足数日で100本を超えると報じられている。
こうした政治要因は数値化できないゆえにプログラム運用には向かず、実際の動きを見ての反応となることが多い。したがって今週前半を中心に、その内容次第で金融市場の値動きが大きくなる可能性が高く、NY金の変動率も上がりそうだ。NY金についてはスポット価格(現物価格)を加味して、2,700ドル前半を中心に上下双方に振れる可能性が高い。
一方、国内価格に関しては日本銀行の利上げが見込まれる。1月23~24日の金融政策決定会合で判断されるが、こちらもトランプ次期大統領就任後の市場に大きな動きが見られた場合には見送りの可能性も指摘されている。足元で米ドル/円相場では米ドル買いが一巡したとの指摘がある。
JPX金についてはNY金の振れ幅によるものの、1万3100~1万3600円のレンジ内の動きを想定する。