先週(9月30日週)の動き:堅調な米国指標と中東地政学リスクの綱引き相場 米雇用統計のサプライズ

大幅利下げ観測が後退、NY金の上値を抑える

先週(9月30日週)のニューヨーク市場の金先物価格(NY金)は、最高値圏となる2,260ドル台を中心として1日の変動幅が拡大するなど、やや荒れた展開となるも、週足では横ばいとなった。10月4日の終値は前週末比0.3ドル、0.01%安の2,667.80ドルで終了した。

米連邦準備制度理事会(FRB)がインフレ抑制から雇用重視に政策のかじ取りを変更する中、注目の9月米雇用統計の発表を週末10月4日に控えつつ、先行して発表された他の米雇用関連の指標は総じて好調なものが多かった。市場で高まっていた11月の米連邦公開市場委員会(FOMC)での連続大幅利下げ観測は後退し、NY金の上値を抑えた。

中東情勢の緊張感の高まりから安全資産であるゴールドへ資金が流れる

一方で、イランが支援するイスラム教シーア派武装勢力ヒズボラに対するイスラエルによる攻撃は激しさを増し、対してイランが10月1日にイスラエル本土をミサイル攻撃したことで両国間の緊張が高まった。国際政治経済への影響を懸念する市場では、安全資産としての金(ゴールド)への資金移動が発生、相場を下支えした。

月末と四半期末が重なった9月30日の動き

月末と四半期末が重なった週初の9月30日、NY金は前週末から続く益出しとポジション調整の売りに続落で取引を開始。

9月末のNY金の終値は2,659.40ドルで終了。9月は13日に初めて2,600ドル台に乗せ、わずか9営業日目の26日に2,700ドルを突破と短期間に水準を切り上げただけに月間ベースで131.80ドル、5.21%の大幅高となった。

四半期ベースでは319.80ドル、13.7%高とこちらも大幅上昇に。四半期ベースでは20年4~6月期(12.8%上昇)以来の上昇率となった。

10月4日に発表された雇用統計の結果を受け、上下に振れる

市場の最大の注目指標となっていた9月雇用統計は、非農業部門の就業者数(NFP)は前月比25万4000人増で予想(14~15万人増)を大幅に上回るサプライズに。過去6ヶ月で最大の伸びとなった。失業率も4.1%と前月の4.2%から改善した。就業者数は7・8月分合計で7万2000人上方修正された。FRBが懸念を表明していた労働市場の冷え込みだが、結果は経済がなお勢いを維持していることを示唆するものとなった。むしろ予防的とされた9月の0.50%引き下げは、必要なかったとの指摘も一部でみられている。11月FOMCでの大幅利下げ観測はほぼ消失し、市場では11月および12月の2会合にてそれぞれ0.25%という見方に落ち着くことになった。

10月4日のNY金は、雇用統計の結果から米ドルの長期金利が急騰したことを受け、一時2,651.60ドルまで売られたが、売りが一巡すると急伸し、一時2,690.60ドルを付けるなど上下に振れ、前述のように2,667.80ドルで終了した。

市場に広がっていた年内および2025年を含む利下げ拡大観測に、大きな修正を迫ることとなった雇用統計の結果の割に、下げは限定的な印象だった。それは地政学的リスクとの綱引き相場となっていることによる。

こうした中で先週のNY金のレンジは2,655.00~2,694.70ドルとなった。高値更新を見込む2,655.00~2,720.00ドルを想定レンジとしていたが、雇用の意外な上振れで値を抑えられることになった。

円建て価格も史上最高値更新

一方、国内金価格(JPX金)は、自民党石破新総裁の利上げ牽制とも受け取れる発言を受けた米ドル/円相場の円安にサポートされ、前週に切り上げた水準を維持した。大阪取引所のJPX金の週末の終値は1万2554円で前週末比15円、0.1%安とNY金と同様に横ばいとなった。JPX金の先週のレンジは1万2112~1万2610円となった。前回、想定レンジを1万2100~1万2400円としていたが、円安が想定を上回ったことによりこのような結果となった。いずれにしても7月中旬に記録した過去最高値権での滞留となった。

先週末の米雇用統計のサプライズを受けた米ドルと米長期金利の急騰が円安をさらに押し進め、JPX金の押し上げ要因となったのは週末のことである。

先週末NY市場の米ドル/円相場は、1.77円安の1ドル=148.72円(ファクトセット調べ)で終了したが、一時は149.02円と8月中旬以来の円安・米ドル高水準を付けた。この時間帯にNY金が4日の高値水準2,690ドル近辺で取引されていたこともあり、JPX金は一時1万2773円まで付けた。これは7月17日に記録していた史上最高値1万2679円を100円ほど上回るものである。当時のNY金の水準は2,460ドル程度。米ドル/円相場は156円台前半だった。当時より円高水準であり、その分は国内価格の押し下げ要因だが、それを上回る海外価格の上昇が、国内価格を押し上げている。

本日10月7日の午前の時点でJPX金は1万2600円台後半で推移している。なお、10%の消費税込みで表記される国内の店頭小売価格も、本日午前の時点で1万3978円と過去最高値を更新している。

今週(10月7日週)の見通し:9日の9月FOMC議事要旨、10日9月CPI、11日9月PPIに注目

NY金2,650.00~2,690ドル、JPX金は1万2500~1万2850円を想定

先週末の雇用統計を受け、FRBによる利下げサイクルの行方の修正を迫る見方が強まっている。9月20日にはウォラーFRB理事が、9月のFOMCにて0.50%の利下げを支持した背景について、「足元の状況は雇用よりも好ましいインフレデータが理由であり、労働市場を巡る不安ではない」と述べていた。その上で「誰もが想定していた以上にインフレデータが軟化し続ける場合は、より速いペースで行動する可能性もある」としていた。その一方で、「インフレが再燃すれば、利下げを見送る要因になり得る」とも発言していた。

ちょうど今週は10月10日(木)に9月の米消費者物価指数(CPI)、10月11日(金)に同米生産者物価指数(PPI)の発表が控える。いずれも鈍化が続くと見込まれているが、雇用の強さが表面化した後につき、インフレ指標に再び注目が集まりそうだ。さらに10月9日(水)には9月FOMC議事要旨が公開される。雇用統計で利下げ見通しの修正を迫られた形の市場だが、議事要旨は想定以上にタカ派的な内容の可能性もあり、要注意といったところか。

こうした中で中東情勢という不透明要因があるものの、NY金の見通しは先週のレンジを考慮し2,650.00~2,690ドル、JPX金は1万2500~1万2850円と高値更新を見込むレンジを想定している。