リセッション懸念が和らぎ、週間ベースでS&P500は0.22%上昇
先週9月30日(月)は、第3四半期期末のウィンドウドレッシング(期間投資家がポートフォリオの見栄えを良くするために、好調な株式を買い入れる手法)も手伝ってマーケットは買われ、S&P500は引け値ベースで5,762.48に到達、史上最高値を更新しました。しかし、その後10月に入ると、雇用統計を前にマーケットは中東情勢の悪化を受け一時的に弱含む展開となりました。
米労働統計局は、10月4日(金)に「9月に米国経済は25万4,000人の雇用を生み出し、失業率が4.1%に低下した」と発表しました。今回の発表は、労働需要が失速しているという広く信じられていた見解を覆し、経済活動の回復力の継続とソフトランディング(緩やかな着地)の高い可能性への期待を高めました。債券市場では、驚くほど強いことを示す今回の労働市場のデータを受け、金利が急上昇したのです。
10月に入って弱含んでいた株式市場は、10月4日の雇用統計の発表を受けて上昇、週間ベースではS&P500は0.22%の上げとなりました。目先の市場のリスクの1つであったリセッション(景気後退)懸念が和らいだことで、米国経済全体に対する楽観的な見方が強まったのです。
米国港湾ストライキは短期解決、6年で賃金62%引き上げで合意
10月1日には米国東海岸と湾岸地域の36の港で約4万5,000人の港湾労働者がストライキを開始しました。これは1977年以来の大規模なストライキであり、労働者たちは賃金の引き上げと自動化の阻止を要求していました。
ストライキの影響は素早く現れ、全国のコストコ店舗でトイレットペーパーの買い占めが報告されており、ソーシャルメディア上では空っぽの棚の写真や動画が拡散されています。この状況は、2020年のCOVID-19パンデミック時の物資不足を思い起こさせました。
コロナ禍で見られたサプライチェーンの混乱が現実のものとなり、物資の確保が困難になる中、人々の不安が高まったものの、10月3日には無事合意に達しました。港湾運営者が今後6年間で賃金を62%引き上げることに合意したためです。以前の提案は50%の引き上げでしたので、それと比べて大幅な改善が見られます。
一歩間違えると、経済に、企業業績に、そして株価に大きな影響を与えたかもしれないこの事態はスピード解決し、大事には至りませんでした。
今週から第3四半期決算開始、S&P500の業績は前年同期比で4.37%の増益を予想
今週金曜日10月11日には、ジェイピー・モルガン・チェース[JPM]の第3四半期の決算発表があります。米国の決算発表は銀行セクターの発表をもって皮切りとなります。その中でもジェイピー・モルガン・チェースが、銀行セクターでも最初に決算発表を行う代表銘柄です。今回の決算では、S&P500全体の業績については、前年同期比で4.37%の増益が予想されています。
また、米国時間木曜日の10月10日には、テスラ[TSLA]の「ロボタクシーデイ」がカリフォルニア、バーバンクにあるワーナーブラザーズの映画スタジオで行われます。このイベントでは、テスラの完全自動運転車「ロボタクシー」の公開が予定されており、自律走行技術の進展が披露されます。もともとは2024年8月に開催予定でしたが、イーロン・マスクCEOが車両のデザイン変更をリクエストしたため、10月に延期されました。
ロボタクシーの発表では、「サイバーキャブ」の車名で呼ばれるであろうロボタクシー車の量産計画やサービスの開始時期、都市部での運用、すでにサービスを展開しているWaymoとの比較などが注目されます。今回の発表は、映画スタジオを使うことで、住宅地や市街地でのロボタクシーの実際の運用をイメージさせるデモンストレーションが行われるのではないかと見られています。加えて、市場では、もしかすると2万5,000ドルの低価格車の発表もされるのではないかという見方もあります。
今回、投資家はロボタクシーのビジネスモデルについての詳細な説明、それが現実的なものかどうか、実際にいつ、どの程度の収益を上げることができるのかなどを厳しい目で判断していくことになります。このイベントは、イーロン・マスクCEOが、テスラが単なるEVメーカーではなく、マグニフィセント7(※)のような革新的企業の仲間入りにふさわしいと投資家に納得させるための貴重な機会です。
現在の予想PERが111倍であるテスラには、かなりの投資家の期待が織り込まれており、そんな期待を上回る発表を行う必要があります。
なお、このイベントについて、破壊的イノベーションで有名なキャシーウッド氏にインタビューで彼女のご意見をうかがいました。
>>>>【中編】「テスラ社が開発を進めるヒト型ロボットOputimus(オプティマス)の未来」
>>>>【後編】「イーロン・マスク氏関連企業の強みとこれからの技術革新」
(※)アップル[AAPL]、マイクロソフト[MSFT]、アルファベット[GOOGL]、アマゾン・ドットコム[AMZN]、メタ・プラットフォームズ[META]、エヌビディア[NVDA]、テスラ[TSLA]