【米国株式市場】ニューヨーク市場
NYダウ: 42,297.12 △358.67 (1/13)
NASDAQ: 19,088.10 ▼73.53 (1/13)
1.概況
先週末の米国市場は下落となりました。寄り付き前に発表された12月の米雇用統計では、NFP(非農業部門雇用者数)が25.6万人増と市場予想を大きく上回り、失業率も4.1%で市場予想を下回って前月から改善を示しました。米労働市場が予想以上の強さを示したことで、FRB(米連邦準備制度理事会)による利下げペースの鈍化が意識され、ダウ平均は94ドル安で取引を開始しました。その後、午前10時発表のミシガン大学消費者信頼感指数の公表で消費者の予想インフレ率が急上昇を示すと、売りの勢いはさらに強まり一時は757ドル安まで下落し、41,877ドルでこの日の安値を付けました。
安値を付けた後は下げ幅を縮める場面も見られましたが、取引終盤にかけては再び売りに押され、結局696ドル安の41,938ドルで取引を終え、反落となりました。また、ハイテク株比率が高いナスダック総合株価指数は317ポイント安の19,161ポイントで3日続落し、S&P500株価指数も91ポイント安の5,827ポイントで取引を終え反落しました。
昨日の米国市場は高安まちまちとなりました。13ドル安で寄付いたダウ平均は取引開始直後、米長期金利の上昇を背景に一時93ドル安まで下げ幅を拡大しましたが、先週末に696ドル安と大幅下落していたこともあり、主力株の一部に自律反発狙いの買いが入り持ち直すと、その後はしばらく一進一退の展開が続きました。
しかし、取引終盤にかけて上げ幅を広げると、結局358ドル高の42,297ドルで取引を終え、反発となりました。また、S&P500株価指数も9ポイント高の5,836ポイントで取引を終え、小幅に反発しています。一方で、ハイテク株比率が高いナスダック総合株価指数は73ポイント安の19,088ポイントで取引を終え、4日続落しました。
2.経済指標等
先週末に公表された12月の米雇用統計では、NFPは25.6万人増となり、16万人増程度を見込んだ市場予想を大きく上回りました。また、失業率も4.1%で市場予想を下回り、前月から0.1ポイント改善しました。一方、平均時給は前月比ベースで0.3%増で市場予想と一致し、前回結果(0.4%増)からは鈍化しました。前年同月比ベースでは3.9%増となり、市場予想と前回結果の4.0%増を下回る結果となりました。1月のミシガン大学消費者信頼感指数の速報値は73.2となり、市場予想と前回結果を下回りました。また、消費者の1年先の期待インフレ率(速報値)は3.3%と、前月の2.8%から上昇しました。
3.業種別動向
先週末のS&P500の業種別株価指数では、全11業種のうちエネルギーのみが1%未満の小幅な上昇となりました。一方で、10業種が下げ、なかでも不動産や金融、情報技術は2%以上下落し、生活必需品や資本財・サービス、コミュニケーション・サービスは1%以上下落しました。
昨日のS&P500の業種別株価指数では、全11業種のうち7業種が上げ、特にエネルギーと素材が2%以上上昇したほか、ヘルスケアや不動産、資本財・サービスが1%以上上昇しました。一方で、公益事業や情報技術、コミュニケーション・サービスなどの4業種が下げ、特に公益事業は1%以上下落しました。
4.個別銘柄動向
先週末の米国市場では、ダウ平均構成銘柄のうち4銘柄が上昇し、なかでもシェブロン[CVX]とウォルマート[WMT]が1%以上上昇しました。一方で、26銘柄が下落となり、なかでもロサンゼルス近郊での山火事被害によるコスト増が懸念される損害保険会社のトラベラーズ・カンパニーズ[TRV]が4%超下落したほか、ゴールドマン・サックス[GS]やアメリカン・エキスプレス[AXP]、エヌビディア[NVDA]は3%以上下落しました。そのほかにも、キャタピラー[CAT]やセールスフォース[CRM]など多くの銘柄が2%以上の下落となりました。
ダウ平均構成銘柄以外では、デルタ航空[DAL]が10日の取引開始前に決算を発表し、EPS(1株当たり純利益)、売上高ともに市場予想を上回り、9.0%上昇しました。また、電力会社のコンステレーション・エナジー[CEG]は、発電所の開発・運営を手掛ける非上場のカルパインを買収することで合意したことが材料視され、25.2%上昇しました。
昨日の米国市場では、ダウ平均構成銘柄のうち20銘柄が上昇しました。なかでも公的医療保険を管轄するメディケア・メディケイド・サービスセンター(CMS)が、2026年の政府から保険会社への支払額を増やす案を発表したことを受けて、ユナイテッドヘルス・グループ[UNH]は3%以上上昇しています。また、キャタピラーとアムジェン[AMGN]も3%以上上昇しました。そのほか、スリーエム[MMM]が2%以上上昇し、ジェイピー・モルガン・チェース[JPM]やシャーウィンウィリアムズ[SHW]、メルク[MRK]などが1%以上上昇しました。一方で、10銘柄が下落となり、なかでもエヌビディア[NVDA]やウォルマート[WMT]、アイビーエム[IBM]、アップル[AAPL]は1%以上下落しました。
ダウ平均構成銘柄以外では、日本製鉄による買収がバイデン大統領により阻止されたユナイテッド・ステイツ・スチール[X]が、米鉄鋼のクリーブランド・クリフ[CLF]とニューコア[NUE]が協同で買収を検討していると報じられたことを受け、6.1%上昇しました。また、上述のメディケア・メディケイド・サービスセンター(CMS)の公表を受けて医療保険関連株が上昇しており、シーブイエス・ヘルス[CVS]は7.3%上昇、ヒューマナ[HUM]は6.8%上昇しました。一方で、ワクチンメーカーのモデルナ[MRNA]は、取引開始前に2025年通期のガイダンスを公表し、売上高見通しを15億~25億ドルと従来の25億~35億ドルから下方修正したことを受けて、16.8%下落しました。
5.為替・金利等
先週末の米長期金利は前日比0.07%高い4.76%となりました。昨日の米長期金利は前日比0.02%高い4.78%となりました。ドル円は、157円台半ばで推移しています。
VIEW POINT: 今日の視点
先週末の米国市場は、雇用統計が強い結果を示したことで利下げペースの鈍化が意識され大幅安となりました。昨日の米国市場はダウ平均こそ反発したものの、ハイテク株は売られており、本日の日本市場も下落してのスタートが予想されます。こうしたなか、日経平均は3万9000円を割り込む展開が想定されます。本日の材料としては、国内は日銀の氷見副総裁の発言が注目されるほか、米国では生産者物価指数(PPI)の公表が予定されています。
(マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 岡 功祐)