追加利上げ見送りで、円安が進行し株価は下落幅を縮める展開
日本銀行は本日12月19日に政策委員会・金融政策決定会合を実施し、政策金利である無担保コールレート(オーバーナイト物)を0.25%程度で維持することを決定しました。決定は賛成8、反対1でした。反対した田村委員は、経済・物価が見通しに沿って推移する中、物価上振れリスクが膨らんでいるとして、政策金利を0.5%程度で推移する案を示しました。
声明文では景気の緩やかな回復と、先行きについても潜在成長率を上回る成長を見込む一方、リスクとして海外経済、資源、企業の賃金・価格設定行動に加え為替の物価変動への影響を挙げている点は従来通りです。
今後の利上げ、賃金上昇の持続性と春闘のモメンタムが判断材料に
なぜ据え置いたのか、その本意が声明文だけでは不明な中、声明文公表直後から円安、金利低下が進み、株価は下落幅を縮める展開となりました。迎えた会見では、利上げを見送った理由として、経済・物価は見通しには沿っているが、利上げの判断に至るには賃金上昇の持続性、特に2025年の春闘のモメンタムを判断材料にしたい、とされました。また、トランプ次期政権の政策をめぐる不確実性にも触れています。
次回は1ヶ月後に迫っていますが、春闘に関する材料は今よりは増加すると思われ、米国の政策は依然未知数ながらも次回利上げに対する期待はつなぎとめた印象です。ただし、会見中も進む円安については、対前年比で落ち着いているとも発言しています。2024年の年初からの円安基調を踏まえると、前年比には余裕が得られることから、今後の米ドル/円について円安への許容範囲が広がっているのかもしれません。
金融正常化に向かいながらも、慎重なペースを継続
会見では基調的物価上昇率やインフレ期待の動きが緩慢であるために利上げに慎重にならざるを得ないとの指摘がありました。金融正常化に向かいながらも、今後もかなり時間をかける印象です。リスクとして挙げた米国はFOMCで利下げに慎重になっており対照的と言えます。
なお、今回の会合では過去25年の経済・物価・金融情勢と金融政策運営を振り返る金融政策の多角的レビューが示されました。大規模緩和の全体的な効果としては「わが国経済に対してプラスの影響をもたらしたと考えられる」としながらも、今後については「マイナスの影響が大きくなる可能性には留意が必要」としています。
また、「景気悪化時に実質金利を引き下げることができるように、小幅のプラスの物価上昇率を安定して実現していくことが重要」との指摘からは、ある程度金融正常化を進めることによって次の景気調整局面に備えたい意思も感じられます。非伝統的な金融政策手段についても徐々に政策の巻き戻しが予想されますが、会見では多く触れられず、こちらも慎重なペースで進められそうです。