前回は、「テスラの最大の期待、ロボタクシー」をお届けしました。今回は、テスラ[TSLA]が開発を進めるヒト型ロボットOputimus(オプティマス)の未来について、キャシー・ウッド氏にインタビューしました。

ヒト型ロボットが未来を変える

家庭用ロボットと製造業用ロボットは両方同等の潜在的市場規模がある

岡元:10月10日のロボタクシー発表の日に、マスク氏はヒト型ロボットであるOputimus(以下、オプティマス)について話をする可能性はあると思いますか?

ウッド氏:マスク氏はオプティマスについてとてもワクワクしていると思います。現在、数体のオプティマスがテスラ社内で稼働しており、マスク氏はその進捗に非常に満足しているようですし、この件についてもっと詳しく話してくれると思います。

またオプティマスの話は、アナリストたちにテスラ内でどれだけ生産性が向上しうるかを理解させるのに役立つことになるでしょう。そして、テスラは、いずれはロボタクシーと同じようにヒト型ロボットのプラットフォームを展開していくかもしれません。ただ、まず社内で始めて、ヒト型ロボットの生産性と専門性を最大化できることを証明してから外部に展開すると思います。

岡元:テスラのヒト型ロボットが将来キャシーさんの自宅で家事を手伝うような状況を想像できますか?

ウッド氏:もちろんです!実際ARK社の自立技術及びロボティクスの研究ディレクターであるサム・コーラスが、家庭内と製造業におけるロボットの可能性について研究したのですが、その結果によると彼は大規模な展開が起きると両市場の規模はほぼ同じになると考えています。つまり、家庭用と製造業用ロボットの両方で、それぞれ12兆ドル(約1,740兆円)(※1ドル=145円)以上の潜在的な市場規模があるということです。

コーヒーを入れたり、シャツをたたんだりするヒト型ロボットは既に存在しています。これは、私たちが良く知っているFigure AI社が研究開発したロボットたちです。私たちのベンチャーファンドで同社に投資をしていることもあり、そのロボットが実用化されるのを見届けることができました。この会社のヒト型ロボットは、これまでのロボットよりもはるかに機敏で柔軟になっています。自由に歩き回り、手の器用さは目を見張るものがあります。主にアクチュエーターによって制御されており、操り人形を操るように指を動かすことができるのです。その技術は完璧になりつつあり、非常にワクワクしています。

テスラはヒト型ロボットでも技術的に優位な立場にある

岡元:マスク氏の会社が低価格で宇宙へロケットを打ち上げている技術を持っていることや、地球全体に通信衛星を配置する能力を保有していることを踏まえて、彼のロボットは、競合他社と比べてどれほど高性能なものになるのでしょうか?

ウッド氏:Figure AIのような会社は、ヒト型ロボットにフォーカスしています。ですから、彼らの動きは非常に速いと思います。ですが、テスラはすでにロボティクスに関する3つの主要技術に精通しています。

岡元:と仰いますと?

ウッド氏:具体的には、ロボティクスそのものと、アクチュエーターとその関連技術です。エネルギー貯蔵も然りです。これらはバッテリー駆動であり、AIによって動作しています。まるでロボタクシーのようでしょう?ロボタクシーは高価になりますが、ヒト型ロボットはより安価になるでしょう。ロボタクシーがその道を切り開いているのだと思います。技術が急速に向上するのは、生産台数が増える時です。それでその技術が普及するのです。ロボタクシー市場がそれを可能にしていくのだと思います。ロボタクシーはロボットです。バッテリー駆動であり、AIによって動作しています。

そのため、マスク氏は大きなアドバンテージを持っています。なぜなら、テスラのビジネスモデルはすでにこれらの3つの技術を基盤としているからです。そのため、競合他社と比較して、高性能なものになると考えています。マスク氏は長年これらの技術に取り組んできたので、今後の行方、何ができるようになるのかを理解していると思います。

ヒト型ロボットが5年~10年以内に家庭にやってくる可能性

岡元:キャシーさんは、テスラがこれから発表するロボタクシーやヒト型ロボットであるオプティマスに非常に期待しています。株価予想のモデルでは、テスラの2027年の株価予想は2,000ドルを超えると、今の株価を遥かに超える株価を予想されていますが、その大部分はロボタクシーからのものですね?

ウッド氏:90%が自動運転関連です。

岡元:現在の目標株価にはオプティマスは含まれていないということですね?

ウッド氏:はい、オプティマスに関するものは含まれていません。サム・コーラスが現在ヒト型ロボットに関する研究を進めており、市場全体の潜在的な規模を算出しようとしています。私たちはテスラがこの分野でも業界をリードしていると考えています。また、市場全体の潜在規模が24兆から25兆ドルになるとお伝えしましたが、これは驚くべき数字で、これは現在のアメリカ経済の規模とほぼ同じなのです。マスク氏が言うように、私たちはみんな自分専用のロボットを持つようになると思います。私たちは洗濯機や食器洗い機という形で、すでに「旧時代」のロボットを持っています。オプティマスはもっと進化していき、食器を洗うために私たちが食器を食器洗浄機に入れる必要すらなくなるかもしれません。

岡元:私は毎朝5時台に犬の散歩にいくのですが、私が前の晩にお酒を飲みすぎて、二日酔いで散歩に行きたくなくとも、ロボットが代わりにやってくる時代がやってきそうですね。キャシーさんの個人的な考え方を教えてください。現実的な話として、そんなロボットはアメリカでまず導入され、それから他の地域に広がると思いますが、キャシーさんのご自宅にヒト型ロボットが家事を手伝ってくれるような時代がやって来ると思いますか?

ウッド氏:できるだけ早く欲しいですね。5年から10年以内に実現してほしいです。そのためには企業が導入して、組織内でロボットをより完成させていく必要があると思います。すでにロボット掃除機のような製品は存在しますが、それはヒト型ロボットではないので。

ヒト型ロボットについて多くの研究が進んでいるので、様々な種類のロボットが登場し、それぞれ違うことをするようになるでしょう。例えばiRobotのようなロボットであれば家の中を動き回り、床に落ちたものをなんでも吸い上げます。深く考えず、賢くもなく、いろんなものにぶつかってしまいますが、時間をかけてどんどん賢くなっていくでしょう。ですから、企業が完全なヒト型ではないけれど、より高度な多種多様なロボットを開発し、それらが実用的なものになると期待しています。そして、それらが技術の進歩に寄与するでしょう。

次回は、【後編】イーロン・マスク氏関連企業の強みとこれからの技術革新をお届けします。