モトリーフール米国本社 – 2025年1月13日 投稿記事より
バフェット氏、2024年は株式の売却を加速
ウォーレン・バフェット氏はここしばらく、株式市場に好感を抱いていないようです。バフェット氏が最高経営責任者(CEO)を務めるバークシャー・ハサウェイは、これまで8四半期連続してポートフォリオから売却した株数が購入した株数を上回っています。2024年には売却が加速し、年初来9ヶ月間の売却額は総額1,330億ドルに達しました。2025年2月には2024年通年の最新データが発表される予定です。
バフェット氏が直面している最大の課題の一つは、バークシャーのポートフォリオが巨額であるため、投資対象が限られていることにあります。バフェット氏は小型株に有意義な投資をすることができません。そのため、小型株の株価が急騰したとしても、その投資額がバークシャーの方針を大きく変えることはないでしょう。そして、バークシャーが資金を最も投入できる大企業では、最近のバリュエーションが最も割高になっているものも多く、バフェット氏には魅力的な選択肢があまりないのです。しかし、米証券取引委員会(SEC)への直近の開示資料によると、バフェット氏は、バークシャーの手元現金のうち、1億ドル近くを投資できる銘柄を見付けたようです。
バフェット氏がインターネットにおける独占的地位にあるベリサイン[VRSN]に注目している理由
バフェット氏がベリサイン[VRSN]に初めて投資したのは2012年です。それ以来、株価上昇率は少なくとも325%となっています(本校執筆時点)。バフェット氏は2013年と2014年にもベリサイン株への投資を続けましたが、その追加投資以来、10数年が経過しています。なぜバフェット氏が今、ベリサインに再び注目しているのか、その理由を見ていきましょう。
インターネット・コーポレーション・フォー・アサインド・ネームズ&ナンバーズ(ICANN)は、インターネットのドメイン名やIPアドレスの割り当てなどを、全世界的に調整・管理する非営利組織です。ベリサインは、ICANNが付与する「.com」(ドット・コム)および「.net」(ドット・ネット)のトップレベルのドメインを使ってウェブサイトを登録する、独占的権利を有しています。最もポピュラーなドメイン名に対する同社の独占権は、契約に組み込まれた値上げ制限によってのみ制限されています。現在の契約では契約を結んでから2年後にドット・コムで年間7%、ドット・ネットで年間10%のドメイン名の値上げが認められています。
ベリサインはICANNとの契約を定期的に更新する必要がありますが、一定の要件を満たしている限り、更新は自動的に行われます。ベリサインはICANNに手数料を支払い、重要なインターネット・インフラを運営し、途切れることなくドメイン・ネーム・システム(DNS)のサービスを提供しなければなりません。ベリサインは27年間、その契約を守り続け、今後それができなくなるという兆候もありません。
その結果、ベリサインは着実に価格を引き上げることが可能になり、長期的に安定した収入と利益の成長を実現しています。過去10年間にベリサインは収入を50%超伸ばしましたが、これは値上げと登録されたドメイン数の増加によるものです。ベリサインの事業には大きな営業レバレッジが働くため、同じ期間に純利益は146%拡大し、収入の伸びを大きく上回りました。
新たなトップレベルのドメインが市場に参入する一方、ドット・コムおよびドット・ネットドメインに対するに対する需要の強さは変わっていません。ほとんどの企業はオンライン・イメージに関して妥協を望まず、ドット・コムには他のドメイン名にはない、プロフェッショナルな雰囲気があります。ベリサインのドメイン顧客数は、2024年にわずかに減少しましたが、他のドメイン名がベリサインの中核的な顧客基盤を奪う脅威はほとんどありません。2024年9月までの5年間に、ドット・コムとドット・ネットのドメイン総数は7.8%増加しました。
収入の着実な増加と、DNSサービスを支えるために必要な設備投資が限られることから、結果的に、ベリサインはフリーキャッシュフローを拡大させています。自社株買いを通じてベリサインが株主に資本を還元した結果、1株当たり利益(EPS)の伸び率は純利益の伸び率を大幅に上回っています。バークシャーを含む株主は、その恩恵を享受しています。
バフェット氏が今、ベリサイン株に投資をする理由
ベリサインは収入、EPSを着実に向上させてきましたが、株価は過去5年間、ほぼ横ばいで推移してきました。これは、規制当局が圧力によって、独占的な事業を妨げるのではないかという懸念が要因だった可能性があります。次期トランプ政権がベリサインに追加規制を課す可能性は低いものの、株価は2020年初頭と同水準にとどまっています。
要するに、過去5年間に事業は着実に拡大しており、ベリサインの株価バリュエーションは魅力的に見えるのです。バフェット氏による株式購入という直近のニュースを受けて株価は上昇しましたが、それでも株価はアナリストによる2025予想EPSの約24倍です。これは優れた事業に支払うべき、正当な対価と言えるでしょう。ベリサインは、収入を伸ばす道筋が明確であり、大きな営業レバレッジ効果を発揮し、株主にとって将来の価値を高める自社株買いプログラムを備えているからです。
バフェット氏が直面する最大の課題は、魅力的だと考える株に十分な額を投資することが難しい点です。バークシャーは既にベリサイン株の13.8%を保有しています。その時価総額は203億ドルに上るため、バフェット氏がさらに追加で数億ドルをベリサインに投資することは難しいでしょう。しかし、個人投資家にとっては投資妙味があるかもしれません。
免責事項と開示事項 記事は一般的な情報提供のみを目的としたものであり、投資家に対する投資アドバイスではありません。元記事の筆者Adam Levyは記載されているどの銘柄の株式も保有していません。モトリーフール米国本社はバークシャー・ハサウェイ、ベリサインの株式を保有し、推奨しています。モトリーフール米国本社は情報開示方針を定めています。