資産運用のやり方は目標金額によって変わる
資産運用の仕事を30年以上続け、自分の資産も運用してきて、思い至ったことについて今回は書いてみたいと思います。それは、資産運用の具体的な手法は目標とする資産金額によって異なるということです。私自身、自分の資産規模が大きくなるにつれて運用対象が広がり、資産運用のやり方が変わっていきました。
厳密な金額分けではありませんが、わかりやすくするために資産規模に関して1000万円、1億円、10億円と3つの大まかなレベルに分けて説明してみます。
まずは1000万円を目標に金融資産を活用
投資で資産1000万円を作るのはそれほど難しいことではありません。単純な計算になりますが、毎月6万円を積立て、それを年利平均6%で10年間運用できれば資産1000万円に到達します。20年後ならその半分の毎月3万円程度でも達成することが可能です。
このような金融資産を使った長期の資産形成に必要な能力は「勤勉」と「節制」です。まずは仕事を真面目にやりながら節制することによって、収入の中から定期的に投資に回せる資金を確保する。それを税制優遇枠のNISAを使って投資信託の積立でインデックス運用する。
市場平均に沿った運用をするだけですから、株式の個別の銘柄選択をする必要もありませんし、投資のタイミングを考えなくても大丈夫です。ネット証券などの投資信託の自動積立を活用すれば手間もかかりません。
1億円目指すのに必要なのは「信用力のマネタイズ」
目標金額が大きくなって1億円レベルになってくると、単に自分の稼いだお金をコツコツと増やしていくだけでは時間が足りません。長期で継続して毎月30万円積立できるような人でなければ、金融資産だけを使って1億円以上の資産を構築するのは、かなり難しいと思います。
そこで活用すべき戦略は「信用力のマネタイズ」です。公務員や安定した仕事をしている会社員、医者・歯科医・弁護士・税理士・看護師といった国家資格を持っている専門家は融資をする金融機関からの信用力があります。
その信用力によって低い金利で「お金を借りる力」を得られます。自己資金が少なくても、不動産などを担保に年収の8倍から12倍くらいまでの借入を行って不動産を購入することができます。
投資用の不動産をこの信用力を使った資金で購入すれば、不動産の賃貸利回りと借入金利の「金利差」によって、借りたお金から収益を生み出す「仕組み」を作ることができます。
不動産には空室リスクや家賃下落リスクがありますが、空室率が低く、家賃が下がりにくい都心の居住用物件を選べば、リスクはかなり抑えることができます。
投資信託のような金融資産を使った資産運用は自分の持っている資金の範囲でしか運用できませんが、不動産は借入したお金にも働いてもらうことで「信用力のマネタイズ」ができる。この差が資産形成のスピードの差につながるのです。
資産10億円達成に必要な「リスクテイク」と「インナーサークル情報」
私の周りにいる資産10億円以上を保有している人を見ると、親の七光り、事業の成功者、暗号資産、未公開株という4つのパターンに分類できます。
親の七光りと事業の成功は資産運用とは関係ありませんから、暗号資産か未公開株にチャンスがあることになります。どちらも極めてリスクの高い投資対象ですが、その高いリスクテイクの見返りを求めて投資するものです。
暗号資産はトランプ氏がアメリカの大統領選挙に勝利してから、暗号資産業界に対する規制緩和の思惑から大きく上昇しています。その代表であるビットコインは一時10万ドルの大台を突破しましたし、リップル(XRP)もそれまでの価格から6倍程度まで急上昇しています。
暗号資産は他の資産に比べボラティリティ(変動率)が高く、「くじら」と呼ばれる大口の投資家の売買によって価格が大きく変動します。タイミングを狙った投資よりも、投資信託の積立と同じようにドルコスト平均法を使った定期的な購入をするべきでしょう。
どの暗号資産に投資をするかが悩ましい点ですが、暗号資産に関しても時価総額に応じた比率で資金を配分すれば、インデックス運用のような投資が可能になります。
未公開株式は上場する前の株式に投資して、将来の上場や株式売却によってリターンを狙うものです。私も10社以上の未公開株式に資金を投じていますが、全て自分の知り合いで面識のある経営者からの紹介で情報を得たものです。「インナーサークル情報」と呼ばれる内輪でしかやり取りされない情報から投資の判断を行っているのです。
これまで私が関わった案件の中には投資金額が100倍以上になるような投資例もありました。もし、10の案件に投資をして、その内の1つが100倍になれば、他が全て失敗しても、全体では10倍になります。
暗号資産や未公開株式はハイリスクな投資対象というだけではなく、投資詐欺に巻き込まれる被害も多く、金融庁も注意喚起しています。信頼できる確率の高い情報を手に入れるルートも必要です。
自分の目標金額とリスク許容度から投資戦略を立てる
どのレベルにしても資産運用は戦略を立てて、正しい方法で続けていれば高い確率で目標達成できるものです。間違ったやり方で失敗して途中でやめてしまうから成果が出ないだけです。
目標金額が大きくなり、短期で結果を出そうとすればするほどリスクが高い投資対象に資金を投じる必要が出てきます。自分のリスク許容度を超えたハイリスクな投資は継続することができず、結局は失敗する可能性が高くなります。
無理な目標を立てるのではなく、自分が取れるリスクの限界を知ることで無理のない資産形成を行うことが可能です。金融資産を活用した堅実な資産運用が投資の王道ですが、それ以外の投資の方法も充分に情報収集をした上でチャレンジしてみてください。
2024年も本コラムをお読みいただきありがとうございました。読者の皆さまも素敵な年の瀬をお迎えください。