水および水インフラ関連のコンサルティングでトップポジション
テトラ・テック[TTEK]は、カリフォルニア州パサデナに本拠を置くコンサルティングおよびエンジニアリングサービス会社。水、環境、インフラストラクチャ、資源管理、エネルギー、および国際開発の分野でコンサルティングとエンジニアリングサービスを提供しています。
水および水インフラ関連のコンサルティングでトップポジションの企業です。創業は1966年、当初は港湾や海岸の水路設計や水質管理プロジェクトの支援、石油・ガス探査プロジェクトの支援といったエンジニアリングサービスを提供していました。その後、買収を通じて事業規模を拡大。現在では、世界規模で必要不可欠とされる多様なサービスを提供しています。
環境コンサルから航空宇宙まで多様なサービスを展開
環境コンサルティング(環境影響評価、土壌調査、生態モニタリング、リスク評価など)、水管理(浄水・水管理、持続可能な水資源開発など水管理プロジェクトに関与)、インフラ・都市計画(インフラ計画、交通、都市開発、そのプロジェクト管理サービス)、エネルギー(再生可能エネルギー、エネルギー効率、プロジェクト管理サービス)、鉱業(鉱業活動の影響を最小限に抑えるための環境・保全サービス)、航空宇宙(技術サポートや環境影響コンサルティングなど)、特に水管理で数々の受賞歴を持っており、エンジニアリング業界を代表する雑誌「エンジニアリング ニュース レコード(ENR)」は、20年連続で同社を水部門第1位にランク付けしています。
これらのサービスを、世界中に構える550 のオフィスと28,000名の従業員を通じて提供しています。1年間に関与するプロジェクトは10万件を超えるとのこと。2023年9月期の売上高は45億ドルでした。この売上は、31%が米国連邦政府、13%が地方および州政府、19%が米国の民間、37%が海外(主にカナダ、オーストラリア、英国) によるものでした。約60年に渡る政府との関係性が堅固な顧客基盤を作り上げています。
ウクライナ政府や米国国際開発庁(USAID)とも連携
近年目立つところでは、ウクライナ政府および米国国際開発庁(USAID)との連携です。同社は2018年以降USAIDのエネルギー安全保障プロジェクトを通じて、ウクライナのエネルギー機関と提携し、電力市場の開放や地域暖房サービスの改善、またEUとの物理的・商業的アクセスを支援してきました。2022年にロシアがウクライナに侵攻した際は、インフラの修復と再建を支援するプロジェクトを発動し、家庭や病院、学校、公共機関に電力が途絶えないように支援しました。2024年5月にも、ウクライナのエネルギー安全保障強化のため、USAIDから4億3900万ドルの大型契約を獲得するなど、政府連携での売上基盤はかなり強固なものとなっていると言えます。
長期に渡って見込まれる水関連需要
同社の需要環境は非常に潤沢です。いま世界中で、脱炭素化、エネルギー転換、環境研究開発など気候変動に対する投資が増えています。その中で、水不足と有機フッ素化合物(PFASs)対策も大きなテーマとなっています(PFASは発がんリスクや免疫機能低下を引き起こす有害な汚染物質)。「清潔で安全な水の確保」は世界的なテーマです。
米国ではインフラ投資雇用法(IIJA)で水インフラのアップグレードに550億ドルを投資することとしています。さらに、環境保護庁(EPA)がPFAS対応に90億ドルの投資を発表するなど、政策によって水処理関連分野に多額の資金が流入しています。水の研究開発分野で専門知識を積み上げてきた同社は、その需要を大きく享受できる立場にあります。
しかも需要は長期に渡って期待できます。というのも、水処理需要は、研究開発からデータ分析、モデリングの段階を経て、その後、大体5年間で設計と実装が進められていくからです。米国環境保護庁によると、米国だけでも今後20年間で下水道や雨水システムなど浄水インフラへの投資に、少なくとも6,300億ドルが必要になると予想されています。10年前の予想から73%も引き上げられており、このトレンドは大きく息が長いということです。
環境データ活用し、サブスクリプションサービスを開始
こうした需要をより大きく取り込むべく、同社は買収を通じて環境コンサルとしての機能を高めてきました。ここ数年で目立ったのは、デジタル化への対応です。2022年には水とエネルギーのDXやデータ分析、環境コンサルに携わる計4社を買収。最近では2024年5月に、プロセス自動化とシステム統合エンジニアリング大手を買収するなど、ビッグデータ解析と活用の能力を高めているようです。
同社は数十年にわたって、生態系、流域、水道施設の管理のための予測モデル(=デジタルツイン)の開発をリードし、その過程で膨大な環境データが積みあがりました。このビッグデータが金の卵を産み始めたようです。同社は積み上げてきたビッグデータを活用し、「Fusion Map」や「Oceans Map」といったサブスクリプションサービスをいくつかリリースしました。
水管理の最適化や建物の脱炭素化、自然災害による被害評価や沿岸生態系の強化に幅広く対応でき、業務効率の面ではモデリングと検査にかかる時間を半分にしたり、プロジェクト管理業務を25%削減したりすることができます。サブスクリプション売上は経常収益源として業績を下支えし、利益成長を促進させるでしょう。
潤沢な需要と強い業績見通し
業績は長期的に好調に推移しています。2020年度については4%の減収でしたが、営業利益は16%増、純利益は10%増と増益を維持。売上高は過去10年間年平均6%で、過去3年間は15%で成長し、営業利益は10年間においても3年間においても年平均20%で成長してきました。足元の業績は、売上高、利益、受注と重要指標が過去最高を更新しています。長期的には「2030年までに、年平均10%~15%(買収効果4%~5%)で売上を伸ばし続け、年間売上を倍増する」としています。
政府中心の堅固な顧客基盤、水不足対策やエネルギーシフト、関連市場のデジタル化という長期的な追い風を味方に、今後の業績も好調な推移が期待できると思います。例え、新しい大統領が政府支出を減らそうとしても、水不足問題はどうにかしなければならず、デジタル化は止められません。民間ではAI市場拡大に伴うデータセンタの冷却システム需要も拡大していきます。サブスクリプションサービスの成長も注目され、長期保有投資家にとっては注目しておくべき銘柄の1つと思います。