先週(12月16日週)の振り返り=日米金融政策を受けて米ドル/円急騰
先週の米ドル/円は153円台で取引が始まりましたが、日米の金融政策を決める会合の結果を受けて上昇が加速、トランプ氏の米大統領選挙勝利後に記録した高値の156.7円を上回り、一時は158円近くまで一段高となりました(図表1参照)。

翌20日以降は一時156円を割れるなど、比較的大きく反落
特に、12月19日(木)の日銀金融政策決定会合の後から、米ドル/円は154円台から一気に157円を大きく上回るまで上昇が急加速しました。これは、日銀の植田総裁の記者会見を受けて、日銀の早期利上げ見通しが大幅に後退したためとの解説が多かったようです。翌20日は、一時156円を割れるなど、最大で約2円と比較的大きく反落しました。
先週、米ドル/円が大きく上昇した動きは、基本的には日米金利差米ドル優位拡大に沿ったものでした。ただ、細かく見ると、12月19日以降一時158円近くまで一段と上昇したのは、金利差米ドル優位拡大から見て、やや「行き過ぎ」だったのではないでしょうか(図表1参照)。

日本の金利は、12月19日の日銀会合後にそれほど大きく低下したわけではありませんでした。特に金融政策を反映する短期金利は、先々週(12月9日週)までの低下の方が大きかったようです(図表3参照)。こうした日本の金利の動きからすると、「早期利上げ見通しの大幅な後退の結果」と説明された19日以降の円急落は、金利差からのかい離が示すように「行き過ぎ」の可能性があったでしょう。以上のことから、20日に比較的大きく米ドル安・円高に戻したのは、円急落「行き過ぎ」の反動の面も大きかったのではないでしょうか。

過去2年も12月の日銀会合後、円が急落
このように日銀の12月の金融政策決定会合の後に円が急落したのは、1年前も同じでした。2023年の12月日銀会合も12月19日に行われ、政策変更はありませんでしたが、やはり、この日も米ドル/円は142円台前半から145円寸前まで、3円近くも大きく米ドル高・円安へ動くところとなりました。ただしその後は、年末までに140円割れ近くまでほぼ一本調子で米ドル安・円高へ向かいました(図表4参照)。

2022年の日銀の12月金融政策決定会合では、「サプライズ」の政策変更を受けて137円から130円まで1日で約7円も米ドル/円が急落する大波乱が起こりました。この印象がまだ強く残る中で、日銀の12月の会合は、円相場が大きく動く年内最後のイベントと位置付けられ、投機的な仕掛けが大きく入る傾向が強くなっていると考えられます。
ただ、会合後の円相場の動きが一段落した後は、その反動も入りやすかったということを、すでに見てきた2023年のケースが示していたということではないでしょうか。そうであれば今回の場合も、基本的には金利差次第ではあるものの、日銀会合で円売りを仕掛けた反動で年末にかけて米ドル安・円高に戻す可能性が注目されるかもしれません。
今週(12月23日週)の注目点=クリスマス週間だが米金利上昇・米国株安にも要注意
年末にかけて米ドル安・円高にどこまで戻すかに注目
今週はクリスマス週間となるため、市場参加者も少なくなり、薄商いでの小動きが続く可能性が高いでしょう。ただしここ数年は、年末にかけて意外に大きな値動きがみられました。
上述のように、2023年は12月20日の日銀会合後に記録した145円寸前の米ドル/円の高値から、年末にかけて140円割れ寸前まで最大で5円近い米ドル安・円高となりました。また、2022年は、12月19日の日銀会合後に記録した米ドル/円の安値130円から、年末にかけて134円半ばまで、やはり最大で4円程度の米ドル高・円安となりました。
この2つのケースは、為替相場が大きく動く年内最後のイベントである12月日銀会合の反動が大きかったように感じられます。その意味では、クリスマスで薄商いのなかでも、先週の日銀会合で円売りを仕掛けた分の反動で、年末にかけて米ドル安・円高にどこまで戻すかはやはり注目されるのではないでしょうか。
今週の米ドル/円は154~158円のレンジで予想
先週の米ドル/円の値動きは日銀会合の後が大きくなりましたが、金利の動きとしては12月18日のFOMC(米連邦公開市場委員会)前後の米金利の上昇が目立ちました(図表5参照)。これは、FOMCは事前予想通り0.25%の利下げを決めましたが、2025年以降の利下げ見通しが大きく後退したことへの反応とされました。

このような米金利上昇が続く中で、米国の主要な株価指数であるNYダウは、約50年ぶりの10営業日連続の下落となるなど、株価の急落も目立ちました。クリスマス週間ではあるものの、こうした米金利上昇・米国株安の動きも要注意ではあるでしょう。
米ドル/円は12月に入ってから148円台から158円近くまで大きく上昇しました。それを後押ししたのは、米金利上昇を中心とした日米金利差米ドル優位拡大でした。そうした中で米国株の下落不安も拡大してきたことを考えると、さらなる米金利上昇=米ドル高には自ずと限界があり、これまでの反動リスクが試される可能性もあるのではないでしょうか。以上から今週の米ドル/円は154~158円のレンジで予想したいと思います。
*注.「為替ウィークリー」は年内の公開は最後となり12月30日は休載とさせていただきます。年明けは1月6日の更新を予定しております。