先週(12月2日週)の動き 方向感の出ないレンジ取引ながら下値の固さ
先週(12月2日週)のニューヨーク市場の金先物価格(NY金)は、一定のレンジ内の値動きが続き方向感に乏しい週となった。滞留の中心価格帯は2,660ドル台で、上値はおおむね2,680ドル、下値は週後半に向けて切り下がったものの2,640ドル台に集約された。つまり2,660ドルを挟み上下20ドルのレンジ相場となった。
手掛かり材料の多かった先週(12月2日週)
週を通してFRB(米連邦準備制度理事会)高官の発言機会が連日予定されており、同時に週末12月6日発表の11月雇用統計をはじめとする米労働関連指標や、ISM製造業景況指数など重要経済指標の発表も重なり、手掛かり材料が豊富な週でもあった。加えて韓国では12月3日夜、伊(ユン)大統領が唐突に「非常戒厳」を宣言し、一時国会が閉鎖される事態が発生。また、フランスでは次年度予算案を巡る対立から12月4日にバルニエ内閣不信任決議案が可決され、内閣が総辞職し一気に政局は流動化した。手掛かり材料として地政学リスクも加わったことになる。
12月米利下げ観測は継続
にわかに浮上した地政学要因は別として、手掛かり材料の多い週ゆえに、週初にNY金の想定レンジを強めのデータが出た際の12月利下げ観測の後退まで想定し、レンジ下限は2,600ドル割れを含め、2,590.00~2,680.00ドルと広めに見ていた。
結果は労働関連指標、経済指標ともに予想比まちまちの結果となったものの、12月の米利下げ観測を変えるものではなかった。またFRB高官の発言も、慎重姿勢を示すものの見方を変えるものではなかった。したがってNY金に対する下押し圧力も、想定ほどにはかかることはなかった。
10月末まで続いた異例の上値追いが一息つき、前週までに指摘したように当面の新たな価格帯(レンジ)を探す動きに転じている。
想定より下値が固かったNY金
レンジ相場の結果、先週末12月6日のNY金は2,659.60ドルで終了。週足は前週末比21.40ドル、0.8%安の続落となった。レンジは2,635.60~2,680.00ドルとなった。想定レンジの背景については前述したが、下値は想定より堅かった。
注目指標の11月米雇用統計は、非農業部門の雇用者数が前月比で22万7000人増と、市場予想(21万4000人増、ダウ・ジョーンズ)を上回った。10月分は1万2000人増から3万6000人増に上方修正された。一方、失業率は前月の4.1%から4.2%に上昇した。失業率の上昇もあり、12月利下げは想定通りとの見方が高まった。
注目すべきFRB高官の発言として先週のコラムでも言及したウォラーFRB理事は、「現時点で12月会合での政策金利引き下げを支持する方向に傾いている」としつつ、判断は会合前に公表される経済指標次第とした。同じく注目のパウエル議長は、米経済に強い自信を示し、今後の利下げには慎重になる可能性があるとしたものの、この発言は12月利下げ自体を否定したものではないと解釈された。
国内価格の変動幅も低下
先週(12月2日週)、国内金価格も週足は続落した。米ドル/円相場が150円を中心に上限1円のレンジ相場ながら、おおむね、150円近辺で滞留したことから、大阪取引所の金先物価格(JPX金)は、NY金の値動きをほぼ映すことになった。12月6日の終値は1万2776円で前週末比140円、1.08%安と週足は続落した。
想定レンジを1万2500~1万2947円としていたが、実際のレンジは1万2688~1万2949円となった。前週の上下約760円の値動きから一転、落ち着いた値動きになったのはNY金と同様で、米大統領選後のNY金の乱高下が一巡したこと、さらに、12月の日銀政策決定会合での利上げ観測にともなった円高への振れが一巡したことによる。
10月の新興国中銀の金購入60トン、月間ベース今年最高
先週12月4日に国際的な金の広報調査機関ワールド・ゴールド・カウンシル(WGC、本部ロンドン)が発表したデータでは、10月の新興国中央銀行による金購入量はネットで総量60トンと年初来で最大になったことが判明した。10月に金準備を増やした国は、インドの27トン、トルコ17トン、ポーランド8トンなどになっている。10月はNY金が最高値の更新を続け、10月30日には一時2,801.80ドルまで付けている。最高値圏にもかかわらず新興国中銀の買いが続いたことが示された。
年初来でインドは77トンと前年同期比で5倍の規模となっている。トルコは10月まで17ヶ月連続の増加で年初来では72トン増、ポーランドは同7ヶ月連続増で年初来69トン増となっている。10月30日に発表された9月末までの年初来の中央銀行全体データでは、累計694トンとなっている。11月以降の値下がり局面で買いが継続されている可能性がありそうだ。
中国人民銀行11月は7ヶ月ぶりに金準備増加
なお、中国人民銀行が12月7日に発表した11月末の外貨準備統計では、7ヶ月ぶりに金準備が増加していた。保有量は16万オンス(約5トン)増え、7296万オンス(約2,269トン)となった。
2022年11月から2024年4月まで18ヶ月連続で金の保有量を増やし、5月以降は積み増していなかった。
今週(12月9日週)の見通し:11月消費者物価指数(CPI)に注目、シリアを巡る中東情勢注視 想定レンジNY金2,630~2,690ドル、JPX金1万2600~1万2950円
今週(12月9日週)は12月17~18日のFOMC(米連邦公開市場委員会)を前に、FRB高官による金融政策に関連する発言を自粛するブラックアウト期間に入る。米国関連の主要経済指標の発表が限られる中で、最大の注目ポイントは12月11日(水)の11月消費者物価指数(CPI)となる。前回10月は前年同月比2.6%の伸びと9月(2.4%)から加速した。トランプ米次期大統領が掲げる公約からインフレ再燃への警戒が広がる中、来週のFOMCではメンバー全員による政策金利はじめ経済予測が発表される。FRBの利下げペースの重要な判断材料となる。
なお、12月8日には中東シリア、アサド政権の崩壊が伝えられた。一連の中東およびウクライナ情勢に連鎖する政治的変化だが、さらなる中東情勢の流動化につながるか否か注視したい。
こうした中で今週(12月9日週)のNY金は、レンジ取引継続ながら底堅く推移しそうだ。今週のレンジはNY金2,630~2,690ドル、JPX金は1万2600~1万2950円を想定している。