モトリーフール米国本社、2024年10月14日 投稿記事より

イスラエル・イングランダー氏が、米国株式市場で最も急騰している人工知能(AI)関連2銘柄を売却し、対極的な別のAI銘柄を選好 


8月14日は、運用資産残高が1億ドル以上の機関投資家や資産運用会社が、米証券取引委員会(SEC)にフォーム13F(株式保有報告書)を提出する期限でした。フォーム13F を見れば、ウォール街で成功しているマネーマネジャーが直近四半期(この場合は第2四半期)にどの銘柄を売買したのかを具体的に知ることができます。

フォーム13Fにも欠点はあります。例えば、提出された時点で45日前の情報であり、アクティブ運用ファンドにとっては、あまり新鮮なデータではありません。それでも、どの銘柄、業種、セクター、トレンドがウォール街のトップレベルの資産運用会社の関心を集めているのかを知る上で、これは貴重な情報です。

ミレニアム・マネジメントを率いる資産家のイスラエル・イングランダー氏は、多くの投資家が注目するマネーマネジャーの1人です。ミレニアム・マネジメントが提出した最新のフォーム13Fによると、イングランダー氏とそのチームは2,160億ドル近い有価証券を運用しており、その中身はさまざまなプットオプションやコールオプションを含む、数千ものポジションに広がっています。

その中で、イングランダー氏の第2四半期の取引行動で特に際立っていたのは、人工知能(AI)銘柄に対するアプローチでした。同氏は高騰中のAI関連2銘柄を売却した一方で、歴史的な割安水準となっている別のAI銘柄の株式に大量投資しました。

ミレニアム・マネジメントはエヌビディア[NVDA]とパランティア・テクノロジーズ[PLTR]を売却

ミレニアム・マネジメントが第2四半期に売却した2つの人気AI銘柄とは、半導体大手エヌビディア[NVDA]とクラウドベースのデータ解析企業パランティア・テクノロジーズ[PLTR]です。

ミレニアム・マネジメントは2008年からエヌビディアの株式を保有しており、AI革命で大きな恩恵を受けたことは間違いありません。しかし、同社は2024年第2四半期にエヌビディアのポジションを縮小し、67万6,242株を売却しました。

確かにこれは、利益確定と資産の再配分にすぎない可能性もあります。エヌビディアの時価総額は2022年末時点の3,600億ドルから、2024年10月9日の終値で3兆2,500億ドルに成長しています。ほぼ一貫して上昇してきた株式の利益を確定することは、賢明な判断のように思えます。

しかし、イングランダー氏が他の理由から、エヌビディアの持ち分を減らそうと考えた可能性もあります。例えば、エヌビディアのAI向け画像処理装置(GPU)は、AIアクセラレーテッド・データセンターの「頭脳」として誰もが認める最有力の選択肢ですが、社内外で競争が激化しています。特に、売上高ベースでエヌビディアの上位顧客4社は、自社のデータセンターで使用するAI向けGPUの自社開発を進めています。これは、AIハードウェアの王者である同社にとって、データセンター市場において将来の拡張機会が限られていることを示唆しています。

歴史もまた、次世代のイノベーションを担うリーディング企業にとって不利な方向を指し示しています。投資家は過去30年にわたり、画期的なあらゆるテクノロジーについて、その実用性や普及率を過大評価してきましたが、AIもその例外になることはなさそうです。

エヌビディア株だけでなく、ミレニアム・マネジメントはパランティア・テクノロジーズ[PLTR]の持ち分も減らし、707万4,815株を売却しています。同社はパランティア・テクノロジーズが2020年に新規株式公開(IPO)した時以来の株主です。

パランティア・テクノロジーズは代替が効かないという優位性から天文学的な利益を得ています。連邦政府向けにデータを収集し、ミッション計画をサポートするプラットフォーム「ゴッサム」と、企業向けのプラットフォーム「ファウンドリー」はどちらもAIを搭載し、規模の面で競合は存在しません。ウォール街はしばしば、持続可能な優位性を持つ企業に割高なバリュエーションを付与します。

しかし、たとえ持続可能な優位性があったとしても、いつかは割高なバリュエーションが受け入れられなくなる時が来ます。10月9日時点で、パランティア・テクノロジーズの2024年予想株価収益率(PER)は100倍、株価売上高倍率(PSR)も35倍という驚異的水準です。年間売上高成長率は20%程度であることから、このバリュエーションを正当化するのはほぼ不可能です。

さらに、パランティア・テクノロジーズの「ゴッサム」部門の長期的な可能性は、当然ながら限界があります。これは、米国とその同盟国だけがアクセスを許されているプラットフォームです。つまり、将来の成長と利益は「ファウンドリー」部門に大きくかかっているということです。これは悪いことではありませんが、「ファウンドリー」はまだ拡大の初期段階にあり、パランティア・テクノロジーズの966億ドルという時価総額はかなり割高に思えます。

スーパー・マイクロ・コンピューター[SMCI]:歴史的に超割安水準にあるAI銘柄

ウォール街でトップクラスのAI銘柄2社を売却する一方で、イングランダー氏は、ここ数ヶ月で先行きの不透明感が増し、株価が驚くほど割安になっているAI株を大量に購入しました。その銘柄とは、カスタマイズ可能なラックサーバーやストレージ・ソリューションを手掛けるスーパー・マイクロ・コンピューター[SMCI]です。

10月1日に実施した1対10の株式分割で調整すると、ミレニアム・マネジメントは第2四半期にスーパー・マイクロ・コンピューター株を553万3,230株購入したことになり、3月末と比べて持ち分は9倍超に増加しました。

エヌビディアがAI向けGPUの主力プロバイダーであるのと同様に、スーパー・マイクロ・コンピューターはAIデータセンターの自社構築を目指す企業にとって、欠かせないインフラ企業です。同社が手掛けるカスタマイズ可能なラックサーバーには、人気のエヌビディア製H100 GPUが組み込まれており、それがソリューションの魅力を一段と高めています。

2024年度(2024年6月期)の売上高は前年比110%増の149億4,000万ドルでした。会社側の2025年度予想売上高の中央値は280億ドルです。利益については2029年度にかけて年率62%の成長が見込まれていますが、足元で2026年度予想PERは11倍未満にすぎません。

高成長が見込まれるにもかかわらず、スーパー・マイクロ・コンピューターの株価が積極的なプレミアムで取引されない理由は、さまざまな逆風に見舞われているからです。例えば、同社は8月下旬に、ヒンデンブルグ・リサーチによる空売りレポートの標的となりました。ヒンデンブルグ・リサーチは、スーパー・マイクロ・コンピューターに「会計操作」の疑いがあると指摘しました。スーパー・マイクロ・コンピューター側は疑惑を否定していますが、年次報告書の提出が延期され、さらに米司法省による初期段階の調査に直面しているとも報じられています。

また、サプライチェーンの問題により、スーパー・マイクロ・コンピューターが顧客のニーズに対応できない可能性があるとの懸念もあります。エヌビディア製H100 GPUは非常に需要が高いため、スーパー・マイクロ・コンピューターのラックサーバーが供給不足に陥る可能性があるというのです。

つまり、スーパー・マイクロ・コンピューターの株価は相対的に割安かもしれませんが、イングランダー氏やミレニアム・マネジメントにとってはリスクの高い賭けと言えるでしょう。

免責事項と開示事項  記事は一般的な情報提供のみを目的としたものであり、投資家に対する投資アドバイスではありません。元記事の筆者Sean Williamsは、記載されているどの銘柄の株式も保有していません。モトリーフール米国本社は、エヌビディア、パランティア・テクノロジーズの株式を保有し、推奨しています。モトリーフールは情報開示方針を定めています。