2024年からNISAの制度が変わり税制優遇枠が拡充されました。それをきっかけに投資を始めた個人投資家も増えてきました。その一方で、いまだに預貯金を中心とした資産を保有し、投資に踏み出せない人たちが意外と多いのも事実です。

投資が始められない理由は知識不足と恐怖心

投資に踏み出せない理由の1つは知識不足です。例えば、株式やFX、暗号資産などへの投資によって短期で資産を減らしてしまった人を見て「投資=危険」と思い込んでしまう。確かに、短期で売買を繰り返せば投資というより投機に近くなってしまい、ある意味でギャンブルに近づいていってしまいます。

しかし、正しい知識を持って投資をすれば資産を増やすことは決して難しくはありません。日本経済新聞に掲載されていたデータでは、1990年から2023年まで全世界株式のインデックスファンドを20年間毎月積立していた場合、いずれの期間でも損失が発生していないことが示されています。しかし、そのような知識を活用して実践している人はあまり多くありません。

また、失敗するのが怖いという恐怖感から投資を躊躇する人も多いのです。私は、リスクコントロールの具体的な方法を知り、それを実践することで投資の恐怖感を小さくすることが、その対策になると考えます。

投資対象の分散でリスクを抑える

リスクコントロールの基本は分散です。「卵を1つのカゴに盛るな」という投資の格言通り、集中投資は失敗したときのリスクを高め、投資の成果を不安定にします。

株式投資であれば、1つの銘柄に集中するのではなく、インデックス運用で銘柄分散する。そして、株式だけではなく債券にも投資を広げ、金融資産だけではなく実物資産も組み合わせる。通貨も円資産だけではなく外貨資産にも分散する。

このように、価格の動きの異なる資産に幅広く分散投資することによって、マーケットの変動に対応する自分の資産のブレを小さくすることができます。

時間の分散でリスクを抑える

また、時間軸を長く持つことも重要です。短期で結果を出そうとすると、大きなリスクを取ることになりがちです。

投資信託のような金融資産であれば、積み立てを使うことによって、ドルコスト平均法による時間分散をすることも可能です。上がったり下がったりの変動を繰り返しながら長期で上昇していく資産に関しては、投資タイミングを分散させて投資をしていくことが有効です。

最悪を想定することで恐怖心を抑えられる

さらに、投資を始める際には最悪を想定することも大切です。もしうまくいかなかった場合、どこまでの損失が発生するかを考えれば、そこまでのリスクが取れるかどうかを判断することができます。

例えば、株式と債券を組み合わせた分散ポートフォリオを作れば、リーマンショックのような大きな相場の変動があったとしても、損失を最悪時でも購入価格の20%程度に収めることは可能です。

このように最大損失を想定できれば、投資に対する恐怖感を低下させることができるのです。

完璧な投資は世の中には存在しません。投資には必ずリスクが存在します。リスクコントロールを上手に行うことで、失敗によるダメージを抑え、リスクテイクをすることができるようになるのです。

インフレが生む「リスクを取らないリスク」

投資で損をすることを過度に恐れて定期預金のような元本保証商品だけを保有していると、今後も継続するインフレによって保有資産の実質的な価値を低下させていくことになります。

インフレによって、実質的に資産を減らしてしまうのは預金者や年金生活者です。預金金利や年金支給額の伸びはインフレ率を下回っており、インフレの悪影響を受けています。物価が上昇する経済状況が続けば、預金者・年金生活者と投資家の間の資産格差がさらに広がり、日本でも本格的な格差社会が実現することになるでしょう。

インフレとは貨幣価値が下落していくことです。インフレが続くことを前提とすれば、資産を増やすために投資をするのではなく、資産の目減りを防ぐために投資をする必要が出てきます。

投資の失敗を恐れてリスクを取らないと、逆に資産価値の目減りという「リスクを取らないリスク」を取ってしまうという訳です。リスクの取りすぎは禁物ですが「リスクを取らないリスク」も避けなければいけません。

投資で「収入の複線化」を

投資とは自分が稼ぐだけではなく、お金にも稼いでもらうことです。つまり収入の複線化です。将来自分が働けなくなるリスクをカバーするためにも、投資は有効だと考えられます。

お金は正しい指示をすればその通りの働きを年中無休でやってくれます。しかし、指示をしなければ決して自分からは働いてくれません。だから、投資というお金に指示を出す行為が必要なのです。2025年ももう1ヶ月が経とうとしています。何となく1年が過ぎてしまう前に、具体的な行動をとることを考えてみましょう。