モトリーフール米国本社 – 2024年10月6日 投稿記事より

データセンターに電力を供給する新たなソリューションとして、原子力発電が浮上している

データセンターには、画像処理装置(GPU)と呼ばれる高性能のチップセットを収納するサーバーラックなどのITアーキテクチャが装備されています。GPUは、人工知能(AI)開発において欠かせないインフラ要素です。

しかし、データセンターには消費電力の供給源をどうするかという課題があります。GPUは24時間休むことなく高度なアルゴリズムを実行しているため、データセンターでは高レベルの熱が発生し、多くのエネルギーを消費します。現在、データセンターには一般的に、空調装置、ファン、発電機などの設備が設置されています。

これらの設備は現状では機能していますが、長期的な持続可能性については疑問が残ります。そこで、米国では従来のデータセンターのエネルギーソリューションに代わる、より効率的な代替ソリューションとして、原子力発電が浮上しています。

数週間前、マイクロソフト[MSFT]とコンステレーション・エナジー[CEG]は、ペンシルベニア州スリーマイル島にある原子力発電所を再稼働することで契約を結びました。提携のニュースを受け、コンステレーション・エナジーの株価は急騰しています。当然ながら、投資家はAIと原子力発電という組み合わせがもたらす、次のチャンスを狙っています。

以下では、無名の原子力企業であるオクロ[OKLO]について深掘りし、大きなチャンスをもたらす可能性があるかどうか考えてみます。

オクロ、核廃棄物のリサイクルを活用

オクロのウェブサイトによれば、同社は「核分裂技術と核燃料リサイクルの会社」です。中核プロジェクトは「オーロラ」発電所と呼ばれるもので、リサイクルされた核廃棄物を活用した核分裂炉の実現を目指しています。この技術は従来の電力網への依存度を低下させ、データセンターの運営に革命をもたらす可能性があります。

多くのベンチャー・キャピタルや著名人が関心を寄せるオクロ

上場以前、オクロは多くの有名ベンチャーキャピタルから資金提供を受けていました。OpenAIのサム・アルトマンCEO、シリコンバレーの伝説的億万長者ピーター・ティール氏などです。さらに、同社の原子炉には、石油・天然ガス会社のダイアモンドバック・エナジー[FANG]、データセンター会社のエクイニクス、核燃料サービスを提供するセントラス・エナジー[LEU]、米国空軍などが関心を寄せています。

表面的には、オクロはかなり素晴らしいように見えます。しかし、多くの投資家は、中小企業の評価にあたっては、より詳しく調べたほうがいいことを知っているでしょう。オクロも例外ではなく、この無名のエネルギー株には留意すべき重要な点がいくつかあります。

投資家が留意すべきポイント

オクロは2024年5月に、特別買収目的会社(SPAC)との合併によりニューヨーク証券取引所に上場しました。SPACとの合併というのは、投資銀行による従来の引受プロセスを回避するもので、上場の方法としてはやや変わった方法ですが、ここ数年でSPACの知名度は上昇しています。

しかし、SPAC銘柄には不都合な現実があります。SPAC銘柄の多くは最先端のビジネスであることを売りにしていますが、具体的な成果を示していません。その結果、SPAC株は投資家の熱狂に煽られて当初は高騰しますが、冷静な評価が下されるにつれて売られることが多くあります。

フロリダ大学の研究によると、再生可能エネルギーに関連するSPACの2009~2024年のリターンの中央値は、マイナス84%となっています。オクロの株価が最終的にどうなるかはまだ分かりませんが、いくつかの理由から、下落に転じる可能性があります。

オーロラ発電所には魅力がありますが、オクロ初の発電所が稼働するのは2027年の予定です。それまでは売上は見込めず、継続的な設備投資が必要になります。その結果、同社が事業を存続させるために流動性を求め、株式を希薄化させる可能性は十分に考えられます。

オクロの原子力発電ソリューションは興味をそそられますが、現段階でこの事業が投資対象として適しているかどうかについては疑問があります。今のところ、オクロはかなりリスクが高く、投資は投機的と思われます。

より賢明な投資戦略としては、原子力発電とAIの組み合わせですでに動き始めている、質の高い企業に投資するべきでしょう。マイクロソフトとコンステレーション・エナジーに加えて、アマゾン・ドットコム[AMZN]と電力会社のビストラ・エナジー[VST]の動向も注目に値します。オクロに関しては、しばらくは様子を見て今後の進展を見守るのが最善かもしれません。

免責事項と開示事項  記事は一般的な情報提供のみを目的としたものであり、投資家に対する投資アドバイスではありません。アマゾン・ドットコムの子会社であるホールフーズ・マーケット元CEOのJohn Mackeyは、モトリーフール米国本社の取締役会メンバーです。元記事の筆者Adam Spataccoは、アマゾン・ドットコム、マイクロソフトの株式を保有しています。モトリーフール米国本社は、アマゾン・ドットコム、コンステレーション・エナジー、エクイニクス、マイクロソフトの株式を保有し、推奨しています。モトリーフール米国本社は以下のオプションを推奨しています。マイクロソフトの2026年1月満期の395ドルコールのロング、同2026年1月満期の405ドルコールのショート。モトリーフール米国本社は情報開示方針を定めています。